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始まりはひよこから

作者:天酒之瓢
 VRヴァーチャルリアリティ――仮想現実。

 コンピュータシステム上に構築した仮想世界に意識をつなぐこの技術も、一般利用が可能なレベルでの普及が始まってから、はや数年が経とうとしている。今ではこの技術なしの生活など考えられないほどだ。それは当然、娯楽の分野にもかなりの浸透を見せている。
 MMO(多人数同時参加型)ゲーム。ネットワークを通じて、文字通り大勢のプレイヤーが同時に接続するスタイルのゲームのことだ。VR技術の登場以降、この主のゲームが最も大きく恩恵を受けたといっても過言ではない。VR技術を用いれば、多数の人間が実際にその場に集まって遊ぶのと変わらない状況を簡単に再現できるからだ。
 そんなわけで今日では様々なゲームが作成され、多くの人が気軽に日常生活では味わえない仮想的な状況を楽しんでいる。
 ある者は中世西洋風の世界で剣と魔法をふるい。
 ある者は二〇世紀の戦場で、銃を手に兵士として過ごし。
 変わったところではF-1レースやドラッグレースを体験するというものもあった。

 そんな中でも、いっとう際物のジャンルのゲームが存在する。それが“メカアクションシューティング”というジャンルだ。
 仮想現実という“実際には存在していないものをあたかも現実のように体験する”技術を最大限駆使し、この時代の技術でも実用化に至っていないSF兵器の数々の操縦を体験するという、極めて趣味的なゲームである。
 現実に存在しない上に、理論的な部分が困難でVR技術が普及してからも長らくこのジャンルに該当する作品は現れなかった。

 しかしついに、国際的なゲームメーカーである“DOOMS SOFTWARE INC”(通称ドゥーム)が本格的なVR対応メカアクションシューティングゲームを開発し、世に打って出たのだ。
 その名は“Mechanical Tactics Alliance”――通称MeTAl(メタル)だ。
 このゲームは趣味的であるが故に、それを待ち望んだ同様の趣味をもつ人間からの熱狂的な支持を受けた。このゲームのプレイヤーは様々だ。それこそ戦車乗りからSFロボットのファンまで、幅広い層が存在する。そしてこのゲームもそれら広範囲にわたるメカ好きたちの要望を受け入れる、懐の広さを持っていた。

 そして今もまた一人のメカ好きがMeTAlの世界へと旅立ってゆく――。



 小さなモーター音と共に、俺――“作験 実(さげん みのる)”の目の前にある扉が天井に吸い込まれるようにして開いた。
 VR技術を使用したゲームに付きものの、軽い体の違和感に身を慣らすべく、俺はその場で屈伸運動をする。VR系ゲームをするのはコレが初めてではない。ちょっとした違和感も、いきなり状況が切り替わる唐突さにも慣れたものだ。

 身を慣らし終えた俺は周囲の状況を確認した。VR系ゲームをしたことはあるが、“Mechanical Tactics Alliance”をプレイするのはコレが初めてだ。手順を確認するには今この場所から情報を得るしかない。
 とはいえ、大抵のゲームでは開始直後のところに案内役がいるものだ。今俺がいるのは細い通路のような場所で、開いた扉の先にはまるで倉庫のように殺風景でだだっ広い空間がある。そして予想通り、その中央付近にぽつんと立っている人影を発見した。
 近づいてみればそれがきっちりとスーツを着こなした企業の社員風の女性であることがわかる。俺が近づいたことに反応し、彼女はにっこりと笑みを浮かべて一礼した。
「ようこそMeTAlの世界へ。私はプレイヤーの案内を仰せつかっているものです」
 案の定、案内役の人物だった。チラりと確認したところ、彼女の頭上には“案内役NPC”という表示がなされている。本当に案内のためだけのキャラのようだ。以降は“案内嬢”と呼ぼう。
「“作験 実”様、本ゲームのプレイは初めてでしょうか?」
「そうです」
「了解いたしました。では、本ゲームについての説明を始めさせていただきます」
 案内嬢の説明は、大体はすでに知っている内容だった。要約すると、このゲームはメカゲーですよ、ゲームはNPCの敵を相手に目標を達成するミッションモードと、プレイヤー操作の機体と戦うサバイバルモードがありますよ、というものだ。
 ついでに、このゲームは本当にメカを操作して遊ぶことに特化しているので基本的に外ではメカから降りることができないこと、生身でうろつけるのは“タウン”と呼ばれる街と“ベース”と呼ばれる移動拠点だけであることなどだ。
 それくらいならばゲームの宣伝にも書いてあるし、実際この説明も再確認の意味合いが強いのだろう。しかし何度聞いても潔すぎるだろうこのゲーム。基本、街にいる時以外はメカに乗ってドンパチするしかないとか、本当に趣味人専用過ぎる。

