第1章 鳥の国の犬王子 ☆8
「はぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜っっ…行っちゃったなぁ〜桜ちゃ〜〜〜〜ん」
「桜時のヤツ……大丈夫かな……」
「どうだろうねぇ〜。外の世界は危険がいっぱいだからぁ〜」
輝矢とハチが去り、その姿が見えなくなった後もひたすら去っていった方角を見つめながら、別れの余韻に浸っている3兄弟。思い思いの不安を口にする。
『イヌも歩けば棒に当たるってゆ〜し〜♪』
「きゃああああっっ!!!桜時様が棒に当たって怪我しちゃったらどうしましょ〜っっ!?」
『過保護っ…』
旅立ちから5分。すでに気が気でない千鶴の様子に、呆れてハーモニーも忘れる3兄弟。
「まぁーー大丈夫だろっ!!」
『えっ?』
明るい声をあげたのは、銀ペーであった。
「何でだよぉ〜ペンギン〜」
「適当なこと言うなよぉ〜飛べない鳥〜」
「冗談はそのツルツルの頭だけにしとけよぉ〜」
「ううっ……!この仕事やめようかなっ……」
『アニキィィィィィィィーーーっっっ!!!!』
3兄弟たちのトゲある言葉に傷つき涙する銀ペーに、子分たちが駆け寄る。
「どうして、大丈夫だって言えるんですか?」
「んっ?」
千鶴の問いかけに、銀ペーが顔を上げて笑顔となる。
「あぁーの踏みつけ姉ちゃんが付いてんだっ!!ちょっとやそっとじゃ死ねねぇーってことよっ!!」
『へぇっ?』
その頃、雀国・東側出口。
「では私は旅の続きをしますので、これで」
「……。」
出口へと辿り着き、後ろを歩いているハチの方を振り返る輝矢。ハチはその小さな背に大きな刀をくくりつけ、どこか悩み込むような表情で俯いていた。
「ハチも色々と頑張って下さいねっ」
俯いたままのハチに、輝矢が笑顔を向ける。
「では私はこれでっ」
「待っ……!待ってくれっ!!」
「……?」
去ろうとした輝矢を、ハチが顔を上げて大声で引き止める。不思議そうに振り返る輝矢。
「何です?いってきますのチュ〜でもしましょうか?」
「していらんっっ!!!あのっ……!そのっ……!」
輝矢のチュ〜をはっきりと断った後、言葉を詰まらせるハチ。
「そのっ……俺っ!付いてっちゃダメかなっ!?」
「えっ……?」
ハチの思いがけない言葉に、目を丸くする輝矢。
「退治屋がイヌなんて連れてっても大して何の役にも立たねぇーかも知れないけどっ……でもっ!!」
ハチが突き上げるようにまっすぐに輝矢を見る。
「少しでも何かしたいんだっっ!!俺にもできることがあるならっっ!!」
「……っ」
真剣なハチの言葉に、目を細める輝矢。
「やっぱ……ダメ……かなっ……」
悲しげに俯いていくハチ。
「誰がダメだと言いました?」
「へっ?おわわわっっ!!」
急に浮くハチの体。輝矢が軽々とハチの小さな体を持ち上げる。
「だっからっ!俺の半径1m以内に近づかずに尚且つ、俺に触るんじゃないって何回もっ……!!」
「私は初めから、アナタを手放す気なんてサラサラありませんよっ」
「へっ?」
暴れるハチをしっかりと掴んで、輝矢が爽やかな笑みを浮かべる。
「私はもうとっくにアナタを私のモノにするって決めてたんですからっ」
「ええぇぇぇっっっ!!!!?うっそぉぉーーんっっ!!」
輝矢の笑顔に、衝撃を走らせるハチ。
「覚悟しておいて下さいねっ、ハチっ」
「かっ……!覚悟ってっ……!」
「ではまぁとりあえずっ……」
「……っっ!!」
―――― チュっ……――――
輝矢の唇が、ハチの鼻の頭に触れる。
「よろしくお願いしまぁ〜すのチュ〜ってことでっ」
「……。」
笑う輝矢と固まるハチ。
「まぁ朱実が後ろ盾になってくれたら、こちらも色々と仕事がしやすっ……って、あれっ?ハチ?」
「うっ……うううっ……」
「ハチぃぃ〜〜?」
「きゅううううぅぅ〜〜〜〜っっっ……」
鼻キッスは女恐怖症のハチにとっては、気絶するほどの衝撃だったようである。
“世界は僕に……光を落とした……”
とある国、とある少女とイヌの出会い。
こんなところから、この“おとぎ話”は始まるのである……。
やっと第1章終りです。
旅立っていった輝矢とハチを、今後待ち受けているものとは…?
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