27.青龍現る
1階インフォメーションセンターの側に置かれた、ドラゴン風のオブジェの陰で身を潜めていた俺。
事件の始まりから今現在に至るまで、バッチリ見てしまった。
デパートジャックの犯人は――
――朱雀じゃーん……
静まり返ったフロアでは、受付カウンターからフツーに顔を出した朱雀を除いて、みんな目が点状態。
誰かがこの状況を打開しなきゃ事が進まねぇな。
はぁ〜……俺がいくかぁ……
やりきれない想いで、のろのろオブジェから顔を出す。
ため息を一つついたあと、受付カウンターで陣取る犯人に目線を走らせた。
「朱雀、なに、やってるんだ……?」
声には落胆と共に、きっとやるせなさがにじみ出ていたと思う。
朱雀は急にオブジェから出現した俺に驚いたのか、無言で目を何度か瞬かせる。
ポーズをカッコ良く(俺から見ればカッコ良くはないが)キメていた社長が、ゆっくり振り向く。
「ハルではないか、無事であったようだな!」
朱雀が無邪気に笑いながら、悪びれもなく発言。
カウンターの陰になって見えなかったが、目を凝らすとそこには朱雀に鉄扇を突きつけられ、恐怖で身動きできないウグイス嬢の姿が――あった。
さっきの叫び声は、これかっ!
「くっ……(くそスパッツ女めっ)受付嬢から離れて説明してください、朱雀さん……!」
俺は朱雀さんが逆上しないよう、あらゆる葛藤に耐えて問いただした。
奥歯がギリギリ音を立てているが、それも耐え忍んだ。
「何を言う、青龍がハルを連れ去ったのでわたしがわざわざ出向いたのだ! この娘たちにはハルの監禁場所を尋ねただけだぞ?」
えええ このコ、話作ってるぅーーー!
俺が一人打ちひしがれ、魂を抜かれたようにその場に固まっていると、爽やか且つ冷静な声がフロアに響いたのだ。
「朱雀……君、何か勘違いしてるみたいだけど、『ハル』とやら、僕は知らないけど?」
腕を組み、首をかしげるのは四越デパート社長・青龍さん。
その言葉に少しムッとした顔をみせた朱雀。
「そんな事はない! ハルが学校から消え去り、気配を辿ってきたらそなたの領地にいたのだ。つまり、青龍が監禁したと同じ事!」
腰に手を当て、唇を尖らせて言い放つ朱雀に、再び青龍さんは目を点にしたまま固まる。
偉そうに胸を張って、無理やりこじつけやがったよ、このコ。
朱雀、根本がおかしくね?
「あのぉ〜……2人は知り合いなんスか?」
俺はカウンターに陣取る朱雀と、カウンターに向かい合う社長を順に見つめた。
「知り合いではない、同属なだけだ」 朱雀が頬をふくらませ、否定する。
「ええ、知り合いですよ。同属ですから」 青龍さん、すっぱり肯定。
2人の意見がかみ合ってねぇな。
「君が『ハル』? 申し遅れました、僕はこの四越グループ社長の青龍です。『千年王城の青龍』と言ったほうが分かりますか?」
とびきりの爽やかスマイルで名刺を手渡す青龍社長。
ってか、でた……! 謎の組織『千年王城』。
もうつっこむのはよそう。
俺はどんよりした気持ちで名刺を受け取った―― |