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ツインテールの王女さまとオシャレ従者と露出美女に獣
 突然、幼女に子作り宣言されたら……誰だって固まるだろうよ。

 魔王の俺も、固まっちまったけど。隣にいるシビリアンの罵倒で自我を取り戻した。

 「破廉恥です!!よりによって私のハイゼット様になんて事を仰るの!!恥を知りなさい!!」

 もう完全にやる気モードのシビリアンに対して、態度を崩さない幼女が鼻でシビリアンを笑う。

 「黙りなさい、貴女のような下等生物に用が無い」

 幼女なのに高慢とも取れる態度に、ハイゼットは顔を歪ませて言った。

 「俺もアンタには用がない」

 なんか、この2人からは面倒ごとの匂いがプンプンしちゃう。何食わぬ顔で横を通り過ぎれればいいな。

 「何を言うか?貴様、未来の妻を用がないとは何様だ!」

 君こそ何様なのよ~ん。

 じろっと幼女を睨むと、意外にも幼女は焦って顔を赤くしている。

 あれ?もしかして、言語と態度が一致してないのかな?

 もしや、これが噂のツンデレという奴かい?よく分からない。

 ああ!何かもう幼女が涙目になってきた、子供と女性には優しくの精神が働くじゃないか。

 「悪い、言いすぎた。自己紹介の一つでもしてくれないか?何て呼べばいい」

 とたんに、幼女の顔は明るくなる。そして、再び胸を張ると。

 「あたくしはシャリオ第一王女、エメロードだ。あたくしの名前を心に刻みなさい」

 後ろの従者らしき男が、エメロードに笑ったまま表情を変えずにパチパチと一人で拍手を送る。

 それに気をよくしたのか、満足そうな視線でハイゼットを見据えた。

 「そして、私はエメロード王女の従者アスパイア。以後お見知りおきを」

 エメロードの後ろにいた、長身の男は帽子をとり丁寧なお辞儀をするが、いかんせ顔が貼り付けたような笑みなので嫌味に見えた。

 「シャリオ?知らないな…」

 ハイゼットは自分の膨大な情報を整理している記憶の本棚で「シャリオ」というのを探してみるが、該当するものはない。

 「高貴なる我が世界の名を知るのは、そうそうおらん」

 俺と君との会話のキャッチーボールが出来てな……世界?

 ハイゼットはエメロードの言葉に反応する、そして今にもエメロードに飛びかかろうとしているシビリアンを手で掴んで動けないようにしている手にも力が篭る。

 シビリアンは、エメロードを完全に敵とみなして仕込んでもない攻撃魔法発動しそうな勢いだ。

 「まあいい、今日はあたくしの顔見せのつもりだ。将来の妻の顔も見ずに子作りは流石に頂けない」

 だから子作りとか幼女が言わないで、それ以前に。

 「俺はあんたと子作りする気は無い」

 呆れてもう何が何だか。

 すると、エメロードとアスパイアが顔を近づけてヒソヒソと話し出す。特にアスパイアは帽子で口元を隠しているが、その会話は全部俺に筒抜けだった。

 「おかしい、お父上はあたくしの魅力ならば一発で魔王ごときメロメロになると仰ったぞ?」
 「変ですね王女さま、魔王はもしかして不能なのでしょうか?」

 コラ、コラ!コラ!!

 「失礼なことを大きな声で言うんじゃねぇーよー!!」

 誰が不能だ!!アホか!幼女相手にいけない欲を誰が湧くか!!

 「現にあたくしに欲情せんだろうが」

 ほら、あんたおかしいでしょう?って顔をするな、馬鹿たれ!!

 「ああ、分かりました。彼は童貞なので、どうしたらいいか分からないのでしょう」
 「そうか、わかった。ここはあたくしがリードしなくてはいけないのか、把握した」

 馬鹿か、アホか!!貴様ら……確かに経験はないですが……これは魔族としては全然不自然じゃないぞ!!特に魔王ともなれば自分のつがいを必要としない、まて!言い訳じゃない!!何だ、その慈母のような眼差しは!!?

 じ~っとエメロードとアスパイアが俺を優しい目で見てきた。

 なんたる侮辱!!!!!

 「まあまあ…自信があられないのでしたら私が開発して差し上げましょうか?」

 帽子を被りなおして、長い指をクイクイっと動かすアスパイアにハイゼットは、背筋をぞっと震わせた。傷心の俺にアスパイアが更に塩を塗り込やがる。

 「断じてお断りだ!!てめぇ相手じゃ他も開発されかれねぇよ…ッておい、いつからこんな会話になった!?」

 フフフと蛇が人間になったらこんな笑い方をするだろうと、そんな感じの薄い笑みを浮かべアスパイアが笑う。前に立っているエメロードが自分の縦ロールツインテールを手の甲で払い。

