第12章 眠りの森の罠 ★4
「“葉吹雪”っ!」
「“瞬花”っっ!!」
――――パァァァァァァァァーーーーンッッッ!!!!――――
クロトの放った無数の葉っぱを、一瞬にして桜の花びらと変えてしまう桜時。
「ん〜けっこう面倒だなぁ〜“花力”って」
その様子を見て、クロトが少し考えるように呟く。
「さらわれた人間っ?コイツらがっ?」
村雨丸を構えてクロトを警戒しながら、背中合わせに立ち、同じようにシロキを警戒しているゴンへと問いかける桜時。
「眠り姫ってヤツに洗脳されてるってのかっ?」
「ああっ。じゃなきゃっ、俺らと戦うのにいつまでも人間の姿でいるはずねぇーだろっ」
「たっ……確かにっ」
納得するように頷く桜時。確かに今までの鬼人たちは、正体がバレるとすぐに人間から鬼人の姿となって戦いを始めた。鬼人の姿の方が戦闘力も上がるし、2人が鬼人であれば、人間の姿のままいる理由はないだろう。
「じゃっ……じゃあどうすんだよっ?人間相手じゃむやみに攻撃することなんてっ……」
「まっ、適当に粘って、竹取が眠り姫倒すの待つしかねぇーだろっ」
「文句言ってるわりに輝矢任せだよなぁ〜」
「んだとぉっ!?」
「いつまでお話してるのかなぁ〜っ?」
『……っ!』
飛び込んでくるクロトに、2人が表情を鋭くして構える。
「あぁ〜〜〜んっ」
『何っ……!?』
2人へ向けて大きく口を開くクロトに、桜時とゴンが眉をひそめる。
「あれっ……!まさかっ……!」
「“鬼口”っ!」
『……っ!!!』
――――バァァァァァァァァァーーーンッッッ!!!!――――
クロトが口から放った高密度のエネルギー波が、2人の立っていた辺りの床を直撃し、大きな穴をあける。
『なっ……』
左右に避けた桜時とゴンが、それぞれ驚いた表情で穴を見つめる。
「今のはっ……間違いなく“鬼口”っ……」
「おっおいっ!ゴンっ!コイツらやっぱ鬼人じゃねぇーかっ!」
「……っ」
非難するように叫ぶ桜時に対し、何やら信じられないといった表情を見せているゴン。
「隙だらけ……」
「……っ!」
そんなゴンに、すかさず鋭く伸びた爪を振り下ろすシロキ。
「ううっ……!!」
「ゴンっ!!」
構えを取ろうとしたゴンであったが、シロキの方が動きが速く、右肩を爪で切り裂かれてしまう。ゴンが血を流して苦しげな顔を見せる。
「クソっ……!」
村雨丸を構えてシロキの方へと飛び込んでいく桜時。
「“鬼爪・天回”……」
「……っ!」
向かってくる桜時に、シロキが鋭く尖らせた爪を飛び道具のように放つ。
「クっ……!」
――――パァァンッ!パァァンッ!パァァンッ!パァァァンッ!――――
村雨丸を振るい、すべての鬼爪を叩き落す桜時。
「なかなかやるね……」
そう言ってシロキが再び鬼爪を生やす。
「今のも……鬼人の技っ……」
「ゴンっ!」
唖然として呟く、傷ついたゴンの元へ、桜時が慌てて駆け寄る。
「大丈っ……!」
「人間の姿に擬態したまま…鬼口や鬼爪を使える鬼人なんて、俺は聞いたことも見たこともねぇーっ……」
「えっ……?」
ゴンの言葉に、眉をひそめる桜時。
「お前らはっ……お前らは一体、何者だっ!!?」
『……っ』
ゴンの問いかけに、クロトとシロキはどこか怪しげに微笑んだ。
「どういうっ……どういう意味ですっ……?」
「あら……?わからない……?」
明らかに動揺を見せて聞き返す輝矢に対し、オーロラは笑みを浮かべて寝台から降りる。
「なら見せてあげる……」
「……っ?」
寝台から降りたオーロラが、寝台のさらに奥へと歩いて行く。オーロラの行動を、戸惑うように見つめる輝矢。
「その方が……早いでしょう……?」
「……っ!」
「ぐぅー……ぐぅー……」
寝台の奥で深く眠っている男へと手を伸ばすオーロラ。輝矢は嫌な予感がして、思わず身を乗り出す。
「待っ……!やめっ……!!」
「“帰化鬼化”……」
――――パァァァァァァァァァァーーーッッッ!!!!――――
輝矢が必死に手を伸ばす中、オーロラが両手から放った白い光が、眠っている男の体を包んでいく。
「ぐっ……ううぅぅぅっ……」
眠っていた男が、光に包まれた途端、急に苦しげな声をあげて頭を抱える。
「ううううっ……!グアアアアッッッ!!!」
――――バァァァァァァァァァァァンッッッ!!!!――――
「……っっ!!!」
激しい叫び声をあげて、人間の皮を破るように禍々しい緑鬼へと姿を変える男。輝矢が大きく目を見開く。
