第13章 御伽最大の国 ☆2
と、いうわけで、御伽警察・本部。敷地内出入り口。
『ふっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜っっっ!!!!』
その壮大な敷地と、いくつも並んだ高い塔を見渡しながら、感心したように声を漏らすハチ・モンキ・ユキジの3匹。整った設備と高度な技術により造られた建造物の数々は、ハチたちがこれまで1度も目にしたことのないものばかりであった。
「こんなすっげぇートコで働いてんのかよっ……ゴンたちっ……」
「桜時ん家の広さにもビックリしたけど、上には上がいるんだねぇ〜」
「さっ、とっとと入りましょうかっ」
「って、おいっ!そんなにドンドン進んでいいのかよっ!?」
「大丈夫ですよ」
不安げにハチが問いかけるが、輝矢は爽やかな笑顔で遠慮することなくオトポリの敷地に足を踏み入れる。
――――ビーっ!ビーっ!ビーっ!ビーっ!ビーっ!――――
「あれっ?」
「ほら見ろぉぉぉっっっ!!!言わんこっちゃねぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!!!!」
輝矢が足を踏み入れた途端に鳴り響く警報音。首をかしげる輝矢にハチが思い切り怒鳴りあげる。
「侵入者だぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
「どゅおおおおおおおおおおおおおっっ!!?」
中から出てくるたくさんの警官に、ハチが怯えたように叫ぶ。
「どうすんだよっっ!!?」
「あんなヤツらっ……1人残らず倒してみせますっ」
「いっやぁぁぁぁっっっ!!!!絶対、監獄行きだぁぁぁっっっ!!!!」
「おっ……俺は別に怪しいサルちゃうでぇぇっっ!!!?フツーのサルやっっ!!フツーのっっ!!」
「サルがフツーだって言ってる時点でフツーじゃないよ」
焦る者や冷静な者、武器を構えようとする者のいる中、警官たちが入口へと駆け込んでくる。
「貴様らっ!何ヤツだっっ!!?」
『ひいいいいいいいいっっ!!!』
周囲を囲む警官たちに、ハチたち3匹が輝矢の後ろへと逃げ込む。
「何奴?まぁアナタ方より偉いことは確かです。とっとと道を開けなさい」
『何ぃぃぃぃっっっ!!!!?』
輝矢の偉そうな発言に、周囲の警官たちが皆、怒りを露にする。
「おっおいっ!何、怒らせてんだよっ!!」
「そうそう、ここは穏便にぃ〜っ」
「とっとと開けないと吹っ飛ばしますよ?」
『だあああああああああっっっ!!!!』
穏便とはかけ離れた発言をする輝矢に、ハチたちが皆、ズッコケる。
「吹っ飛ばすだとぉぉ〜っっ?むむむぅ〜っ、怪しいヤツめっ!捕まえろぉぉっっ!!!!」
『ひええええええっっっ!!!!!』
一斉に構えを取る警官たちに、震え上がる3匹。
「何の騒ぎっ?」
『……っ』
凛と響き渡る声に、輝矢たちや警官が一斉に振り向く。
「何かあったのっ?」
皆が振り返った先に立っていたのは、水色の長いポニーテールに、大きな力強い真っ赤な瞳の、まだ20代前半くらいの若く美しい女性であった。オトポリの黒い制服を身に纏い、その左胸にはオトポリのマークの入った銀のバッチを付けていた。
「うっひょぉぉ〜〜っ!キレイなお姉さんっ!」
「懲りない男だねぇ〜」
目を輝かせるモンキに、横のユキジが呆れた表情を見せる。
「……っ?」
何か戸惑うように眉をひそめるハチ。
『副長官殿っっっ!!!』
『えええっっっ!!!?副長官っっっ!!!!?』
他の警官たちの言葉に驚き、思わず大声を出すハチたち。
「こんな真っ昼間から侵入者っ?一体、どこにそんなバカっ……って、輝矢ぁ〜っ?」
「久しぶりですね、リンゴ」
『えええええええっっ!!!?しかも知り合いっっっ!!!?』
互いに名前を呼び合う輝矢とリンゴに、3匹がさらに驚きの声をあげる。
「ふっ……副長官殿のお知り合いでありますかっ!!?」
「まっまぁねっ。ってか、何でアンタがここにいんのよっ?」
「金汰にオトポリの会議があるので聞きに来ないかって言われて来たんです」
『そっ……総長殿にぃぃぃぃぃぃっっっ!!!?』
輝矢から金汰の名が出ると、警官たちがさらに驚く。
「それなのにこの方々が……」
『うっ……!』
輝矢が鋭い瞳を向けると、周りを囲んでいた警官たちが皆、焦った表情を見せる。