 「それでは、今日はあたくし達はここで失礼する。他にもやることがあってな、寂しかろうが少しだけ我慢していろ」
 「誰が…寂しがるって…」

 もう、こいつら疲れる。凄い勢いでボケをかますから俺の突っ込みが追いつかない。

 アスパイアが手を広げて地面に紋様が広がり、紋様が光ると2人の姿は消えた。

 ハイゼットが周囲を窺っても幼女と従者の気配はない、本当に何処かへ消えた。

 ため息を一つ漏らし、捕まえていたシビリアンを放す。

 「あの無礼者ども!!私のご主人様に対して……!!!許しません!!」
 「ありがとう、大丈夫だ…しかし…」

 本気で怒りだすシビリアンを他所に、ハイゼットは先ほどの胡散臭い若紳士が見せた……。

 あの転送魔法…魔法か?何か違和感のある術だった。サファリで魔法を使い俺を魔王と気付ける存在はエルフくらい。しかしエルフがこのように俺に好んで接近する必要は無い。
 
 なんの補助も無しにアスパイアは転送した、魔法の中でも転送魔法は結構な上位魔法。魔力を操れるエフルでも早々できるものじゃない。それに操れるエルフなら名前くらいは知られている魔法使いになるはず。

 しかも、先ほどの術の波動は魔族でも神でもない、ちょっと感じたことのない系統だった。
 
 フム、これは一度エッセに相談したほうがよろしい様だ。

 気を取り直して、シビリアンを宥めつつも結晶化したエルフの情報を求めて、裏路地を騒がしくも再び歩き出す。
 
***

 その頃ほぼ、同時刻に魔界の覇王エッセと天界の第五守護闘神ヴォルツは、異世界のお客さんと無言で見つめあう。

 次元の歪みから現れたのは、妖艶な体と美しい顔をした美女と、横にいる赤い毛の色をした巨大な獣。

 美女の方は体の線を強調し、必要な部分を隠しそれ以外を露出するような挑発めいたドレスに身を纏い。腰まで長いロングヘアーの髪をなびかせて女は笑う。

 顔の構造は、妖艶な肉体に相応しく大人の美しい女性。唇の赤いルージュが妖しく微笑む。

 横には赤いコウモリの羽根がついた赤毛の狼、人を一口で丸呑みをするほどの大きさにもそうだが、尻尾が爬虫類のトカゲのように鱗で守られ、振り下ろせばそれすら武器になりそうだ。

 対照的な二体の客人を前に、闘神ヴォルツは笑う。

 「始めましてって挨拶したほうがいいか?」

 異世界から来客であろう、美女がヴォルツに笑い言う。

 「そうね、どんな挨拶がいいかしら?」
 
 余裕そうな美女に、こちらも余裕の笑みを絶えさないヴォルツは軽口をたたく。

 「おっとお誘いは有難いが、俺は愛妻家なもんでな。お宅たちには出来るならば…このままお引取り願いたい」

 赤毛の狼は喉を鳴らして、低く唸る。

 「勿論、お宅たちの世界にね」

 言葉の中にさっさと自分達の世界へ帰れと含む、ヴォルツ。それに美女が微笑む。

 「それは駄目よ、私達まだやることがあるもの」
 「何だ?事によっては容赦しない…」

 エッセは美女を睨む、これは守護をする者のプライドもかかっている。

 「そう難しくは無いわ、ただ貴方の大切な」

 エッセに視線を向けて、含み笑いをする美女にエッセは眉を顰める。

 「アトラス・キャブスターを私達の世界へ連れて行きたい・だ・け」

 予想もしてしなかった、アトラスの名前をだされエッセは目を大きく開く。

 「何故アトラスを必要とする?」

 エッセは保護者として、殺気すら来客に向かって静かに放つ。

 「それはね、貴方達と同じく自分の世界を調節するために、貴方たちが力を注いだ子供を使うのよ」
 「『使う』などと!!あの子を見下すな!!」

 エッセが、掌に魔力を集めて容赦ない攻撃を二体に向かって撃ち放した。

 美女が笑い、赤い狼が美女の前に立つと大きな口を開けた。

 エッセの魔力を赤い狼は喰らう。文字通り飲み込む、喉の奥へ魔力を食った。

 「貴方と何処が違うのかしら?自分の都合でアトラスに力を与え、都合のよく旅をさせる。後ろめたさから大切にしている貴方たちと、物として利用する私達の違いがどれほどあるの?」

