第11章 怪盗“長靴キャット”参上! ☆4
「ひいっっ!!」
破壊された扉のすぐ近くにいた大和へと、勢いよく爪を振り上げる鬼人。
「しまったっ……!!」
――――ボォォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!!――――
ハチが慌てて人化し、村雨丸を抜く。
「クっ……!“水げっ……!」
「大和っっっ……!!!!」
「えっ……?」
大和の名を叫んで飛び出していく長靴キャットに、輝矢が思わず構えていた手を止める。
「うっ……うわあああああああっっ!!」
――――バァァァァァァァァァァーーーンッッッ!!!!――――
鬼人の爪が振り下ろされ、床を砕く。
「……あれっ?」
痛みが走らないことを不自然に思い、固く閉じていた瞳をゆっくりと開く大和。
「あっ……」
目の前には鬼人の砕いた床が広がっており、大和の体を支えるようにして長靴キャットが膝をついていた。どうやら長靴キャットが、爪が振り下ろされる瞬間に、大和を連れ出してくれたようである。
「あっ……ありがとうございますっ……」
目の前にいる憧れの長靴キャットに、かしこまって礼を言う大和。
「グアアアアアアァァァーーーッッッ……」
『……っ』
唸り声をあげる紫鬼に、輝矢や長靴キャットが眉をひそめる。
「“鬼風”っっっ!!!!」
鬼人が座り込んでいる大和と長靴キャットに向け両翼を開き、風の塊を放った。
「どわあああああああああっっっ!!!!!」
「“月器・十六夜”っ!」
――――バァァァァァァァァーーーンッッッ!!!!――――
「グガガガッッ……!!」
輝矢が大和と長靴キャットの前に立ち、三日月を十六夜へと変形させて、鬼人の放った鬼風を弾き返す。返って来た鬼風を鬼人が避けると、鬼風は屋敷の壁を突き抜いて外へと飛び出していった。
「かぁぁぁぁ〜っっ!!!すっげぇぇぇぇぇっっ!!!!」
「だっからお前、家、破壊されてんぞ……?」
感動している大和に、冷静に一言呟く桜時。
「大和、この前、アナタを襲った鬼はアレですか?」
「へっ……?あっ……ああっ!この前のと同じ鬼だっ……!」
「レベル4・紫鬼っ……飛行型の鬼ですねっ……」
しっかりと大和が頷くと、輝矢は少し眉をひそめた。
「やはりアナタは鬼ではなかったようですね、長靴キャット」
「ウフっ……そういうセリフは、まったく疑ってなかった人が言うものよっ」
振り向いて笑う輝矢に、長靴キャットも笑みを見せる。
「おおぉぉぉぉーーいっ!!竹取ぃぃぃぃっっ!!!」
「輝矢ぁぁぁぁぁーーんっっっ!!!!」
『……っ』
近づいてくる聞き覚えのある声に、輝矢やハチたちが振り返る。
「グっ……!グガガガっ……!!」
「あっ……!!」
――――バァァァァァァァァァーーンッッッ!!!!――――
その隙をついて空へと飛び上がり、天井を突き破って外へと逃げ去っていく鬼人。
「逃げられましたかっ……」
少し不満げに呟く輝矢。
「竹取っっっ!!!!」
そこへ、屋敷の外からゴン、モンキ、ユキジが駆けつける。
「アイツらが来てんの見えて、勝てないって踏んだのかな」
――――ボォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!!――――
桜時がハチの姿へ戻りながら言う。
「……。」
ハチの言葉に答えることなく、輝矢は天井にあいた穴を見て少し表情を曇らせた。
「鬼人かっ!?鬼人が出たんだなっ!?」
「ええっ、逃げられてしまいましたが……」
「よしっ!周囲の捜索に当たろうっ!おいっ!サルとキジっ!手を貸せっ!」
「ええ〜っ?」
そう言うゴンに、不満げな顔を見せるユキジ。