「そっ……そんなっ……」
「グアァァァァァァァァァァァァーーーーッッ……」
生まれたばかりの鬼を見上げながら、茫然と呟く輝矢。
「これが私の力……そして彼が……私の“作品”よ……退治屋さんっ……」
「グガアアアアアアッッ!!!」
「……っ」
オーロラの言葉に、輝矢は力なく三日月を持つ手を下ろした。
一方、桜時・ゴンvsクロト・シロキ。
「俺たちの正体ぃ〜?」
人間の姿を保ちながらも鬼人の技を使うクロトとシロキに、戸惑いながらも真剣な表情で問いかけたゴン。そのゴンの問いかけに、クロトがどこか楽しげに微笑む。
「君たちのお察しの通りさぁ〜っ」
「何だとっ?」
「ボクらは森の中で眠り姫サマの呪いにかかり、この城へと導かれた人間……」
「人間っ?」
シロキの言葉に眉をひそめる桜時とゴン。
「じゃあなんで鬼口や鬼爪をっ……」
「たっだぁ〜眠り姫サマのお力でぇ“人間から鬼人に生まれ変わらせてもらった”んだけどねぇ〜っ」
『なっ……!?』
思いがけないその言葉に、桜時とゴンが大きく目を見開く。
「人間から……鬼人にだとっ……?」
「グガアアアアアアアッッ!!」
「……。」
激しい咆哮をあげる鬼人の前に、茫然と立ち尽くしている輝矢。人が鬼へと変わるその信じがたい光景を目にした輝矢は、その場から1歩も動けずにいた。
「ガアアアアアッッッ!!!!」
「……っ!クっ……!」
そんな輝矢へと勢いよく爪を振り下ろす鬼人。輝矢が慌ててそれを避ける。
「ダメね……戦闘中にボーっとするなんて……」
「……っ」
笑顔で言葉を投げかけるオーロラを強く睨みつける輝矢。
「グガアアッッッ!!!!」
「……っ!」
オーロラの方を向いていた輝矢に、鬼人がまたもや爪を振り下ろす。
「三日づっ……!うっ……!」
鬼人に三日月を振り上げようとした輝矢が、思わず三日月を止める。
「ガアアアアアッッッ!!!!」
「あああっっっ!!」
三日月を止めてしまった輝矢に、容赦なく鬼人の爪が振りかかり、輝矢が勢いよく吹き飛ばされる。
「ううっ……」
壁に背中を打ちつけた輝矢が、苦しげな表情を見せる。
「どうしたの……?退治屋さん……目の前に鬼がいるのよ……?早く、退治しっ……」
「元にっ……」
「……っ?」
オーロラの言葉を遮り、立ち上がりながら声を発する輝矢。
「元に戻す方法はっ……!?」
「……。」
真剣な眼差しを向ける輝矢を見て、オーロラが一瞬、笑みを消す。
「そんなもの……」
再び冷たい笑みを浮かべるオーロラ。
「あるはずがないでしょう……?」
「……っ!」
オーロラの言葉に衝撃の走った様子で目を見開く輝矢。
「……。」
立ち上がった輝矢が、力なく俯く。
「グガアアアアアッッッ!!!!」
俯いた輝矢に飛び込んでいき、鋭く爪を振り下ろす鬼人。
「……っ」
――――・・・・・・・・・・っっっ!!!!!――――
「ギャアアアアアアアッッ!!」
俯いたままの輝矢が素早く三日月を振り切り、向かってきていた鬼人の胴体を切り裂いた。鬼人は激しい叫び声をあげ、紫色の血を大量に流しながら、後方へと倒れていく。
「うっ……!ううっ……!……っ」
倒れた鬼人は一瞬、元の人間の姿へと戻り、すぐに砂となって崩れ落ちた。
「……。」
俯いたまま三日月を振り払い、鬼人の血を落とす輝矢。
「へぇ……わりと大人ね……。元には戻せないとわかったら、すぐさま殺すなんて……」
「……“水月”」
「……っ!クっ……!」
――――バァァァァァァァァーーーンッッッ!!!!――――
感心したように笑っていたオーロラに、輝矢が無数の水の刃を放つ。不意をつかれたオーロラが慌てて横へと飛び、水月をかわす。水月はオーロラの寝台を破壊し、壁を砕いて外へと飛んでいった。
「……そうでもないみたいねっ……」
壁にあいた穴を見て、苦笑いを見せるオーロラ。
「アナタだけは……」
輝矢が三日月を握る力を強め、ゆっくりと顔を上げる。
「アナタだけは……許さないっ……」
「……っ」
強く睨みつける輝矢を見て、オーロラがどこか楽しげに微笑む。
「さぁ……できるかしら……?」
右手を挙げ、輝矢に問いかけるオーロラ。
「私は……“造り物”とは違うのよ……?……っ」
――――パァァァァァァァァァーーーンッッッ!!!!――――
「……っ」
そう言ってオーロラは白き鬼へと姿を変えた。
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