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千年王城
作:黒雛 桜



10.人間万事塞翁が馬


 うっ……。すげぇドキドキする。
 あぁっ、テンション低いクラスだったら俺馴染めるかなぁ。


 朝のHRで、一通り担任の小山先生が話し終わった後、俺が呼ばれて自己紹介をする。
 転入生のお決まりのパターンだよな。

 そんなわけで、俺は教室のドアの前で一人緊張しているワケだ。

「入ってきてくれ!」

 ドアの向こうで小山先生に呼ばれ、ドアに手をかけようとした――その時。


 俺より先にドアを開けて中へ入っていく人物。
 堂々と、颯爽と中へ入っていく姿を俺は廊下から呆然と見つめる……
 その人物はもちろん、

 ――朱雀だぁ……


 ちょっと待てぇえ! 
 出てくる場所、違うだろ?
 職員室にいたのは、まぁ、許すよ?

 だけど、この場面は違うだろぉおお!!

 教室がざわめきだしたけど、当然だと思う。うん。


「ご学友の方々、本日より小山殿の門下になる櫻井 春彦に何卒親切にしてやっていただきたい」 朱雀さん、深々と頭を下げる。

 なんでお前が出てきて俺の代わりに挨拶するんだ? いやがらせか?!

「みんな、彼女は・・えぇと・・? 転入生の櫻井君の、まぁなんだ・・・スザクさんだ」

 先生、朱雀のこといまいち分かってないのにどうにかまとめましたね。

「スザクさんではない。千年王城の朱雀だ!」

 朱雀さん、余計話がこんがらかるから、やめろ!


「櫻井君、中に入ってくれ」

 クラスはすでに静まり返っていて、おそらく朱雀の登場でドン引きしたんだろう。
 すげぇ入りにくいんですが!!

「……あの、はじめまして……東京から来た、櫻井 春彦です……」

 ぁあ、緊張も不安もどっかへ行っちまったぜ。
 スパッツ女のせいでテンションガタ落ちだし。

 「ハル、いつもの元気はどうしたのだ?」言って、朱雀が横で不思議そうに俺の顔を覗き込んでいる。
 てめぇのせいだっての!

 最初が肝心だからって一生懸命挨拶のシュミレーションまでしてたってのに、こいつのおかげで……くそぉっ!(ぐすん。

「よろしくお願いしますっっ!!」
 
 開き直った俺はこれから始まる新生活に不安を抱きながら、ありったけのボリュームで怒鳴った。いや、怒ってたわけじゃぁないけど。 

 はい、もうやけくそに近いです。

 下げた頭をそっと上げてみる。
 皆が顔を見合わせ無言で俺を見つめ、教室はシーン、としていた。


 当たり前かぁ……


「――イェーイ! ようこそ3−5へ!! まぁ仲良くしてこうぜぇ〜」

 突然一人の男子学生がイスの上に立って、大声で挨拶を返してきた。
 それに便乗して一斉に皆が騒ぎ出す。

「こらっ、お前ら! ちょっと騒ぎすぎだぞ」先生の注意もそっちのけで、クラス全体が盛り上がってる。

 
 あ、あれ? こうゆうノリか?


「ハル・・・良い学級のようだな」
 
 朱雀が珍しく目を細めて、やさしく微笑んだ。
 いつもこんな顔だったら、かわいいんだけどなぁ。

「うん。なんか、すげぇホッとした・・・」

 感想は本当にこの通りだ。
 こっちにきて、色々不安が多いせいで緊張しっぱなしだったんだ。
 だけど、この明るいクラスを見ていて、心にかかったモヤがだんだん晴れてきたのが分かる。

 どうやら、学校だけは、楽しくやっていけそうだ。



【人間万事塞翁が馬(一般的には塞翁が馬)】:人生思いがけないことが不幸につながったり、幸福を招いたりするので、誰にも予測はつかないという事。

辞書を開いて調べたので、一つ賢くなった気分です(笑)











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