8.リビングの中心で悲しき願いを叫ぶ
……まぶしい……もう朝か……
「ぁはははは!!」
「きゃははは!!」
…………
「答えは2番の“ねっちょりマリモ”だと思ったのだがな〜」
「それ、おしいよ! 一応“鼻ちょうちんの三郎”に関係あるもん!」
…………
「やはりわたしはささくれがこの三角関係の諸悪だと思うが」
「うんうん。でも、みかんも捨てがたいよね?」
……あと、5分だけ……
……って!
この状況で寝てられっかよ!!
隣の部屋(妹の部屋)の会話がすんごい意味不明で怪しいんですが。
秋奈と話してるのって、たぶん朱雀だ。いや絶対朱雀だ。
いやいやいや、別に誰と話そうがどうだっていいさ。
だけど、『ねっちょりマリモ』って 何?!
俺の寝起きは最悪。
秋奈と朱雀の笑い声で起こされるなんて。
「「ゎはははははは!!」」
……あ、まだうるさい……
そんなこんなで騒々しく俺の一日がはじまる。
「おはよう春彦」 俺に挨拶した後、親父はすぐに出勤。
「おはよ、はるちゃん」 母は食卓テーブルに3人分の朝食を用意している。
「お兄ちゃんビリだよ〜」 秋奈、黙れ。
「お早う、ハル」 ……やっぱりまだいたか。
さっさと自分の家に帰れ、スパッツ女め。
ってのはもちろん心の中でつぶやくだけ。
口に出したら最後。俺の人生はわずか14年で潰えるだろう。
「……オハヨ」
俺、なんかちょっと悲しくなってきたな……(ぐすん。
「あ、そうそう。明日あきちゃん入学式よね? はるちゃんも始業式明日でしょ?」
母さんが急に思い出したように切り出した。
そう、ついに明日から学校なのだ。
「俺は始業式の後授業あるし、秋奈に付いててやれよ」
「でもね〜せっかく新しい学校だし、はるちゃんの担任の先生とかにご挨拶しなきゃ」
挨拶は秋奈と同じ時にすりゃあいいだろうが!(同じ中学なんだし)
「いや、いいよ別に」
「だめよぉ! 最初が肝心なのよ?」
――いっつもこれだ。どんなに反論しようが母には効かないし。
「じゃあ、わたしがハルの挨拶役をしよう」
俺と、妹と、母の間に割り込んできた声の主はもちろん、朱雀。
「あら、朱雀ちゃん助かるわぁ〜」
「これも大使の務め、奥方が苦労することはないぞ」
って、オイィ!!
「ちょぉっと待ったァ! なんで朱雀が母さんの代わりに来るわけ?! それは絶っ対反対だか――」
言いかけたその時、俺は言葉に詰まる。
「ハル、続きを言ってみろ。よく聞こえなかったが?」
朱雀さんが鉄扇を片手に持ち、もう一方の手にパン!パン! と叩きつけている。
顔は笑ってるけど、こめかみ付近に青筋がっ!
あわわわわ。
やばいやばいやばい。
マジでやばいよ、コレ。
「……い、いぇっ! ゼヒ、お願いしますっ!!」
俺の言葉に朱雀さんは満面の笑みで頷く。
つまりだ。
始業式の日に、このスパッツ女が学校に来て、母の代わりに教師たちに挨拶をするって事だ。
――あぁ、誰か助けてください! |