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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

或る雨の日

作者: 京元緋呂

 冷たく水気を孕んだ空気と、僅かに窓を打つ雨粒の音に目を開ければ、時間は既に午後三時。ああ、今日は少し早く起きて、新しい音源を探そうと思っていたのに。もうこんな時間かと溜息が出た。

 寝ぼけ眼を擦りながら、取り敢えず何か音を流す。ベッドの中で聴く、スラング混じりのアンソニーの歌。そう言えばこれは、あの映画の挿入歌だったと気付く。劇場で観た後、アイツは良く判らねえとぼやいていたが、俺は結構面白かった。

 それにしても。

 意識が目覚めるにつれ、寒さが増してくる。二人で寝ると裸でも暑いのに、一人寝は何でこんなに寒いんだ。

 隣に寝てた筈のアイツは既に起き出して、居間をガタガタ掃除している。ついでに昨夜脱ぎ散らかした、脱皮したヘビの皮みたいな俺の服も、片してくれたら良いのに。

 そんな事を思いながら、薄い上掛けにくるまり惰眠を貪る。寒いから耳の上まですっぽり埋まると、一人でも少し暖かい気がした。

 隣ではようやと掃除が終わったらしい。聞こえていた機械のノイズが消えると、こちらの流す曲に気付いたんだろう。少しの間の後、部屋のドアがゆっくり開いた。


「起きたか?」


 何も答えずにベッドに埋まる俺を、そっと近づき探る気配。もうすぐ三時半だと声を掛けられ、初めて薄く目を開けた。


「…なあ」

「ん?」

「寒い」

「起きて服着ろよ」

「…抱っこ」

「ハァ?」


 子供みたいなおねだりだと言うように、アイツの鋭い目が呆れる。それでも起きない俺に、諦めたように大きな溜息を付いて。

 アイツは少し上掛けを捲ると、足からベッドの中へ入って来た。

 回される長い筋肉質の腕に、合わされる胸。アイツの腰に俺が足を絡めると、穿いているジーンズの固い感触が内腿に当たる。それからアイツは上掛けで俺をくるむと、額に啄むようなキスを落とした。


「ハイハイ、これで良いか?」

「ん。温かい…」

「寝るなよオイ。今夜も仕事あるんだろ?」

「ん」

「ったく…仕方無えな。雨の日はいっつもこうなんだから」


 そう困ったようにアイツは呟いて、俺の伸びかけた髪をゆっくり指で梳く。服ごしに伝わる体温が心地良くて、嗅ぎ慣れた匂いに目を閉じた。

 寒い雨の日には、こうして甘えたくなるんだ。だから温まるまで、このまま暫く居させて。


 せめて、この雨が止むまで。


お読み頂きありがとうございます。

この掌編は、ムーンライトノべルズにあります「ハレルヤ!」の関連作品です。

もしよろしかったら、そちらもどうぞ。

(十八禁かつ多少嗜好の強い内容ですので、該当しない方、苦手な方は閲覧をお控えください)

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― 新着の感想 ―
[一言]  失礼しますm(__)m  BLは苦手な僕ですがこの作品楽しく読ませていただきました。  とても読みやすく温かい作品だと思いました(^O^)  これからも執筆活動頑張ってください。
[一言] うわぁい! △ △ (;゜◎◎゜)ブヒッ!! …コレ好き(笑) いいッスねぇ。 すいません、経験がじゃましてこれ位じゃ…もっとハァハァして下さい(爆)
2010/02/07 23:39 退会済み
管理
[一言]  BL作品って、私はあまり読んだことがないのですが、短編でふんわりし上がっているので読みやすかったです。  素敵な作品をありがとうございました。  お互いに執筆頑張りましょう!
2010/01/23 15:24 退会済み
管理
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