『しっ……!失礼しましたぁぁぁぁ〜〜っっ!!!』
警官たちが敬礼をして、逃げるようにその場から去っていく。
「まったく……空気の読めない方ばかりですね、ここは」
「そう言ってやらないでよっ。どうせアンタが“1人残らず吹っ飛ばす”とか何とか言ったんでしょっ?」
「私がそんなこと言うはずないじゃありませんか」
「言っただろーがっっ!!!思いっきりっっっ!!!!」
「んんっ?」
『……っ?』
輝矢に突っ込んだハチを見て、リンゴが急に眉をひそめる。そんなリンゴに首をかしげる輝矢たち。
「アンタぁ〜……」
「ううっ……」
ハチをじっくりと見つめながらせり寄って来るリンゴに、ハチが表情をしかめて後退する。
「どっかでっ……」
「えっ……?」
考え込むように呟くリンゴに、ハチが戸惑うように目を丸くする。
「何です?リンゴ。私のハチに下手なナンパしないで下さいよ?」
「そんなんじゃないわよっ。ってか、何っ?このイヌ、アンタの男?」
「そうです」
「サラっとウソ言うんじゃねぇっっ!!!」
リンゴの問いかけにあっさりと頷く輝矢に、ハチがまたしても大声で突っ込む。
「じゃ大丈夫よっ。私とアンタ、男の趣味、まるで違うし」
「それもそうですね」
「ってか、ナンパとかじゃなくってぇ、マジどっかで見たことあんのよねぇ〜このイヌ」
納得している輝矢の横で、まじまじとハチを見つめるリンゴ。
「桜時はどうなの?」
「いやっ、俺はよくっ……」
「まぁ見たことくらいはあるでしょうね」
『へっ?』
互いに首をかしげていたハチとリンゴが、横から口を挟んだ輝矢の言葉に眉をひそめる。
「それ、どういうことよっ?」
「ハチは雀国の朱実一族なんですよ」
「朱実のっ!?」
輝矢の言葉に、リンゴが驚いたように再びハチを見る。
「でも朱実ってスズメじゃっ……」
「うっ……」
スズメ一族であるのにイヌである自分に相変わらずの劣等感を感じ、ハチが少し俯く。
「イヌの……朱実っ……」
リンゴが深く考え込む。
「ああぁぁーっ!!思い出したっっ!!!」
『うおっ!』
いきなり大声を発するリンゴに、3匹が驚いて思わず1歩下がる。
「いたいたいたぁっ!スズメ一族なのになぁ〜んかイヌに生まれてきちゃった出来損ない王子の桜時っ!!」
「……どうせ俺なんかっ……」
「すっごく落ち込んじゃったけどぉ〜?」
「ハチを落ち込ませるようなこと言わないで下さいよ、リンゴ」
「あっ、ごめんごめんっ」
目に見えて落ち込むハチに、リンゴが少し苦笑いを見せる。
「ほらっ!覚えてないっ?アンタがウチ……ってか『青守』の屋敷に来た時にさぁ〜っ」
「青守?」
「龍国を治める龍人一族ですよ。リンゴは青守一族、というか今の国主・青守座黒の娘なんです」
「ええっ!?じゃああの人ってば龍国のお姫様ってことっ!?」
「ええ、ガラにもないですけどね」
「アンタに言われたくないわよっ」
驚くユキジに笑顔で答える輝矢。そんな輝矢にリンゴがしかめっ面で突っ込みを入れる。
「で、アンタが派手なオバサンとウチに来た時にさぁ〜遊んだじゃないっ?私や私の妹とっ!」
「んん〜〜〜っっ?」
リンゴの言葉に、さらに首を捻って考え込むハチ。
「うっ……!」
――――キィィィィィィィィィィーーーーーンッッッ!!!――――
「痛っ!」
「ハチっ」
走る痛みに、表情を歪めて思わず頭を押さえるハチ。そんなハチを輝矢が不安げに覗き込む。
「大丈夫ですか?」
「ダメだっ……やっぱ思い出せねぇーっ……」
「まぁ無理もないわねぇ〜“あんなこと”があったんじゃっ」
「へっ?」
リンゴの意味深な言葉に、ハチが顔を上げる。
「それってどうゆうっ……」
「まぁいっかぁっ」
「いやっ、よくねぇーよっ!!」
勝手に話を完結させてしまうリンゴに、ハチが止めるように手を上げる。
「それよりアンタたち、会議聞きに来たんでしょっ?まだ時間あるけど、会議室まで連れてってあげるわっ」
「って、俺のことは……?」
「リンゴは1度、切り替えしたらそれっきりなんで、またの機会にした方が良いかも知れませんね」
「ったく……」
輝矢の言葉に、ハチががっくりと肩を落とした。
「こっちよっ」
「すみませんね」
「まっ、私もどうせ会議出るからっ。ついでよ、ついでっ」
リンゴに連れられて、輝矢たちはオトポリの門をくぐった。
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