18.はじまる祝典
ついに今日という日がやって来た。
櫻井 春彦(14)→(15)
そう。今日は俺の誕生日なのだ……
「ただいまー」
「只今戻ったぞ」
俺は玄関で靴を脱ぎ捨てたまま、リビングへ進む。
朱雀はなぜか自分の草履を懐にしまって、リビングへあがる。
草履を懐にって……あんたは木下藤吉郎(かの有名な秀吉)さんですか?
「はるちゃん、朱雀ちゃんおかえりなさい。早かったのねぇ」
キッチンに向かったまま、母が弾んだ声で返事を返してきた。
あ、いい匂いがする。
「今日は午前授業だったんだ、学校が早く終ってラッキーだったぜ」
「今日は午前で皆出て行くよう言われたのだ。なぜだ! わたしは給食が食べたかったのにっ……!」
俺をよそに、一人悔しそうに顔をしかめる朱雀。
ん、最後に言い放った言葉はなんだ?
根本的に、学校の生徒じゃない朱雀さんは給食食べれませんよ?
「朱雀ちゃん、機嫌をなおして! 給食じゃないけど、今日はご馳走を用意するから♪」
母が包丁をプラプラ振り回しながら笑顔で振り向く。
「おぉ♪ 奥方が腕を振るうわけだな!」
「ヒィッ! 母さん、分かったから包丁持ったまま腕を振るなぁああ!」
サックリ包丁が飛んできそうな勢いなんですが!
俺の真摯な叫びをよそに、そのまま母は上機嫌で再びキッチンと向き合う。
も、いいや……
せっかく早く帰ってこれたんだし、一人でぐーたらしてよう……
午前授業っていいなぁ、のんびりできる時間があるし。
うるさい妹の秋奈は、新しくできた友達と遊びに行っているみたいだし。
「暇そうだな、ハル」
ソファーにひっくり返ってダレていた俺に、朱雀が覗き込んできた。
び、びっくりしたぁ。
つうか……
安らぎのひとときを「暇」扱いですか?
「暇じゃねぇよ、安らぎを追い求めるのに俺は忙しいの」
ひっくり返ったまま、何か企んでいそうな顔の朱雀を気にせず目を瞑る。
「ふふっ。遠慮は要らぬぞ、今日はハルの『誕生日』とやらではないか」
……えっ? 遠慮してないよ?
「そうだけど。誕生日だからって特別な事しなくていいからなっ!」
俺はソファーからガバッと起き上がり、含み笑いをする朱雀に先手を打って、釘を刺す。
絶対何か企んでやがるな、こいつ。
「……わ、わたしの善意をっ……蹂躙するつもりか?!」
はっ!!
し、しまったぁあ!!
顔を紅潮させ、ブルブル震えながら手にぎゅっと例の鉄扇を握り締める朱雀さん。
今日は最強に怒ってるっ!!
やばい!
やばいやばい!
俗に言う「やばす」!!
恥もへったくれもねぇ。
彼女の怒りを静めなければ、俺の命はねぇ。
とにかく横文字だ! なんでもいいから横文字を使え、俺!!
「ごめんなさい、ごめんなさい! そうですっ、アレです。今日は俺のバースデイです! メモリアルです!! わぁウレシイナァ!」
何か違う気がするけど、そんな小せぇコト構ってられるか!
俺は体裁より、命をとる!!
額にびっしり汗を浮かせて笑顔を作る俺は、朱雀の顔色をそーっと伺った。
「……わたしの好意をっ……!!」
未だ小さな肩を小刻みに震わせ、明らかにこめかみ付近に浮き上がる青筋。
そんなっ……! 横文字が効かない?!
朱雀さんの頭から湯気がっ。(出てるように見える!)
俺、ピンチ!! |