踏切守
よ、また来たのか。
お前さんもヒマだな。斯く言う俺もそうだけどさ。
最近どうかって? そりゃご覧の通り、閑古鳥だよ。全然人来なくなったし。正直ちょっと寂しい。
いやいやいやいや、そこ笑うトコじゃないっしょ。違うでしょ。通り一遍でも慰めとくところでしょ。
あー、うん、まあそれを言われちゃうと痛いんだけどね。でも仕方ないんだって。
ホラー映画でさ、あるだろ?
序盤えらい恐ろしい形相で出てきた幽霊が実は親切なご先祖様で、降りかかる災難を回避できるように警告してくれてました、みたいなの。
俺もツッコんだクチですよ、ええ。もっと判りやすく、そいで怖くない感じで伝えなさいよ、と。
でも無理なんだわ。自分でやってみて身に染みたわ。
人間ね、自分自身の姿とかね、全っ然覚えてないもんなんだよね。
嘘だと思ったら鏡使わずに全身自画像描いてみな。俺の言う意味分かるから。
だからまあ、こんな風体でビビられるのはしょーがない。
でもお陰で、って自分で言うのもアレだけどさ、俺以降このポンコツ踏切での事故はナッシングじゃん? 俺はそういう事に喜びを感じるわけよ。人が来なくなったのは正直寂しいけど。
いやいやいやいや、だから爆笑するトコじゃねぇっつの。
まあなんだ、寂しい寂しい言っといてアレだけど、お前さんもそろそろ帰んな。夜道は危ねーぞ。
それに「あの踏切でいつも独り言してる不審者がいる」なんて噂まで立ったらよ、ますますここが寂れんじゃねーか。
ま、でももし気が向いたらまた来てくれな。このポンコツが新型に変わるくらいまでは、俺、ここにいると思うからさ。
おう。それじゃ、な。
ん? ……ああ、ありがとよ。
それじゃ、また、な。