「それでは“作験 実”様。まずはゲームの開始にあたり、あなたには初心者用機体が支給されます」
「!!」
 ……キタ。キタよコレ。先ほどもいったとおり、このゲームは本当にメカを操縦して遊ぶことだけに特化している。当然メカがないと何もできないということであり、遊ぶために必須となるそれがまず最初に無料で支給されるのだ。
 こんなゲームをやろうというのだ、俺も極度のメカ好きである自覚がある。これから自分専用の――例えそれがありふれた初心者用機体だったとしても、だ――メカが手に入り、かつそれを操縦するとなれば自然と興奮も高まろうというものだ。
 このゲームを始めるにあたって、メカ好き仲間からの高い評判は聞きかじっていたが、実際にどんな機体が手に入るかまでは調べていない。未知はゲームの良いスパイスなのだ。
 俺はこれから出会うマイ愛機を迎えるべく気を静めるが、否が応にも盛り上がる心は抑え切れなかった。

 明らかに興奮が隠しきれていない様子の俺に対し、案内嬢は焦らすこともなくさっと合図するように手を上げた。彼女が指し示す先ではそれに合わせるようにして床が開き、警告用のブザーの音を鳴り響かせながら一つのコンテナがせり上がってくる。
 それは一辺およそ六mほどの正方形をしている。なんらかの格納状態を取っているとして、中の機体もおよそ全高六、七mだろうと当たりをつけた。
 シリンダーの駆動音が聞こえ、周囲に設置された警告灯が点灯する。コンテナの正面と上面部が折りたたまれるようにして展開してゆき、中に入っている物が露になってゆく。
「おお、おおおおおおおおお、おおおおおおおおおおおおおおお……!!」
 俺は感極まって、涙すら流しながら徐々に開いてゆくコンテナを見ていた。だってそうだろう、これからお世話になるマイ愛機とのご対面だ。ここで感動せずにいつ感動しようか!
 感涙に打ち震える俺の思考とは関係なくコンテナは開いてゆき、そしてついに機体の全貌が明らかになる。
「……ゑ?」
 俺はほんの直前まで興奮で涙を流していたとは思えないほど、超高速で感動が引いてゆくのを感じていた。

 コンテナから出てきた機体は、有り体にいって、丸かった。
 丸い、正確には卵型のボディをしている。そして卵のすぼまった部分が頭部になっていて、そこには突き出したひさしとその下にカメラアイ、左右にはヘッドランプ、後ろにはアンテナと思しき部分がある。ずんぐりとした胴体からは逆関節式の脚部が生え、胴体の中ほどには腕……というより小型の翼にも見える、ウェポンラックが存在していた。
 なんだか説明してゆくと格好良く聞こえてしまうが……そろそろ現実逃避をやめよう。そうだよ、どう見たってこいつは……。
「これが初心者用機体の“スクァブ”。通称“ひよこちゃん”です」
 ご丁寧にもクリームイエローに塗られたその機体は、確かにどう見てもひよこだ。それもひよこ饅頭を髣髴とさせる、ひどくデフォルメの効いたそれだ。何だこれ、初心者いじめなんてレベルじゃねぇぞ!
 っていうか案内嬢、今あんた“ひよこちゃん”って言い切りやがったな!? 意図的なのかよこのデザインは!!
「こっ、これにっ、乗れと……っ!? どういうことだよ……っ!」
 急転直下、あまりにもあまりなデザインに愕然とした表情で絶叫した俺を誰も責めれまい。今これから俺の楽しいドンパチライフが始まると思ったら、乗るべきメカは馬鹿馬鹿しいほど愛らしいひよこちゃん。その落差に耐え切れず、俺は思わずその場で膝から崩れ落ちた。
 確かに新入りというのはひよこともいうが、それはどう考えても蔑称の類だろう。本気……いや正気か運営。それともこれは小粋なアメリカンジョークだとでもいうつもりなのだろうか。

