39.「萌え」って何だ?
本日の授業はつつがなく終了いたしました。
あとは、無事家にたどり着ければ、平和な一日を過ごしたことになる!
そう・・・無事たどり着ければ。
「んじゃぁ予定通り、メイドカフェに行くぜーーー!」
給食時間に半べそをかいてた謙吾が、高らかに拳を突き上げ、テンション高めに叫び声をあげた。
謙吾の掛け声に、リョウと朱雀が続く。
「おっしゃぁー!」 熱いね、リョウ。
「ああああああ!」 朱雀・・・その場のノリで適当に叫ぶな。
つーか、俺そんな話聞いてないんですが!!
有無を言わせず、朱雀は俺の首根っこを掴み、半強制的に四越デパート経由のバスに押し込む。
俺に不参加という選択肢は無かったらしい・・・
道中バスの中で俺以外の3人は、他の乗客への嫌がらせのごとく、大音声で会話をする。
かなりテンションが上がってるな、こりゃ。
「女中喫茶店・・・あぁ、どのような店なのであろう? むふふふ」
目を輝かせてなにやら想像しているらしい朱雀。その笑い方、かなり変質者チックですが。
「俺らは『ご主人様』って呼ばれるけど、スザクちゃんは『お嬢様』って呼ばれるんだよぉ♪」
後部座席で朱雀の隣をゲットした謙吾が、話し掛けながらここぞとばかりに密着する。
「やっぱさ、メイドさんって他の人種とは違うと思うんだ! なんかこう・・・オーラ? そんな感じのがさ・・・!」
リョウの興味が何か違うところにある気がするけど・・・まぁ、いっか。
俺は3人のノリについて行けず、他の乗客にこいつらの関係者と思われないように、無言で窓の景色だけを見つめていた。
まぁ、実際のところ俺もメイドカフェには興味があるさ!
だけど行くとなると心の準備ってもんがあるだろ。
なのに・・・これは強制連行ってやつだと思います。
ふふふ、おかげでドキドキ感、一切無しだぜ!!
そんなこんなで四越前の停留所でバスを降りた俺たち一行。
バス通りから一本はずれた小路に、そのメイドカフェは佇んでいた。
見た目は小洒落た喫茶店、というかメイドカフェと言われなければ、ごく普通の喫茶店に見える。
白を基調としたキレイな外観。オープンテラス付だ。
謙吾が慣れた手つきで店のドアを開ける。
カランカラン。と、扉に取り付けられた金属製のドアチャイムが鳴った。
「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」
舌っ足らずのような、甘い声が耳を通じて脳に響く。
胸に『まろん』と書かれたプレートを付けた、メイド服の女性が俺たちを迎えた。
謙吾とリョウは完全に頬を緩ませながら、まろんチャンの案内で奥の席へ向かう。
朱雀は入り口の前で、うっとりしながら何度も「お嬢様・・・」と、繰り返す。
どうやらそう呼ばれて余程気分が良いらしく、恍惚としながらその場から動かないのだ。
そんな朱雀を尻目に、俺は戦場へ向かうかの如く、意を決したように心の中で呟いた・・・
親父・・・母さん・・・俺、萌えの世界に行ってまいります! |