鬼斬り かぐや (60/192)PDFで表示縦書き表示RDF


鬼斬り かぐや 
作:千風



第9章 猿蟹合戦 ☆5



「仕向けられてる……か……」
 輝矢の意味深な言葉を聞き、初めは驚いた二花であったが、何か思い当たる節でもあるように呟いた。
「確かに……その線はあんねんっ……」
「えっ?」
 二花の言葉に、ハチが目を丸くする。
「猿の村に粒栗とかゆー怪しいオッサンが入り込んでから、移貴の様子は明らかに変わった」
「粒栗……?」
「この合戦の始まるちょい前に現れた男やっ。祈祷師とか何とかゆーてたけど、どうなんやかっ……」
「……。」
 二花の言葉を聞き、輝矢が少し考え込むように俯く。
「さっきの合戦時、門貴に止められとった目つき悪い男おったやろぉ?あの男も粒栗と一緒に来たんやっ」
「確かにあからさまに怪しいなっ」
 ハチが険しい表情で頷く。
「おいっ輝矢っ、一回、そのクリつぶとかゆーヤツを調べっ……」
「あんのクソメガネがぁぁぁぁっ!!」

――――バギコォォォォォォォォォォンッッッ!!!――――

「だああああああああああっっっ!!!!」
 またしても急に壁を破壊し始める二花に、ハチが叫び声をあげる。
「こっ……今度は何だぁっ!?」
「いっくら粒栗に利用されとういうたかて、ウチらに言うてくれればいいだけの話やろぉぉっっ!!?」
「ひいっ!」
 問いかけたハチに、強く怒鳴りあげる二花。
「それやのに何も言わんと、利用されるがままにウチら攻撃するなんてどういうこっちゃああっっ!!?」
「いっいやっ……俺に言われてもよっ……」
「そうせざるを得ない事情があるのかも知れませんね……」
「……っ」
 真面目な表情で呟いた輝矢に、二花が怒鳴ることをやめて目を見開く。
「事情て……」
「脅迫かぁ人質かぁ爆破予告かぁ核弾頭かぁ」
「どんどん有り得ない方向にいってっぞ……?」
 あらゆる可能性を挙げる輝矢に、呆れた表情を向けるハチ。
「門貴やったらこんなことにはっ……」
『……っ』
「あっ……」
 思わず呟いた二花が、同時に振り返る輝矢とハチに、素早く口を押さえた。
「悪いっ……今のはっ……」
「サルが移貴の前の猿長だったのですね」
「……っ」
 輝矢の言葉に表情を歪める二花。そんな二花を、輝矢はまっすぐに見つめた。
「門貴は村を捨てた……そう言われていましたね。猿長をやめて村を出るほどの何かが門貴の身に起こった……」
「……それはっ……」
 拳を握り締め、辛い表情を見せる二花。
「それは……」
「……。」
 どんどんと俯いていく二花を見て、輝矢が少し目を細める。
「まっ!まぁいいじゃねぇーかっ!それより今クリつぶってヤツのことを調べようぜっ!」
 あまりに辛そうな二花を見ていられなくなったのか、ハチが不自然に声を出す。
「そうですね。サルのことになど興味ありませんし」
「いやっ……」
『……?』
 輝矢とハチが立ち上がろうとした時、二花が小さく声を漏らした。
「お前たちには……知っといてもらった方がええんかも知れん……」
『……。』
 二花の言葉に、輝矢とハチは真剣な表情を見せた。




「へぇ〜門貴がおサルの大将さんだったとはねぇ〜」
「歴代猿長ん中でも5本の指には入るってくらい強かったんですよぉ〜?」
 意外そうに呟く由雉に、チョキ三郎が笑顔で答える。由雉は兵舎でカニたちの傷の手当てを終え、チョキ三郎から輝矢たちと同じように猿蟹合戦のことを聞いていた。
「でもあの頃、門貴さん荒れとって、サル側も手ぇ焼いとったみたいですけどねっ」
「荒れて?あの陽気サルがぁ?」
 荒れていた門貴など想像もできず、由雉が不思議そうに首をかしげる。
「なんで荒れてっ……」
「あっ!そうやっ!由雉さんっ、みんなの手当てしてくれたお礼ですぅ〜」
「えっ?何々っ?ササミチーズ?」
 チョキ三郎の言葉に、目を輝かせる由雉。
「じゃ〜〜〜んっっ!!柿のタネっ!!」
「……。」
 笑顔のチョキ三郎が由雉の前へと差し出したのは、大きな袋いっぱいに詰まった小さなオカキ・柿のタネであった。あまりにも期待はずれなお礼の品に、由雉があからさまに嫌な顔をする。
「あれっ?ピーナッツも一緒に入っとう方が好きでしたぁ?」
「どうせならカニみそ食べたいなぁ〜」
「ええっ!!?それって俺に死ねいうことですかっっ!!?」
「そっ」
「きゃあああああああっっっ!!!!」
 笑顔で答える由雉に、悲鳴をあげるチョキ三郎。
「あっ」
 悲鳴をあげているチョキ三郎の横で、由雉が何か思い出したように声を出す。
「そういえばあれっ、柿の種だったんじゃ……」
「へっ?」
「いやぁ〜今朝、門貴が種っぽいもの落とすトコ見てさぁ〜」

――――まっ……まぁなっ……――――

 あの種を落としてから、何やら考え込むように明るさを消した門貴。
「あれぇ、柿の種だったんじゃないかなぁ〜と思って」
「……っ」
 由雉の言葉に、チョキ三郎が表情を曇らせる。
「でもボクってカワイイわりに花とか興味ないからなぁ〜柿だか何だかなんてわかっ……」
「いえ、柿です」
「へぇ?」
 即答するチョキ三郎に、由雉が目を丸くする。
「まだ持ってたんですね……門貴さん……」





 “蟹の村”・西はずれ。海の見える小高い丘の上に、門貴は1人、立ち尽くしていた。
「ただいま……」
 丘に佇む1つの墓石を見て、門貴が悲しげに微笑む。
一花いちかっ……」




「あの丘に眠っている者の名は蟹江一花……」
 部屋の窓から見える小高い丘を見つめ、悲しげな表情で話し始める二花。
「蟹江……?」
「ウチの姉っ……」
 首をかしげたハチに、二花が答える。
「そして……門貴の運命を変えた人やった……」
 二花は遠い目で呟いた。




次話、ついに門貴の過去が明らかに…。
ぜひご覧ください。






千風のブログ「千風の押入れ」へっ!←裏話満載っ!の予定です。


ネット小説ランキング>異世界FTコミカル部門>「鬼斬り かぐや」に投票





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう