26.デパートジャック
5階展示会場へ向かう途中、お知らせの案内がデパート内に放送される。
ピンポンパンポーン♪
――館内でお買い物をお楽しみの皆さま、本日は当店へお越しくださり、誠にありがとうございます――
ウグイス嬢のやんわりとした、綺麗な声が全フロアに響いている。
誰一人この案内放送に注意して聞くはずがない。
俺は3階へ昇るエスカレーターでただぼんやりとそのアナウンスを聞き流していた。
アナウンスはさらに続く。
――只今、5階特別展示場にて、限定品や名産品を集めた、スプリングバーゲンを……
そんな時だった。
事件が起こったのは。
……キャアアアアアッ――
天井付近のスピーカーから、恐怖に満ちたウグイス嬢の叫び声が聞こえた!
なにぃ?!
悲鳴が聞こえ、すぐにマイクが切られた。館内は騒然となる。
これはもしや、事件ってやつじゃねぇか?
もしかして、デパートジャックってやつか?
3階で心臓をバクつかせながら、俺は頭をフルに回転させ、状況を必死に飲み込もうとした。
……だめだっ、全然頭が働かねぇ。
……いつも頭、使ってないからかな……
そんな時、上の階から怒声が響いてきた。
「緊急配備だ! 従業員の命が最優先だ、僕の指示に従って行動したまえ!」
例の若社長、青龍さんがエスカレーターを駆け下りてくる。
どうやら想像以上に凶悪な事件のようだぞ。
1階のインフォメーションセンターへ走る青龍さんの後をこっそりついて行く俺。
非日常的な出来事にちょっとワクワク。
尾行っぽく後をつける。
やべぇ〜ちょっと楽しい!(スイマセン)
そんな事をしてると、インフォメーションセンターの真横にやって来た俺たち。
(いや、俺は社長達に見つからないように隠れてるんだけど)
受付カウンターから何者かの姿がチラッと見えた。
社長に付いてきた従業員達は恐怖で足がすくんだ状態らしい。
そんな時、一人立ち上がったのは――
「僕の大切な従業員に乱暴は断じて許さんッ! 己の暗愚さを恥じるがよい!!」
こめかみに青筋を浮かばせ、ハンパない剣幕で、ウグイス嬢を襲ったと思われる犯人にまくし立てる若社長。
姿の見えない犯人にビシッ! っと指差し、腰に手を当てた、時代遅れのかなりダッセェポーズをとっている。
先ほどの爽やかなイメージは……?
王子の品格はどこへ……?
シン。と静まり返った1階のインフォメーションセンター付近。
まるで墓場の如く、不気味なまでの静寂だ。
と、受付カウンターからひょっこり顔を出す者がいた。
「ん、その声……青龍ではないか。何をしているのだ?」
スットンキョウな声で目を瞬かせている人物の顔は、毎日見ている。
朱雀じゃねぇかぁああ! |