「説明を続けさせていただきます。これから一定数の評価ポイントが溜まるまでは、プレイ初心者であることを示すために、こちらで指定したエンブレムを使用してもらいます」
 笑顔で続ける案内嬢の台詞に、凄まじく嫌な悪寒を感じる。俺の人生でもトップレベルのそれが背中を超特急で這い上がってくる感触がした。正直、そろそろ案内嬢の笑顔が怖くなってきたところだ。
 俺は意を決して立ち上がると、恐る恐る“スクァブ”の背中側へと回りこむ。
 卵形の胴体の下のほう、ちょうどケツにあたる部分に尾羽っぽい放熱フィンを見つけてまた気分が盛り下がりかけたが、それ以上に衝撃的なものが背中に存在するのを発見し、俺は口を開けたまま絶句した。
 “若葉マーク”
 自動車免許とりたての人が使用する、アレだ。まさに初心者であることを大々的に主張するにはうってつけの、アレだ。それが、実に自己主張も激しいサイズで背中に貼り付けてあったのだ。つまり巨大な若葉マークつきのひよこメカ。それが初心者用機体“スクァブ”の、全てなのである!

 その時俺は、絶望が一周して怒りへと変換されるのを感じていた。今なら未来から来た殺人サイボーグのBGMがさぞかし似合うだろうと確信できる。格好いいメカでも、渋いメカでも、いっそのことアニメチックなメカでもなく、なぜこんなにファンシーなメカでなければいけないのか。正直こんなひよこ、使っても速攻でお払い箱だ。
 ……そうだ、その手があった。俺は思考を切り替えていた。
 このゲームでは金を稼ぎ、評価ポイントを稼ぐことで自由に機体の改造強化や乗り換えができる。別にひよこの身分に甘んじることはない、とっとと初心者を脱し乗り換えてしまえばいいのだ。製作者の悪意に満ちたこの“初心者いじめ”、果たしてゲームをプレイした人間に続行させるつもりがあるのかすら疑わしいレベルだが、だからといってそれに屈してやる理由はない。
 ふつふつと湧いてきた怒りと闘志に燃え滾り始めた俺を、案内嬢がにこやかな表情も崩さずに眺めている。
 頭の片隅を、これはもしかして初心者に目的を与えるための策略なんじゃ? という考えが過ぎったが、それはさすがに穿ちすぎだろう。俺は首を振ってその考えを打ち消した。
 ……違うよな?



 さて、一度やると決めたからにはここで躊躇していても仕方がない。
「これは、もう乗ってもかまわないのか?」
 俺は案内嬢に尋ねる。このゲームでは基本依頼を受けてそれを達成することで資金や評価ポイントを稼いでゆくのだが、それはもう始められるのだろうか。だとしたらどうすれば良いのか。俺の疑問に待ってましたとばかりに案内嬢が続きを語り始めた。
「はい、ではまず初心者用の操縦訓練ミッションを受けていただきます。そこで操作方法に習熟した後はあなたの自由にしていただいてかまいません」
 なるほど、と俺は頷く。
 このゲームは内容の実に九割以上の部分がメカに関することで占められている。大まかにいってしまえば、そこにはメカで戦闘するかメカを改造するかしかない。そのうち改造には知識以前に軍資金が必要であり、当然資金を得るためにはミッションで稼ぐ必要がある。つまり、まずは戦闘がおこなえないとこのゲームはそもそも始まらないのだ。
 どちらにせよメカアクションシューティングで戦闘をしたくないなんてヤツは居ないだろうから、そこをチュートリアルで用意するのは当然のことだ。納得した俺が受諾の意思を告げると、案内嬢が手続きを開始した。

 突如、コンテナが開いてからずっと沈黙を続けていた“スクァブ”の頭部がせり上がり、開いた隙間を利用して正面装甲が開いた。覗き込んでみれば、そこにはシートにレバーといったいかにも操縦席ですと主張する光景が見える。なるほど、ミッションに向かうにあたりまずは乗れってことか。
 俺は“スクァブ”に乗り込むと、案内嬢の指示にしたがってシート横のハッチ開閉レバーを操作した。シリンダーの駆動音とギアが回る音が聞こえ、胴体部のハッチが閉まる。装甲で完全に密閉されるタイプの“スクァブ”の内部は、ハッチを閉めると完全な暗闇に包まれる――と思った瞬間、ハッチの裏側に存在する正面モニターが灯を点した。
 モニターの照り返しがぼんやりと俺の顔を照らしている。そこには“SYSTEM STARTING...”の文字とバーメーターだけが浮かび、徐々に伸びてゆくそれが淡々と起動処理の進捗を示している。
 突如として俺の周りに存在する機器が一斉に活動を始めた。左右に存在するモニターが周囲の風景を映し、機体状況を表示するサブモニターも次々に点灯してゆく。動力機関の唸りが一際大きくなり、機体の各部に動力が伝達されるのが座りながら感じ取れた。コレまでは暗くてわからなかったが、シートの横に跳ね上げられていたキーボードが倒れこみ、俺の正面に設置される。