『こっちだぁぁぁぁぁぁっっ!!!』
『……っ?』
聞こえてくる大勢の声と足音に、輝矢たちが一斉に振り向く。
『ここだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!』
外から玄関ホールへとやって来たのは、武装した多くの兵士たちであった。
「ウチの警備隊だっ」
「今更な感じですね」
大和の説明に、輝矢が少し肩を落とす。
「おいっ!鬼人ならもう逃げちっ……!」
「鬼人発見っっっ!!!!全員構えぇぇぇぇぇぇっっ!!!」
「何っ……!?」
『……っ』
「えっ……?」
ゴンの言葉を無視して、兵士たちが一斉に武器を向けたのその先にいるのは、長靴キャットであった。その兵士たちの行動に、輝矢や大和、そして長靴キャット自身も驚きの表情を見せる。
「何をっ……!」
「かかれぇぇぇっっ!!鬼人・長靴キャットを捕まえろぉぉっっ!!!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!』
思わず立ち上がる大和であったが、兵士たちは一斉に長靴キャットへ向かって駆け出す。
「クっ……」
「うえええぇっ!?」
顔を歪めて、大和を輝矢の方へと押し出す長靴キャット。
「長靴キャットっっ……!!」
「……っ“手招き”っ!」
『何っ……!!?うおおおおおっっっ!!!』
大和が不安げに身を乗り出す中、長靴キャットが左手で手招きをすると、兵士たちの持っていた武器が全て長靴キャットの方へと引き寄せられていく。
「“手離し”っ」
――――ビュウウウウウゥゥゥゥーーーーンッッッ!!!――――
『どわあああああああああああああっっっ!!!!!』
長靴キャットの元へと引き寄せられた武器が、くるりと向きを変え、一斉に兵士たちの方へと飛び出していく。飛んでくる武器をしゃがみ込んで避ける兵士たち。
「……っ」
兵士たちが避けている間に、長靴キャットは軽々と天井の穴へと飛び上がる。
「矢を放てぇぇぇぇっっっ!!!!」
屋根の上に立った長靴キャットへ向け、兵士たちが弓を構え、矢を向ける。
「待っ……!!」
「……っ」
――――ヒュゥゥゥゥゥゥゥーーーーーンッッッ!!!――――
大和が身を乗り出し、長靴キャットが焦りの表情を見せる中、矢が放たれる。
「クっ……!」
「……っ」
長靴キャットの方へと飛び出して行こうとする輝矢を見て、ハチが目を見開く。
「……っ!!」
「なっ……!!」
飛び出して行こうとした輝矢の肩を踏み台にし、矢の向けられた長靴キャットの前へと飛び出すハチ。
――――・・・・・・・・・・・っっっ!!!!――――
『……っ!!』
矢がハチの前足に突き刺さる。
「ううっっ……!!」
「……っ!ハチっっっ!!!!」
射抜かれたハチの名を、輝矢が必死に呼ぶ。
「クっ……!」
傷ついたハチを空中でしっかりと抱きとめる長靴キャット。長靴キャットが懐から小さな玉を出す。
「……っ!」
――――ボォォォォォォォ〜〜ンッッッ!!!!――――
『ううっ……!!』
長靴キャットがその玉を投げると、玉が大量の煙を放ち、辺り一帯を包み込んだ。その場にいた皆が、その煙に思わず口や目を塞ぐ。
『……っ』
煙が収まり、皆が目を開いた時にはもう、長靴キャットとハチの姿は見当たらなかった。
「逃したか……探せっ!全兵、街へ出てヤツを探すのだぁぁぁぁっっ!!!」
『おおおおおおおおおおっっっ!!!!!』
兵士長の命令に、玄関ホールを駆け出て行く兵士たち。
「……ハチっ……」
輝矢は天井を見上げながら、どこか不安げに呟いた。
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