千年王城(22/56)縦書き表示RDF


22はちょっと長いので、時間のある時にご覧になってください。

千年王城
作:黒雛 桜



22.ハルの誕生日(びちょぬれ登場)


「朱雀殿、ハル坊、着きましたぞ!」

 彦左衛門さんは観光地から少しそれた裏街道で人力車を停める。
 俺たちの目の前には【甘味処 びちょぬれ庵】という、最悪のネーミングを持つ店が佇んでいるのだ。

「ハルにどうしてもここの『びちょぬれぜんざい』を食べさせてやりたかったのだ」

 朱雀からの思いもよらぬ、(かなり)嬉しい言葉に俺は図らずも感動。

「朱雀……!」

 にっこり微笑む朱雀に俺のこころは再び暖かい気持ちでいっぱいになった。

 効果音を付けるなら(パアァァ)かな、バックには乙女チックな花でもいいな。
 いつもいつも迷惑と厄介事ばっかの朱雀。
 だけど、ちゃんと俺の事、考えててくれてたんだ!!


 俺は朱雀と彦左衛門さんに腕を引っ張られて店内へ入った。


「いらっしゃいませぇ〜、あら、スザクはんやない〜今日も来てくれはったんですね」

 少し甲高い声で、和服にエプロンを着用した素朴感溢れる店員が、朱雀を見つけて挨拶してきた。

 店員さんとすでに馴染みなのか、やるな……。

「うむ。びちょぬれ三ツで頼むぞ」

 ビシッと3本指を立てて、『3つくれ』とアピールする朱雀。
 ビシッと親指を立てて、『了解』とコクコクうなずく店員さん。

 ビシッと……って、流行ってんの?

 和風の内装は落ち着いた雰囲気で、朱雀が気に入ってるのも分かる。
 観光地から少し外れてるから、人でごった返してるわけでもないし。

「お待ちどうさまですぅ〜、『びちょぬれぜんざい』3つお持ちしました〜」

 陶器の皿に乗った若草色の器。なかなか小洒落ている。
 コトン、とテーブルに置かれたネーミングセンス最悪のぜんざい。
 だけど、見た目と味は最高だ!

 最高級の小豆であろう、黒い煌めきはさながらブラックダイヤモンド!
 白玉のプリプリ感とほんのりした甘みはまさに、味のIT革命や〜!

 って、何やってんだ、俺……。


「今日も申し分ないぜんざいであったぞ」
「ご馳走様でござる」 
「美味かったです、ごちそうさまでした」

 俺はそのまま店を出ようとしたとき、店員さんと朱雀がなにやら話し込んでいる。

 財布でも忘れたのか?

「今日も御代はツケでよろしいですか?」 

 ん、今店員さんツケって言ったよな?

「うむ!」

 今日も。っていっつもツケで食ってるわけ?

「あ、今日は金があるのであった!」

 朱雀はひらめいたようにポンと手を叩き、こっちを振り向いた。


 ……え。

「お客はん、今までのツケた分の請求書です、たのんます♪」 
 
 にっこり微笑み、俺に一枚の紙を差し出す店員さん。


 ……ぇええええええっ?!




「ありがとうございますぅ〜またおこしやすぅ〜」

 【甘味処 びちょぬれ庵】を後にした人力車一行。
 お気に入りのぜんざいを食って、上機嫌の朱雀さん。
 お化けのくせに満腹満腹、といった表情のおっさん。

 俺だけ大ダメージを喰らったんですが……。



 ……もう二度と朱雀となんて来るもんかーーー! (うぅっ、ぐずん。


PS.こいつは俺の誕生日だから。ってわけじゃなくて、
  ただ自分がぜんざいを食いたかったから、彦左衛門さんを呼んでまでここへ来たのだう。


 このスパッツ女めぇえええ!!(うっ、うっ、うわぁぁぁん!



個人的にはぜんざいよりあんみつ派です!











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう