38.お残しは許しまへんでー!
どんなに肉体的に疲れていても、どんなに精神的に疲れ果てていても、朝はやってくる。
その疲れが癒えてなくても、俺は学校へ向かわなければならないのだ!
・・・あぁ、義務教育ってめんどい・・・
そんな気だるい態度で乗り切った午前中の授業。
唯一の救いは楽しい給食時間だ!
・・・にんじんが食材の中に入って入れば、楽しさ半減だけどな。
他のクラスより1,5倍はテンションの高い3−5。
その中でもやけに五月蠅い奴が、謙吾。
「ちょ、知ってる? 四越の側にあるメイドカフェに可愛いコ入ったんだぜ!」
ニヤけて話す謙吾に、リョウが冷めた口調でツッコミを入れた。
「謙吾、お前さぁ、スザクちゃんの前でそれ言っていいの?」
・・・確かに。浮気(?)は良くないことだぜ、謙吾。
「ばっ、バッカやろ! 俺はスザクちゃん一筋に決まってんだろ!!」
席から勢いよく立ち上がり、謙吾は顔を赤らめながら、朱雀の顔をチラチラ盗み見る。
そんな告白に近いことを言われた当の本人は・・・
本日の給食である 「ソフト麺 醤油味」 を美味そうにすすっていた。
ナチュラルに無視したーーー!!
謙吾は涙目で朱雀を見つめながら、小刻みに震えた後、体中の骨が無くなったかのように机に崩れ落ちた。
「うっ、ヒックっ・・・! ソ、ソフト麺めぇ・・・!」
泣きながら麺に八つ当たりする謙吾に、本気で同情するよ・・・
朱雀とリョウはおかわりをすべく、すでに席を立っていた。
謙吾はまだ泣きながら、2人の後に続く。
俺は一人、まったくコシの無い麺をすすりながら、窓の外をぼんやりと眺めていた。
「・・・このっ! また群がりやがって、あっちいけ! クソガラス共!」
声は窓の下に広がる花壇から響いている。
窓から顔を出し、下を覗いてみるとそこには誰かが落としたコッペパンに群がるカラス。
と、それを必死の形相で追い払う用務員のおっちゃんがいた。
ガァー、ガァー!
おっちゃんの箒と闘うカラス軍団。
しかし、人間様に敵うはずはねぇ。
ものの1分足らずでカラス軍団は方々へ飛んでいってしまった。
用務員のおっちゃんは蜂の巣状態のコッペパンをゴミ袋に入れると、どこかへ歩いて行った。
そこへ、1羽のカラスが再び花壇へ降り立ち、必死にパンの欠片を探している。
「カラスも大変だよな・・・」
心にもないことを、ポツリと呟いてみた。
俺はソフト麺のスープに浮かぶ、にんじん(細切り)をポイ。っと窓から落とした。
花壇をうろうろしていたカラスは、空から落ちてきたにんじんを見つけ、急いで嘴へ放り込む。そして、窓から顔を出す俺をじっと見つめたのだ。
俺もカラスに対抗して、ジロっと睨み返す。
そんな顔しても無駄だぜ?
スープにもうにんじん入ってねぇし、それにお前に食いモンやる義理はねぇし。
そう、単に俺、にんじん嫌いなんだよね。
フッと口元に笑みを作り、俺は空っぽになった食器を見て、満足げに頷く。
・・・俺はにんじんを攻略したぜ! |