 いつの間にか正面モニターに映る文字は“GET READY?”へと変わっていた。一体どれほどの時間がたったのだろうか? しかしその文字を見ても俺はすぐには動けなかった。俺はその時、人生最高とも思える興奮の頂点にあったのだ。
 “いかにも”実際のメカのそれを思わせる起動シーケンス。シートから伝わってくる動力機関の低い唸り。そしてスロットルレバーを握り、フットペダルを踏みしめながらコクピットにいるというこの状況。メカ好きの魂に訴えかけるそれらを前に、果たして興奮しないでいることなどできようか! 現金なものだが、俺はつい先ほどまでひよこに絶望していたことなどすっかり忘れていた。
 これだ、これこそが俺の求めていたもの、実際にメカを操縦するということだ! 既に外見のことなど月の裏側までブッ飛んでいる。ほんの少し興奮の波が収まり始めると、次は猛烈な欲求が――これを操作してメカを動かしたいという欲求が、火山噴火の如き怒涛の勢いで押し寄せてきた。

 我に返り、ようやく視界を動かせば計ったかのようなタイミングでモニターに会話ウインドウが開いたのが見える。
「起動処理が終了いたしましたが、まだしばらくは操作が出来ません。これより“作験 実”様と“スクァブ”を訓練場へと移送いたします。到着後、指示に従って所定の訓練をおこなってください」
 その時、俺はもしかしたらお預けを食らわされた犬のような表情をしていたのかもしれない。まったく、相手がNPCの案内嬢で助かった。こんな状態を誰かに見られた日には、口封じにそいつとドンパチする必要が出てしまいそうだ。
「よし、準備はOKだ、早く移送してくれ!」
 コックピットで暴れだしそうな俺に対して苦笑一つ漏らさず、相変わらずのにこやかな笑顔で案内嬢が頷く。直後、コクピットに動力機関とは違う振動が伝わってきた。思いのほか軽い振動と共にモニターに映された光景が後ろに流れ、下からは規則的な音が聞こえてくる。
「訓練場まではオートパイロットで動作します。それでは、MeTAlの世界を存分にお楽しみください――」
 案内嬢の顔を映していた会話用ウインドウが閉じるが、俺はもうそんなことを気にしてはいなかった。規則的に伝わってくる歩行音に、再び興奮の坩堝へと突入していたからだ。倉庫の出口が近づいてくる。訓練場に入れば、待ち望んだそのときが訪れる。

 抑えることなど到底叶わない、高まる一方の期待を胸に抱いた俺を乗せて、“スクァブ”が訓練場のゲートをくぐった。



 今日も今日とて、俺は“スクァブ(ひよこ)”を駆ってミッションに勤しんでいた。今ではひよこの操縦にも慣れ、戦う姿もそこそこ様になってきている。

 あの日受けた初心者用操縦訓練ミッションは、なんとあれから一週間続いた。誤解しないで欲しい、いかに俺が重度のメカ好きとはいえ、さすがに一週間ぶっ通しでプレイし続けたわけじゃない。ある程度進めて途中でログアウトし、次の日帰宅した後再び挑んで――の繰り返しで、基本的なことを修めるのにたっぷり一週間かかったのだ。
 なぜそんなに時間がかかったかというと、偏にこのゲームが本気すぎたからだ。
 スロットルレバー、トリガー、フットペダルを駆使し、時にはキーボードでコマンドを入力しながら機体を操作する。難しいとか困難とかを通り越して、この難易度はヤバイ。正直一週間でこの複雑な操縦にある程度は慣れることができた自分を褒めてもいいと思うぐらいだ。
 ひよこの試練に続いて次は恐ろしいまでの操縦の難易度だ。よくこのゲーム世に出たな、という思いが過ぎらないでもなかったが、だが本気なだけあってこの操縦は異様に楽しい。正に求めていた本物のメカ操縦体験がここに存在したのだ。きっと世の中に俺と同じことに悦ぶ変態が多かったんだろう。

