第1話:異世界からの使い魔・1
鏡を越えるとそこは学園だった。
そんな文学的、もしくは某世界的に有名なアニメの始まり的な考えがリュートの頭の中を巡りました。無論、リュートはそんなこと知りません。
鏡を越えた先にはリュートよりも一回り若そうな、黒いマントを着た少年、少女たちが彼を物珍しそうに見ています。
遠くの方にはヨーロッパの中世時代にありそうな石造りのお城が建っています。
「平民…か?」
「あのタバサが平民を召喚した!?」
「なん…だと…!?」
「だけど背中になんか楽器っぽいの背負ってるぞ」
「それじゃ、楽士なの?」
……ザワ……ザワ……ザワ……ザワ
周りがざわめく中、座りながら呆けるリュート。状況が全く掴めていません。
「静まりなさい!」
そんな中、今度はリュートよりも一回り年がありそうで、物腰の柔らかそうなハゲ…髪が薄い、メガネをかけたおじさんが出てきて少年たちを一喝しました。
「…静まりましたね。それではミス・タバサ」
「……………はい」 そう返事をしてリュートの前に出てきたのは少し小さな、メガネをかけた美少女でした。
サラサラとした蒼い髪は短く切り揃えてあり、色白で奇麗な肌。顔立ちは人形に見紛うほど整っており、眼も綺麗な蒼色でした。
ついでに、リュートは蒼いって言うよりも青い髪で、イケメンではないですが見る人みんながお人好しと評価する顔をしています。着ている服も、この世界の人から見ると、平民に見えます。
ミス・タバサと呼ばれた少女は未だに呆けてるリュートの前で立ち止まりました。無表情なので何を考えているか分かりません。
そんな少女が前に来てやっとで復活したリュートは、彼女が何かぶつぶつ唱えているのにも気にせず、質問しようとします。
「あのー、ここは」
どこ?と完全には言えませんでした。何故かと言うと、彼女からキスをされたからです。mouth to mouthで。いきなりのことにリュートは再び機能停止に陥りかけましたが、
「……ってなんか手がっていったああぁぁ!?」
左手に焼け付くような痛みを覚えたせいで、こちらに戻ってきました。
彼の左手にはなんか妙な形をした紋章みたいなのが刻まれていました。
「ふむ。見たことのないルーンですが……。ちょっとスケッチさせてもらいますよ。ミス・タバサのサモン・サーヴァントは一応成功ですね」
そう言ってスケッチを取るメガネの人。全く状況が把握出来ていないリュートはタバサに質問します。
「あのー、今度こそ聞きたいんだけど、ここどこ?」
「………ここはトリステイン」
そう短く答え、視線を外すと手に持っていた本を読み始めました。
「お嬢さんはどちらさんで?」
「…………タバサ」
視線を全く向けません。
「タバサ、ね。俺はリュート。よろしく」
握手の為に手を出しますが、シカトされました。リュートは苦笑して手を引っ込め、今度は別の質問をします。
「もしよかったら、俺は今どういう状況か教えてくれない?」
「…………」
少女は無言で本に栞を挟んで閉じると、リュートの方に向き直りました。
「あなたは使い魔として呼ばれた」
「へっ?」 彼女の話によるとこの学校―トリステイン魔法学院―では春に使い魔を召喚する儀式があるらしく、タバサが召喚してみるとリュートだったので契約したとのこと。もう1回、っていうのはなしらしいです。
「契約っていうと?」
「さっきのキス」
そういうことだったんだと納得しつつ、微妙に顔が赤いリュート。誤魔化すために別の話をします。
「えーと、シップ到着場ってどこにある?」
「シップ?」
「……えーと、リージョン、って知ってる?」
首を横に振る少女。
「知らないならいいや。気にしないで」
彼の世界では混沌の中に領域が存在し、様々な世界観を持っています。リージョンというのはその領域といった感じです。
リージョン間を移動するためにはリージョンシップなどの移動手段があります。
(まさか、未開のリージョンに来ちまったのか?)
そうであったら一大事です。帰る方法がありません。
頭をうんうん悩ませていると、タバサが質問してきました。
「どこから来たの?」
「ああ、それは…」
彼女の質問に答えようとしたとき、再びざわめきが起こりました。
「ゼロのルイズも平民を召喚した!!」
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