28.朱雀VS青龍社長
「すげぇ……青龍さんてホントに社長なんだ」
俺は渡された名刺をまじまじ見つめながら呟く。
正直、朱雀の知り合いにはロクな奴がいねぇ。
チンピラもどきとか、しゃべるキツネとか、落ち武者'sとか。
「ボク、社長を侮辱する発言、聞き捨てならないわね」
性格のキツそうな社長秘書が、俺に見えない圧力をかけてくる。
いや、この物言いからして性格キツいのは間違いない。
こわっ!
でも青龍さん、従業員から信頼されてるんだなぁー。
世の中にはワンマン社長が溢れかえってるってのに。
「まぁまぁ、僕は気にしませんから。それよりも朱雀、四神には不可侵という暗黙があるのを忘れてはいませんよね?」
青龍さんはいつも通りの爽やかな笑みで朱雀に問う。
けれどその表情からは、ピリピリした何かが空気を伝ってきた。
朱雀はカウンターをヒョイ、と軽く飛び越え青龍さんの前に歩み寄る。
向かい合った2人が互いに睨みあい、その場は一瞬にして緊張が走った。
なんか……空気がやけに冷たくねぇか?
「忘れてはおらぬ。 だが今日そなたの領地に踏み入ったのは、ハルを迎えに来ただけ。
それで納得がゆかぬと言うならば、かかって来るがよい」
先に仕掛けたのは朱雀だった。
今までに見たことのない、挑発的で、不敵な笑みを口元に浮かべた朱雀。
前にも感じたことがある。
背筋がゾッとするような、朱雀に対する 怖れ。
その時、初めて俺は『朱雀』が何者なのか疑問に思ったのだ。
「ふっ。ははは……! 相変わらずですね、朱雀は」
張り詰めた空気の中、突然明るい笑い声が響く。
少年のような顔で笑う青龍さん。
まるで旧友だけに見せる偽りのない笑み。俺にはそんな風に映った。
え、マジで?
こうゆう展開?
「ふ、ぁはははは! そうゆう青龍も変わっておらぬな! 特に間抜けな顔! あはは、ごほっごふっ」
いつものムカつく笑顔に戻った朱雀。
いやいや、青龍さんはそんな顔してないだろうが。
むしろお前の方が間抜けだと思うが? (むせ込むあたりが)
一気に和んだインフォメーションセンター前。
俺は騒ぎを起こした張本人(本人自覚無し)を連れて、四越デパートを去ることにした。
謙吾とリョウの事はもうどうでもいいや、俺がいなくてもバッシュは買えるだろ。
青龍さんにこれ以上の迷惑はかけられねぇしな。
いや、迷惑かけてるのは俺じゃなくて朱雀だけどさ!
「ハルくん、またいつでもお越し下さいね」
青龍社長は最初に会った時と同じ、爽やかな笑顔で俺に手を差し出す。
握手を交わして出口の回転ドアに向かおうとしたとき、思い出したように青龍さんが駆け寄ってきたのだ。
「これをどうぞ」
なぜか差し出された茶封筒を受け取り、別れ際青龍さんと従業員の皆さんに手を振る。
こうして、俺(と朱雀)は四越デパートをあとにした。
自由の身は超一瞬で散ったんですが。
帰りのバスの中で、先ほど貰った封筒を開けると、そこに入っていたのは、『四越デパート特別商品券』――1万円分。
社長、太っ腹だーーー!!
しかし、朱雀がいるわけだしもう四越デパートには行けないではないか。
っかー……使い道ねぇじゃん。
そんな時、商品券をじっと見つめる朱雀が暴露した。
「ハル、四越百貨店の地下1階にある『和処 もったり』のみたらし団子は絶品なのだ。その商品券があれば……むふふ」
………
あれだけ四越デパートには行くなと言っておきながら、自分はみたらし食いに行ってるわけ?
そのむふふって笑いムカつくんですが。
「ふふっ、心配は要らぬ、ハルが青龍のところへ行く時はわたしも付いて行ってやるからな♪」
テンションが上がる朱雀に対し、俺のテンションは奈落の底へ落ちていく。
二度と浮上できない気がするよ。
「……どうもな……」
PM4:00
俺、一体何しにここまできたんだか……(ぐすっ! |