29.Cool or Hot?
デパートジャック事件(?)の翌朝。
そんな事件があっても、学校には行かなければ。
仕方なしにリビングへ足を運ぶ俺。
「おはよう、春彦」 挨拶と同時に親父、出勤。
「おはよ、はるちゃん」 ・・・はるちゃん、はやめてくれ。
「お兄ちゃん今日もひっどい寝癖ぇ〜キャハハ♪」 秋奈、あとで覚えてやがれ・・・!
「お早う、ハル。む、元気がないようだが?」 ・・・いや、朱雀さん絡みですよ。
昨日はすげぇ疲れた!
今日もサボりたい勢いだ。
まぁ、そんな事を朱雀が許すはずもねぇ。
なにせ、学校へ行かなければ大好きな給食が食べれないからだ。
そんなわけで・・・俺は身支度をして、秋奈にチョークスリーパーをかましてから玄関へ向かった。
「・・・行ってくる・・・」
「では奥方、行って参ります!」
俺のどんよりした挨拶に続いて、朱雀がウキウキしながら母に挨拶をした。
あぁ、給食を食べに行くだけの朱雀が羨ましいわ。
俺のクラス、3−5は朝でもテンションが高い。
そんな中、まるで呪われて死を目前にしたような最悪にテンションの低い男がいた。
「おす、どした謙吾?」
俺より低いテンション・・・ってか、人生が終ったようなオーラが出てるけど。
ずーん・・・って効果音では表しきれないほど重いわ、こりゃ。
「バッシュを買って、四越から出た後すぐに自動車(ワゴン車)にぶつかって、荷物を全部道路にばら撒いちまって、限定モデルのバッシュがたまたま通ったクレーン車に潰されたんだって」
適切な説明サンキュ、リョウ。
机に突っ伏したまま身じろぎもしない謙吾に、俺とリョウは呆れが混じった悲哀の眼差しを向けた。
「ぺ、ぺちゃん・・・こ」
ぼそりと呟く謙吾。
哀れな。
つーか、車にひかれたって・・・なぜ学校に来てるんだ?
いるべき場所は病院だろ? 普通は。
「謙吾殿も給食が食べたかったのだ」
俺の心を読んだように、哀愁漂う表情で朱雀が言葉を挟んだ。
いや、朱雀じゃあるまいし。
「今は干からびてるからそっとしといてやろうぜ」
リョウがポン。と俺の肩に手をかけて謙吾の席から離れた。
あまりにも不憫な謙吾はまぁ、ほっといて。
俺は自分の席に向かう。
朱雀はとっとと教室を出て行き、昼になるまで学校の中を自由行動。
はぁ、たるい・・・
今日こそは平穏な日であることを願う!
俺が席に着くとリョウは向かいの椅子に座るなり、好奇心に満ちた目で話を切り出した。
「な、ハル知ってる? 湖にサメが出たんだってよ! 市役所とか水族館の人たちが捕まえようとしたらしいんだけど、どっかの川に逃げたんだって」
湖にサメ?! 川に逃げた?! サメは海だろ?!
「・・・物騒だな、ま、俺には・・・」
――俺には関係ないことだけど。と言おうとした矢先、リョウの言葉に遮られた。
「放課後俺たちで見に行こうぜ!!」
いつもはクールなリョウ。
しかし、ただのクールボーイではないと、今分かったぜ。
平凡な日常は退屈でツマラナイ。非日常的な出来事やスリリングが奴の闘志に火をつけるらしい。
「まじでか」
「当然」
俺のすごく、すごーく嫌そうにした顔を気にも留めず、リョウは首を大きく縦に振る。 |