千年王城(20/56)縦書き表示RDF


いつもよりほんの少し長めです、多めに見てやってください^^;
千年王城
作:黒雛 桜



20.ハルの誕生日(人力車現る)


 朱雀は俺の手を引き、マンションの入り口で立ち止まった。
 昼下がりのここら一帯は車もさほど走っていない、閑静なまち並み。

 朱雀がおもむろに、二本の指を使って口笛を鳴らす。


ピュイッ!



 ん? 犬でも呼ぶのか?

 広いマンションの敷地には更に広い駐車場が備え付けられている。
 そこから、俺たちの方へ何かが向かってくるではないか。

 犬? ではねぇな。
 車でも、自転車でもない。

 俺は超低速で向かってくるそれを見て、バカみたいに口を開けっ放しにしながら呆然と立ち尽くす……


「ねぇ朱雀。人力車みたいなのが来たんだけど」 
 
 棒読みで質問する俺。
 
 離れた距離からどんどん近づいてくる、人力車?
 人力車なんて、さすが京都……?

「あれは、彦左衛門だ」 
 
 すっぱり答える朱雀さん。
 って、知り合いかよ!


 俺たちの前にやっと着いた真っ赤な人力車。
 それを轢くのは朱雀の友達(?)の彦左衛門さん。


「やあ朱雀殿、お久しぶりですなぁ」
「うむ、達者であったか? 彦左衛門」

 笑顔で挨拶を交わす2人は、どうやら久々の再会のようだな。
 
「おや、はじめまして坊ちゃん」

 彦左衛門さんは丁寧にも深々と俺に挨拶をしてくれた。
 朱雀のダチってろくなのがいねぇから、ちょっと感動。

「あ、はじめまして……。俺、櫻井 春ひ……――ん?」

 ちょっと待て、あまりにも礼儀のある人だから見落としていたが……

「あれ? この頭にくっついてる折れた矢みたいなものは?」

 まじまじと彼の頭を見つめてふと疑問が湧いたのだ。

 俺は彦左衛門さんの頭の上に、弓道の矢がくっついているのに気がついた。
 それも刺さっているように見えるんですが?

「わはは、坊ちゃんは目の付け所がよろしいなぁ!」 彦左衛門さん、豪快に笑う。
「ハルはなかなかのもんであろう? 宜しく頼むぞ、彦左衛門!」 朱雀さん、ニヤリと笑う。

「あ、はは……は……」 俺、2人に合わせて笑ってみる。



「って、なんじゃそらーーー! どう見てもこのおっさん、落ち武者に見えるんですけど!」
「おっ、ハル坊は鋭いのぉ。それとも拙者死んでから有名になったか? わはははは!」


 説明しよう。

 俺の目の前ででっかい声で笑っている40代(だと思う)のおっさん、彦左衛門さん。
 赤の布地で統一され、黒いフォルムが重厚感を醸し出す人力車を所有。
 よれよれの着物に、ヘアスタイルはおそらく時代の先駆け。
 頭頂は完全に剃られ、サイドから無造作につくられたロングヘアーの黒髪が肩まで伸びる。
 その、毛の無い頭部に刺さりこんでいる――矢。

 矢が……

 矢がっ……



 ぎゃぁああああああ! 頭に矢がブッ刺さってるーーーー?!!












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