ツナガリ
「3・2・1・スイッチ、ON!」
西暦が廃止されて、久しい世界。人類は、新たな世界を作ろうとしていた。
簡単に言うと、今私達がいるのとは違う宇宙を、作ろうとしていたのだ。
詳しい仕組みは、私には分からない。ただ、その試みは、たった今、実行されたのだ。
さて、申し遅れたが、私はアダム。新たな宇宙を作る為の装置を操作する、重すぎる責任を負った者の一人だ。
つまり、10人同時に押して解除する起動スイッチを、押す一人なのだ。
いや、だったと言うべきか。既に、システムは起動してしまった。
そして、新たな宇宙に私はいる。そうだ、新宇宙の創造は、成功したのだ!
私は、コレまでのことを刻んだ石版を、カプセルに入れて、新宇宙に解き放った。
やがて、この世界で生まれるであろう、未知なる生物が、読める筈もないだろうが。私は、きっと解読してくれることだろうと思う。
あれから、一年経った。かかる費用に見合うだけの利益が出ず、その上危険なことが判明した為、新宇宙との行き来は出来なくなってしまった。
なのに、どうして、ここに“こんなもの”があるのだろうか。
“コレ”は、新宇宙を漂っている筈なのに。
私が新宇宙で解き放った石版入りのカプセルが、現宇宙(私達がいる宇宙の事だ)で発見されたことは、大きな波紋を呼んだ。
私は、マスコミに追われ続けている。
新宇宙が、現宇宙に繋がっているなど、誰も考えやしなかった。
今思えば、新宇宙との行き来がとても危険であったことに感謝するしかない。
もし安易に行けたのならば、私達は滅んでいたことだろう。
しかし、私達がいる世界に繋がっている世界は、新宇宙だけではないのだ。
世の中に溢れている様々な作品。それらと出会って、何かが変わったのならば、その作品の世界は、私達と繋がっている。
私はアダム、世界の始まりの男と同じ名だ。しかし、新宇宙はないようだ。
この手記を読んでいる存在よ。その隣に、良作があることを願う。
そして、この世界に繋がる世界に、出会い続けて欲しい。
総執筆時間は、一時間前後だと思います。
しかし、構想?自体はずっと前から有ったものです。