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異世界×サバイバー 作者:佐藤清十郎

第1章 漂流者

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プロローグ

 ボーナスを叩いて買った新車のバイクで、俺は目的の温泉地を目指した。
 天候は快晴とまでは行かないが、薄曇りというまずまずの天気だ。
 頬に受ける風は冷たいが防寒は万全なので、それほど問題はない。

 北海道、ニセコ某所。
 世間ではゴールデンウィークと言われている連休である。
 長い人だと10日間ほどの連休になる人も、いるとかいないとか。

 羨ましい話だ。

 俺はというとここ数年は『今年は休みになりそうだ』と言われつつ、結局仕事が入ったり、何かしら雑事に追われまともな連休になった記憶がない。

 前もって休みが取れないためなかなか予定も立てられず……といった状況だったのが、今年は違う。

 意を決して社長に直談判し、連休を獲得したのだ。

 渋い顔をされるかと思いきや、俺の要望はあっさり通った。

 なんてことはない。ただ会社が暇になってきて、少々スケジュールに余裕が出来たという話だ。

 俺は昔から付き合いのある連中に声を掛け、ツーリングキャンプの企画を打診した。

 その結果数名の参加者を得たわけだが……

 連休直前になって急にドタキャンされ、俺は一人旅となった。

 1人は「親を還暦祝いがてらに、温泉旅行へ連れて行くことになった」とキャンセル(もっと前もって計画しとけよ!)

 1人は、「彼女が出来たので、行けなくなった」とキャンセル(この前の合コンで、持ち帰りした女だろ!)

 1人は、「子供が生まれたんだから、もうバイクは卒業して!」と嫁に言われた。とキャンセル(その前にギャンブルを卒業しろ!)

 1人は、「仕事が終わりそうにない」とキャンセル(がんばれ!)

 結果、俺はソロツーリング。
 もちろん予定の変更はない。
 せっかく滅多にない連休を手に入れたのだ、家でただ過ごすのも勿体無い。
 今の愛車での初の遠出だ。
 この贅沢な時間を存分に満喫しようと思う。



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 道は渋滞というほど混んではいなかったが、温泉や食事処はさすがにすごい混みようだ。
 時間帯のせいもあるだろうが、人が行く所というのは大体が皆同じようである。

 俺は何箇所かの温泉と景勝地を巡り、今夜の宿泊の地となるキャンプ場にやってきた。

 日が落ちるには、まだ少し時間があるが、さすがに山間部は冷える。
 夜になれば、まだ下がるのだろう。
 俺は寝床と食事の用意を急いだ。

 キャンプ場は羊蹄山の麓にある。
 周囲は原生林に囲まれており、自然あふれるいい環境だ。
 こんな環境にいると、普段の忙しさを忘れさせてくれる。

 場内にテントを張る客は、俺を含めても数組しかいない。
 敷地はかなり広いため、ほとんど貸切状態だった。
 まだここにきて他の客の人影を見てないくらいだ。

 俺は食事をカップ麺で簡単に済ませ、買ってきた缶ビールで一息ついた。

 愛用のローチェアに足を投げ出して座り、ぼんやりとした時間を過ごす。

 あくせくしたいつもの日常が、嘘のようである。
 周囲からは微かな風の音と、ホーホーという遠くで鳴く鳥の声しか聞こえない。
 とても静かな空間だった。

「なにもしないでいるこの時間って、すげー贅沢だなー」

 俺は誰に聞かせるわけもなく、1人呟いた。

 しかし1人は、ちょっと寂しいのも事実だ。
 俺は今の状況をLINEで撮影し、グループに乗せておいた。



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「起きてても何するわけでもないし、そろそろ寝るかな……」

 LEDランタンの明かりを消し、眼鏡を外して寝床に入る。

 さっきもスマホで確認したが、雨の降る予報にはなっていない、しかし夜露で濡れるのも嫌なので、濡れて困るものはテント内に収納する。
 その辺を見越して、俺のテントはソロにしては十分な広さがあって快適だった。

 寝袋の中で蹲っていると、外の風が強くなってきた。

 俺は普段から寝付きのいいほうで、自慢じゃないがどこででも寝れる人間なのだが、今日はなぜか寝付けなかった。

 目が冴えてしまいテントの中の天井をぼんやりと眺める。

 キャンプ場の街灯は少し離れた場所にある炊事場とトイレ、それと場内の幾つかに必要最低限あるだけといった感じで基本的にかなり暗い。

 街灯近くでなければ、足元も見えないほどだ。

 俺がテントを建てた場所は、街灯から離れているため、テントに明かりが差すことはない。

「あれ?なんか外明るいな……?」

 枕元にあったスマホを見ると、深夜1時を指していた。
 俺のテントの近くには、他の客のテントは立っていないはずだ。
 こんなガラガラなのに、わざわざ他人のテントの近くに寄ってくる奴はいない。

 たぶん他の客がトイレに行くために、ランタンを手に俺のテントの近くに、通りがかっただけだろう。

 珍しくなかなか寝付けない俺はスマホをいじり、小説投稿サイトでブックマークしている小説が更新されていないかチェックすることにした。

 俺がスマホをいじっている間も、外の明るさに変化はなかった。
 もしかしたら酔っぱらいが近くに居座っているとか?そんなことを思うと、ちょっと気持ち悪い。
 俺は不審に思いテントの入口のジッパーを少し開け、外の様子を伺った。

 人影はない。

 そういった気配もない。

 だが外は明るかった。

 深夜とは思えないほどである。

 日中雲が出ていたせいもあってか、月明かりもなく暗かった場内。

 俺はテントから外へ出て、周囲を確認した。

「なんだこれ……?」

 薄曇りといったような昼間の天候。

 日が落ちてからも寝る前までは似たような状態だったはずだが、今俺が見上げる空はおかしなことになっている。

 分厚い雲が空を覆い尽くし、グルグルと渦を巻いているのだ。

 雲の渦はピカピカと紫に輝く稲妻を放っており、それが空を照らしていた。

 ぼんやりと空を眺めているうちに次第に風も強くなってきた。

 俺は天候には詳しくないが、こんな雲初めて見た。

 きっとかなり珍しい現象なのだろう。

 俺はその不思議な現象を食い入るように見ていると、不意に俺の直ぐ側で起こる空気を切り裂く衝撃音。

 天から疾走る、一本の閃光。

 その閃光は吸い寄せられるように、俺のバイクへ向かった。

 俺は思わず、身を縮こませた。

 グラリと倒れこむ、俺のバイク。

 気のせいか煙が、上がっているような……?

 はぁ?

 え?雷?

 マジで?

 空から遠く聞こえる、ゴロゴロとなる音。

 こんな障害物の少ないキャンプ場とかって、もしかしたら危ないのか?

 どうしよう、どこに避難したらいいんだ?

 あぁ、クソッまだぜんぜん乗ってないのに、まさか落雷に会うなんてそんなことってあるか!?

 俺が若干パニックになっていると、再び空気を切り裂くような衝撃音と共に周囲が閃光に包まれた。

 激しい衝撃が体を突き抜ける。

 あ、俺死ぬわ。

 俺は咄嗟に、そう思った。

  
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白狼剣士は復讐を望まないもよろしくお願いします!
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