16.どんべえ帰る
俺はもう、朱雀にどんな友達がいようと何も言わねぇ。
エイリアンが友達でも、幽霊が友達でも、ネッ○ーが友達でも。
(ただし家に呼ぶのだけはやめてくれ)
だけど、しゃべるキツネ……って。
動物が言葉を話すって漫画ではベターだよな。
まぁ実際ありえねぇし。
俺の知ってる限り、言葉を話せるのは人間と鳥くらいだ。
もしかして、キツネも話せたりして。それを知らなかったの俺だけとか?
キツネ:哺乳網ネコ目イヌ科、キツネ亜種キツネ属に属する動物の総称である。
(動物大図鑑MAX抜粋)
いやいやいや、やっぱキツネには無理だって!
取りあえず……会話するか……
「あの、俺ん家に何か用っすか? えっと、名前なんだっけ……? どんべえ?」
「お前さんの脳みそは空っぽか? わしゃ権兵衛だ!」
このっ……! キツネのくせに!
人間よりキツネの方が脳みそチッチェエくせに!!
「どんべえはな、お前に会いに来たのだよ、ハル」
朱雀さん、権兵衛さんの名前間違ってるから。
「俺に?」
「さよう、朱雀殿が見込んだ人間がいると、風の噂で聞きつけてな」
――朱雀って、なんか偉いやつなのか?
「噂どおり、面白い人間じゃ」 権兵衛さんは器用に前足を使ってアゴをさすっている。
「ふふっ。どんべえも興味がわいたか」 いやいや、朱雀さん普通に間違ってるってば。
「さて、噂の人間を拝んだことだし、わしゃ社に戻るとするわい」
権兵衛さんは脇に置いてあった木の棒を掴み、杖の代わりに使って2本の足で立ち上がった。
そう、2本の足で……
え?
立てんのォ?!
「どんべえ、遠いところご苦労だったな」 朱雀さん、もう言ってやんねぇよ?
「なんの、邪魔をしたのはわしのほうじゃ。土産を置いてゆくから、皆で食べなされ」
権兵衛さんが唐草模様の風呂敷を脇から取り、俺に手渡してきた。
「御二方、ではまた」
そう言って、木の棒にくっついていた1枚の葉を額に乗せると、昔話の化け狐のように
ボンッ!
という音と共に、権兵衛さんは忽然と姿を消した。
んなバカな!!
「ハル、どんべえがくれた土産が美味そうか見てみたい♪」
俺の持っている風呂敷を見つめながら朱雀が催促した。
「やっぱ、キツネのプレゼント……つったら、いなり寿司とかかなぁ?」
ちょっと重いし、たくさん入ってそうだな。
お土産まで持ってくるなんて、権兵衛さんいいキツネじゃねぇか。
風呂敷を床に置き、結び目をほどき、期待を込めて風呂敷を広げた。
ハラリ。
「ンギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「あぁっ馬鹿者! 全部逃げてしまったではないか! ハル、倒れてないで早く捕まえろ!せっかくのご馳走がもったいないであろう」
(チュー、チュー!)
説明すると……風呂敷の中身は……い、いなり寿司なんかじゃなかった。
「皆で食べろ」と置いていったお土産は――
――生きたネズミ……!
風呂敷から逃げ出すネズミの大群は、マンションの10階を、駆け……ま、まわ・る――
(バタッ)
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