 美女の言葉にエッセは奥歯を噛む。
 
 反論はできない、アトラスをいかに扱おうとも、結果はアトラスの力を使って自分の思う通りにしたいだけだ。

 我らもあの、異世界の住人も。

 ハッと気がつくと、赤毛の巨大な狼とエッセは視線が合う。

 狼は大きな口を開き、エッセとヴォルツへ襲い掛かった。

 咄嗟にヴォルツが結界を張って防ごうとすると、エッセの背後から手が伸びてエッセを抱きしめる。

 異世界から来た女だ。優しくエッセの耳に唇をよせて。
 
 後ろを振り向く前に、異世界の美女が囁く。

 「私の名前はプラウディア、あっちが狼はリベロ。これからヨロシクしてね、色男さん」

 エッセの頬にキスをすると、姿を消す。

 エッセはプラウディアより、前方から来る狼を構えて彼女が背後にいるのに気付かなかった。
 
 後ろをエッセが向くと、既に女の姿はなく波紋が広がる空間だけが広がる。

 それよりも、今は戦闘中。こちらに襲い掛かった狼のリベロは、ヴォルツの結界に弾かれて一瞬だけひるむ。

 <あの女め、ベラベラと余計な情報を渡すだけ渡して消えよった>

 弾かれた衝撃を振り払うように、リベロは顔を数回振ると、今度は消えたプラウディアの代わりに狼が喋り始める。

 「あんた、喋れたのか?いや~俺達の世界では魔族以外に喋られる獣はいないんで珍しいぞ?」

 リベロは鼻で笑う。

 <どうでもいい、余はアトラスとやらを連れて来る以外に異世界の強き者と戦う、これを目的に来た>
 
 どうやら、異世界の獣リベロは血気盛んなご様子。そして殺る気が満々。

 <見せてもらおう覇王と闘神の力>

 イヌ科の構造をしている顔なのに、リベロは笑い。エッセに向かって走り出した。

 ヴォルツが真っ直ぐに向かってくるリベロに身構えるが、エッセはヴォルツの前に手を出して、闘神を止めるとエッセが単独でリベロへ向かって波紋だけが広がる床を蹴り躍り出る。

 エッセが一騎打ちをするのと分かったリベロは、腹の臓器を震わせるような唸り声を上げ、鋭い牙をむき出しにしてエッセに突進する。

 リベロがエッセを喰らおうと大きく口を開き、エッセは牙を寸前で横に避けてリベロの腹横まで走る。自分の後ろではエッセを噛み損ねたリベロの歯と歯が打ちつける音が聞こえた。

 そうして、エッセがリベロの横腹まで行くと、一度体を捻り横腹に一撃。

 拳を腹にめり込ませた、そうすると流石に痛みにリベロは体を反らせるが、直ぐに尻尾でエッセを狙う。

 エッセは寸前で体を低くしてまた避ける。しかしコウモリの羽が尻尾の即後に襲い掛かってくるのに反応が遅れ、体を腕で守る。

 勢いよく、弾き飛ばされたが。波紋が広がる床に滑りながらも止まった。

 リベロは嬉そうにエッセを見る、エッセの一撃を貰ったとは思えない。エッセも殆どダメージを受けた様子もなく、体制を整えた。

 <嬉しいぞ、余とこのような戦いが異世界では出来るのだな>

 心底嬉しそうに、唸り交じりにエッセに伝える。

 リベロはベロっと口を長い舌で舐めると、尻尾を一振りしてエッセとヴォルツに背を向けて歩き始めた。

 「もう満足か?」

 エッセは去ろうとしている狼に言葉を掛けた。

 <今のは挨拶代わり、次は力の限り戦いを楽しもうではないか>

 笑い声を上げて、赤い狼は消えた。

 お互いにあの程度の戦闘は、小手調べに過ぎない。力の加減はリベロもエッセも準備運動感覚だった。
 
 次元と次元との狭間での戦闘は様々な因果を引き起こす、せめて場所がここではなかったらリベロはもっとエッセと戯れていただろう。見た目は獣だが、愚かではないようだ。

 「しっかし、面倒なのがきたな」

 傍観していたヴォルツがエッセの側に歩きながら、呟く。

 エッセは静かに、先ほどの望まぬ来客の二人を思い出した。確かな殺意をもって2人はこの我々に接触してきた。

 2人が侵入者であるには間違いない、ならば――殺害対象だ。

 目的はアトラス、他の世界の住民がどんな理由があろうとも愛し子に手をだすのは許せない。

 これからヴォルツは天界に帰り、先ほどの報告をするだろう。そして天界も魔界と同じ検討を出す。

 しかし―――。

 思い浮かべるは先ほどの侵入者の姿。

 「まっ、お前がその気になれば……おい、如何した?」

 ヴォルツがエッセの首に腕を回して「お前の方が強いぞ」なんて兄貴のように会話をしようとしたが。

 エッセが俯き顔を赤くしているので驚いた。エッセに何かあれば、孫のように可愛がっている天界の最高神と愛する妻に、容赦なくボコッボコにされる。

 「おいおい!まさか先の戦闘で……!!」

 焦るヴォルツにエッセはポツリと呟く。

 「惚れた…」
 
 ここで間抜けな声で。
 
 「は?」

 っと答えたヴォルツは悪くない。
こんにちは長毛種の猫です。
休み中のなので一日一回更新を目標に頑張っているのですが、既に怪しい雲があつまってきあました。

それより、新キャラの目的が判明、何よりエッセは面倒な相手に惚れちゃいました。

更にバタバタさせていきたいです。


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