2.スパッツ現る
「ねぇねぇ、お母さん! こっちの塔の前で撮ろうよ〜」
「あなた、あそこの橋もいいんじゃないかしら?」
「よし。たくさん記念写真撮っていこうか」
京都に到着した櫻井家一行。
真っ先に向かったのは――観光スポット。
え?
観光……?
ってか、引越し先の家に行こうぜ?
何で観光なんだよ!!
まるで修学旅行生のようにはしゃぎまわり、あちこちで写真を写すちょっと恥ずかしい家族連れ――いや、これちょっとどころじゃねぇよ?
かなり恥ずかしいんですが!!
記念写真を撮るのに忙しい家族を尻目に、俺は一人呆れて歩き出した。
もちろん遠くまで行けるわけないけど、人気の無い場所を見つけて腰を下ろす。
はぁ、なんとなく憂鬱。
巨大な朱塗りの門の周りには、珍しく一人も観光客がいない。
他の場所にはたくさんいるってのに、変なの。
まぁ今は一人になりたい気分だから、好都合だけどさァ……
「少年、この地は嫌いか?」
突然後から聞こえる女の声に、飛び上がりそうなほどビビった。
だって、ついさっき周りを見たときは誰一人いなかったんだから!
バッ。っと振り向くと、俺の後ろには女の子が立っている。
……それも、ちょっと、変な女の子が。
顔はまぁ、かわいい。
俺と同い年くらい?
だけど。
真っ赤で肩につかない程度に切ってある髪の毛、金色っぽい目の色。
服は和服(長めの袖丈に、黒と金の帯、褄下の短い着物……着物の下に履いてるのって……スパッツじゃね?!)だし。足には草履?
かなりの時代錯誤だと思うが!
いやいや、それ以前になんかおかしいって!!
……取りあえず関わらない方がいいと思う。
シカトだ。シカトしとこう。
「……」
この場を離れようと無言で立ち上がり、歩き出そうとした。
その時!
俺の肩に何かが当たった。って、何が?
そっと右肩を見てみると、黒っぽい鉄の扇が首筋に当てられているではありませんか。
そう。鉄の扇が。
って、鉄?! 危ない、危ないぃいい!!
「少年、聞こえなかったか? 『嫌いか?』と聞いたのだ」
かわいらしい顔に軽く怒りがこもってる。微笑んだ唇が引きつってる。目が笑ってねぇよ!
ちょ、まっ……
『嫌い』なんて言えないじゃん!!
「……いぇっ! だ、大好きです!」
「やっぱり♪ そうだと思ったのだ!」
ちょっと変わった女の子はパッと明るく表情を変え、扇を懐へしまった。
その場にへたり込み、満足げにこの場を去っていく彼女の後姿を、俺は呆然と見つめる……
一体なんなんだよーーーー!! |