45.自由は果てしなく遠く
俺の問に、目を細めながら答えるどんべえさん。
「それはお前さんの捕らえ方次第じゃ、ヒトなる者と見るか、ヒトならざる者と見るかは己が決めればよいのだ」
どんべえさんの答えは、俺の望むものではなかった・・・
いや、キツネに聞く自体が間違いだったのだ・・・
俺は無駄骨だったことに、聞くんじゃなかった。とガックリ肩を落とす。
「まったく、朱雀の周りの連中はなんでこんなのばっかなんだ。つーかなんで俺に絡んで来るんだよ・・・」
テーブルに突っ伏して、うわ言のように呟く俺。
その時、不意に声を殺したような笑い声が聞こえてきた。
「く、くくっ」
伏せていた顔を上げ、目の前のどんべえさんをチラリと上目使いで見てやった。
「くく、ふぉふぉふぉ!」
現代では使わないであろう、微妙な笑い声を上げるどんべえさん。
俺はギョッとして、背筋をピンと張りながら、反射的に体を起こした。
「ハル少年、確かに皆お前さんに興味を持っておるがな・・・。一つ教えておいてやろう。皆が集まるのは、朱雀殿がニンゲンであるお前さんと一緒に居るから、じゃよ」
何も知らない俺に、たった一つのヒントを与えて、満足そうに頷くどんべえさん。
キツネと人間じゃ、やっぱり解り合えないと俺は思うよ。
種族の壁は越えられないものだ。
なんか、重要な事を言ったのかもしれねぇが、さっぱりだ!!
さっぱり解んねぇよ!!
目が点の俺にどんべえさんはどっこいしょ。と重い腰を擡げて立ち上がる。
「邪魔したのう、ハル少年。朱雀殿によろしく伝えといてくれんかの」
そう言うと例の如く、どこに置いてあったのか杖を取り出し、それに付いていた1枚の葉っぱを額に当てた。
「いずれ解るわい」
ニヤリと笑みをこぼした後、ボンッ! と、ふざけた煙に捲かれてどんべえさんは姿を消した。
朱雀の正体を探るつもりが、更に謎を増やされ、呆然と俺の前にだけ残っている湯飲みを見つめた。
玄関から賑やかな声が僅かに聞き取れた。後数秒足らずで櫻井家の女性陣が買い物から戻って来るだろう。
・・・まぁ、いずれ解ることだって言われたし、今は深く考えないようにしよう。
俺は数秒しか残されていない自由を満喫すべく、勢い良くソファーの上にダイブする。
が、ソファーにたどり着かないうちに、バカでかい笑い声と、大量の荷物が津波のようにリビングへ押し寄せてきた・・・
秒殺かよ・・・!(うぅっ、ぐすっ。 |