9.ハル、学校へ行く
ついにこの日が来てしまった。
新たな学校、京都市立武城中学校――
山の麓に建つ、歴史のある学校だそうだ。
校舎は実際、ボロい。
待ちに待った入学式が今日。もちろん、妹の秋奈にとって……だけどね。
俺は3年生になるため、始業式の後には授業が待っている。
式、っていっても実際は担任の挨拶や新学期に向けての軽い説明のみで、クラス替えはしてないから、皆なじみの顔だろうし。
――転入生の俺だけが緊張だよ……
学校に着くと、先に母と秋奈は入学式の行われる体育館へ行っちまった。
俺は一人職員室かぁ。
長い廊下を通って、とうとうたどり着いた職員室のドアを、恐る恐る開ける。
瞬間。
目の前の光景に俺は絶句した。
…………
「いやぁ、3−5の生徒はみんな明るくて元気な子が多いから、何も心配は要りませんよ!」
「うむ。くれぐれもハルを宜しく頼むぞ。」
「はっはっは! まぁ安心してください、スザクさん」
職員室の来客用革張りソファーにでん。と座る朱雀さん。
向かい合わせのやや質素なイス(素材ポリウレタン使用)に座っている、ジャージを着た教師と楽しげに会話してる……
えぇええ?!
「ん、ハルではないか。どうした? そんなところに立ったままで」
俺に気付いた朱雀さんがキョトンとした顔で話しかけてきた。
『どうした?』 じゃねぇよ!!
お前がどうしたんだよ?!
ホントに朱雀さん、学校に来ちゃったよーーー!
「おっ、君が櫻井君だね? いゃぁ、今スザクさんから話を聞いていたところだよ」
あ。先生ですね?
……一体そいつから何を聞いたんですか。
「僕は櫻井君が入るクラス、3−5の担任の小山だ。分からないことがあったら、なんでも聞いてくれよ」
じゃぁ、遠慮なく。
何で不審者を捕まえないんです? 先生の目の前にいるスパッツ女はどう見ても不審人物だろうが! 生徒や保護者には見えねぇだろうがぁっ!!
「……ハル、何か言いたげな顔ではないか?」
朱雀さんが鋭い目線を俺に向けてくる。
心の中で不満を叫ぶことができなくなったら、俺――泣きますよ?(ぐすっ。
「ま、まさかぁ〜。それは、ホラ、あ、新しい学校だし、緊張するな〜……って」
俺の苦しまぎれの言い訳を聞いた朱雀さんはにっこりと微笑む。
嫌な予感がするんですが。
「何も緊張などする必要は無い、私がハルの側に付いていてやるからな」
いやいやいや! 遠慮します! 土下座でも何でもするから、家に帰ってくださいーーーッ! |