41.カラス再び
恥ずかしさと驚きが同時に俺を襲う!
王子様って・・・にんじんって・・・ご主人様って・・・?!
「俺、君を助けた覚えないし、にんじんはカラスにやった記憶しかねぇんだけど・・・」
あまり良くない頭をフル回転し、彼女の記憶を探してみるも、やっぱり思い当たらねぇ。
俺の言葉を聞くや否や、烏丸ちゃんが興奮気味に一歩前へ出た。
「ハイ♪ にんじん貰いましたぁ〜♪ やっぱり、覚えてくれてたんですね〜! だってあの時あたしとハルくん、目が合ってたもの」
・・・まさかっ!
・・・あぁ、何となく嫌な予感はしてたけど、受け入れたくはなかったぜ・・・
あの時花壇に1羽だけ戻ってきたカラスが・・・この萌え美少女・・・だそうです。
そんなの、そんなの間違ってるぅーーーっ・・・!!
真実を知らない方が、幸せだって、何かで読んだ気がする。
俺はガックリ肩を落として力なくうなだれた。
「たしかに、目が合ったな」 俺はカラスに睨まれた気がしたから、睨み返しただけだがな。
「やっぱり、ハルくんはあたしのご主人様になる運命のヒトなんだわ!!」
黒真珠のような目を潤ませて、俺の困惑した顔を食い入るように見つめる烏丸ちゃん。
彼女の正体を知ってしまった以上、素直に受け入れるわけにはいかねぇ!
言葉に詰り、俺の額からは滝のように汗が流れ落ちる。
俺を情熱的に見つめる黒髪のメイドさん。
お互い目の前に立っているのに、温度差を感じるんですが。
そんな沈黙を破ったのは、今まで店の入り口で突っ立っていた朱雀。
「八咫宮烏丸、ハルをそなたの主にしてやることはできぬぞ。今はわたしの元に居るからな」
やっと自分の世界から抜け出してきたのか、先程のうっとりした表情は消えていた。
烏丸ちゃんをフルネームで呼ぶ朱雀。
やっぱりいつものパターンで2人は知り合いのようだ。
烏丸ちゃんがその声に反応し、俺の陰になって見えないのか、頭をひょこっと出すようにその声の主を確認した。
その時、彼女は喉の奥に詰ったような、短く低い驚きの声を発したのだ。
「ぁっ・・・!」
次の瞬間、俺の体を押しのけ、腕組みをしながら立っている朱雀の前に駆け寄った。
片膝をつき、左の拳を床につける、いかにも主に仕える従者が取るようなポーズでひれ伏す烏丸ちゃん・・・
俺はただただ、呆然とその現代に似つかわしくない光景を見つめていた。
「お、お久しぶりでございやす! 朱雀様!!」
顔を紅潮させ、目に薄っすら涙を浮かべる彼女。
先程の乙女チックな口調は一体どこへ?
なにこの江戸っ子みたいな、落語家みたいな口調は?
萌えはどこへーーーー?! |