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翼と竜・3
「俺はリュート。タバサのつか…協力者さ。よろしく」
 イザベラは玉座に座っているというのに、リュートはタメ口で話しかけます。本来ならイザベラがかんしゃくを起こすところですが、
「……協力者、だって?」
「うん」
今回はそのかんしゃくが別の方向に働きました。
「ガーゴイル!協力者というのはどういうことだい!?」
 怒ったように、そして怯えるようにイザベラは叫びます。
「あの事件の参考人」
 それに対して、タバサは無表情に答えます。その目はイザベラを見据えていますが、無感情にイザベラを映すだけでした。
「……チッ、そうかい。せっかく反逆罪でお前を殺せると思ったのに」
 タバサの説明で調子を取り戻したのか、苦々しいといった口調でイザベラはタバサに聞こえるようにつぶやきます。しばらくの間、睨み合う2人。
「………えーと。なんだい、この状況は?」
 2人のどちらかが折れるよりも早く、リュートは重い空気に折れてメイドさんに訊ねますが、メイドさんたちは2人のやりとりにオタオタしており、リュートの質問に答える余裕はありませんでした。
「……ふん、まあいい。それより、どういうことだい?この平民が参考人だって」
 タバサとの睨み合いに耐えられなくなっていたのか、イザベラは値踏みするようにリュートに視線を逸らします。こちらの世界でも珍しくない格好であり、その上高貴な雰囲気が出ているわけでもなければ騎士のように強そうなわけでもないので、なんか珍しい楽器を背負っている単なる平民という風に見えます。
「彼の…」
「おっと。そんな汚い格好で王女の私と話すのかい?」
 タバサが質問に答えようとしたとき、イザベラが遮りました。
「脱ぎな」
 まるで汚いものを見下すようにイザベラは告げます。タバサは着ている衣服を脱ぎ、下着姿になろうとしました。
「へっ?それじゃ俺も脱ぐの?んー、脱ぎたくないんだけどなー」
 が、シリアスなムードを見事に打ち壊す、どこか間の抜けた声が聞こえてきました。
「………やっぱり脱がなくていい。ガーゴイル、本当になんなんだい、この平民は?」
 タバサを下着姿にして恥ずかしい思いをさせてやろうと考えてたイザベラは、リュートにイライラしつつタバサに訊ねます。
「彼のいた国でも同様の事件が起きた。そして、解決したうちの1人」
「…へぇ」
 タバサの言葉にイザベラは少し驚きをみせますが、すぐに取り繕いました。
「なら、さっさと解決してきな。それと…」
 イザベラは1度話を切り、愉快そうに口の端を上げました。
「喜びな、仕事の追加だ」
 イザベラがそういうと、手に持っていた書簡を広げました。
「内容は…翼人と竜の討伐だ。1つの村に同時に発生している。それをどうにか討伐してきな」
 イザベラは下品な笑みで2人を見ました。
(これでこいつらの余裕もなくなるはず)
とイザベラは考えましたが、イザベラが望んだ驚きや焦りが混ざった顔は、周りのメイドさんたちにしかありませんでした。
「………」
 1人は無表情にイザベラを見続け、
「翼人と竜……ハーピーとドラゴンか。懐かしいな」
もう1人は過去の冒険を笑って振り返っています。
「……ガーゴイル、平民。なんであんたらは動揺しない?怖くないのかい!?」
 翼人と竜。それぞれ戦うのでも厳しいのにも関わらず平然としているタバサとリュートに、イザベラは苛立ちを隠さずぶつけます。
「………」
 イザベラの苛立ちにタバサは無言で彼女を睨むばかりですが、リュートは苦笑しながら答えます。
「んー、怖いっていったら怖いんだけどね。2つの種族とも見たことあるからね。それに別に討伐しなくていいんじゃないかなーって考えたり」
 討伐しなくていい、との言葉に周りのメイドさんたちはざわめきました。
「はっ、討伐以外にどんな解決法があるんだい?」
 鼻で笑うイザベラにリュートは少し考えたあとに答えます。
「……話し合いとか」
 リュートの言葉に、場は静かになりました。少ししたあと、
「……オホ!オホホホホホ!オホホホホホホホホホホホ!」
話し合い、という言葉にイザベラは狂ったように笑いだしました。
「わわっ!大丈夫!?」
「話し合い!話し合いだって!?いいだろう、話し合いで解決したらなんだって褒美を出してやるさ!無理だと思うけど!オホホホホホ!」
 壊れたように、愉快そうにイザベラは笑います。そして、手に持っていた書簡をタバサに放り投げます。
「さあ、行ってきな!報告を楽しみに待ってるよ!」






「なあ、タバサ。俺って変なこと言ったかい?」
 部屋から退室したあと、歩きながらリュートはタバサに話しかけます。
「あなたの世界では分からないけど、こちらの世界ではごく稀なこと」
「なるほどねー。…あ、話変わるけどさ、最初の方に言ってた『あの事件』って何?」
 リュートはずっと気になっていたことを訊ねます。何気なく訊ねたことでしたが、それは彼にとっては関わりのある事件となるものでした。
「……この前あなたが歌ったの歌と同じ様な事件がこの国に起こっている」


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