 さて、初心者用機体として支給される“ひよこちゃん”ことこの“スクァブ”だが、無料だけあって正直にいってその性能は低い。
 まず動力機関の出力が低く、速度が出ない。スラスターに回せるエネルギーはひよこならぬ雀の涙で、最初にブーストダッシュを使ったときは冗談抜きでブーストではなくただの屁が出たと思ったくらいだ。歩行速度はそれなりに軽快だったが、前述の出力不足によりすぐに出力限界が来てしまうため、ちょっとでも装備を積み込もうとしたら速攻で膝が折れる。つまりは火力もたいしたことはない。ちょっと待ってくれ、説明していて涙が出てきた。
 さすがに初心者が死にまくるのは問題だと思ったのか、装甲は意外に丈夫だ。モノコック構造をした卵形の胴体装甲は伊達ではなかった。まぁそれも過信は禁物で、相手が八〇mm以上の砲を持っていたら気合を入れて回避しないとヤバイのだが。
 索敵性能だけはむやみやたらと充実していて、レーダー機能は果たしてこんなに必要なのかと思うほどレンジが広く、情報が詳細だ。だが表示用サブモニターの処理能力が低いため、得られる情報の半分も表示できていない。泣くぞ。そしてカメラも無駄に赤外線から超高倍率望遠機能まで備えた高性能品である。ただし、正直にいってゲームを始めたての素人にそれを使いこなせというのは酷であり、つまり凄まじいまでの宝の持ち腐れ具合なのだった。
 何かを舐めているとしか思えない外見とあわせて、このゲームの運営は初心者に何か恨みであるのだろうか? もしくはデザイナーが壮絶なサドなのか?
 とはいえ初心者機体にあからさま過ぎる大きな欠点が見えるのは悪いことばかりではなく、そこにはゲームデザイナーからのメッセージが見え隠れする。どこから改造するか悩む必要はなく、まずは動力関係、次に足回りとそこから火力の強化に進むのが順当な道筋として見えているからだ。本気で改造を始める前に練習としてもちょうどいい感じだ。先ほどは罵詈雑言を送ったが、この運営も意外と考えているのかもしれない。……いや、それは買い被り過ぎか。

 現状、ひよこが装備している武装は固定装備である胴体部二〇mmマシンガン二挺と、機体左右のウェポンラックに装備した八連装ロケットランチャー二つのみだ。
 ロケットランチャーはいい武器だ。まず何よりも費用が安い。発射機構はただの筒、飛翔するのはまっすぐ飛んで爆発するだけのロケット。複雑さとは無縁のそれは、恐ろしいほど良好な費用対効果を示す。謳い文句は“ひよこから最終兵器まで、あなたの機体にロケットランチャー”。俺も使いだしてからこれが手放せなくなりつつある。
 唯一の難点は無誘導で十分に加速するまで時間がかかるゆえの命中率の低さか。本来は多数の弾数を以って面制圧気味に乱射するらしいが、金欠の初心者にそれは望めない。勢い、近距離で確実に叩き込む男らしい武器になってしまっているが、敵を倒せる以上特に問題は感じていない。

 今のところは序盤ということもあり、ミッションに出てくる敵機もどっこいどころか、ひよこ以下の性能のヤツばかりだ。雑魚無人機はマシンガンで、少し大きめのやつはロケットを駆使すれば苦もなく討ち取れる。
 自身でも意外なほど順調に、資金と評価ポイントが溜まってゆく。この調子ならばひよこを大改造するか、もしくは乗り換えられるまでそう大した時間はかからないんじゃないか――このときの俺はそんな余裕が生まれるほどには、油断していたのだ。
昨今流行のVR、というショートカット手段を用いてメカ物をかけないか? という実験作。
恐らくはメカ物で最も手間のかかるであろう動作原理的な設定部分をまるっとなかったことにしつつ、メカ的な見せ場であるドンパチを書きまくれないか? がコンセプト。

それ以外にも、この“ひよこ”というか超絶雑魚い初期機体という要素も、実は重要である。
アーマードコアの話で恐縮だが、なぜ地雷伍長やフレイムフライ先生があんなに人気なのか。
名物雑魚である、という以外にも、あれらが初期機体だからではないだろうか。プレイヤー全員が必ず通る道、初期機体。誰しも少しの愛着を抱くものだ。
それを魔改造できたりするのもネタとして面白いのではないだろうか。
私が言うのもなんだが、超強力機体を使うだけが、メカの魅力ではない。

そう思ってちょっと書いてみたら、気がついたら真剣にひよこの設定ばかり練って、それ以外をさっぱり考えていなかったので作品として成立しなかった。
とりあえず思考が多脚ひよこと無限軌道ひよこに到達した時点で打ち切り。三〇mm二連対空機関砲装備の四脚ひよこ……キモカッコイイ……。

とりあえず、もう少し面白くするスパイスを思いつくまで寝かせることにして、ひとまず短編にネタ保存。


ついでに一人称視点の練習。さっぱり慣れない。
設定語りの多い作品と一人称視点は相性がよくないかも知れない。

2012/11/15
ちょろっと内容修正してこっそり再公開。こんなことを考えていたときもありました。

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