第8章 かぐや姫vs白雪姫 ★8
「だいったいお前ら何者なんだよっっ!!氷付けになってる街人と鉄汰をとっとと解放しろっっ!!」
「ああ、せやったぁ〜街に降っとう雪も止ましてもらわなぁ〜」
「心配しなくても街人も解放するし、雪も止ますわよっ」
『へっ?』
あっさりと答える白雪に、桜時と門貴が目を丸くする。
「ヤケにあっさりですね」
「元々、街やフラミンゴたちをどうにかしようって気はないものっ」
「えっ?では何故っ……」
「アンタたちをおびき寄せるためよっ」
「私たちを?」
白雪の思いがけない言葉に、輝矢も目を丸くする。
「そっ!アンタと戦ってどっちが強いかハッキリさせたかったのっ」
「何で輝矢と?」
「白雪様は御伽界でも指折りの退治屋とされている方なんですよ」
『退治屋っ!?』
白雪の代わりに答える鈴白に、桜時と門貴が驚きの声をあげる。
「西の方ではけっこう有名なんだよぉ〜」
「全国で有名よっ!私はっ!」
芹の説明に、白雪が少し不満げな表情を見せた。
「だっけど何で同業者が輝矢、狙うのさぁ〜?」
「それはねっ……あのフザけた看板よっ!!」
『看板っ?』
どこか腹立たしそうに言い放つ白雪に、一斉に目を丸くする輝矢たち。
「なぁにが御伽界のニューヒーローっ!?鬼人が出たら輝矢を呼ぶべしですってぇっ!!?」
『あっ……』
そのフレーズに思い出されるのは、羊スケの立てたあの看板。
「あっの看板のせいでねぇっ!こっちはめっきり仕事が減って、商売あがったりだったのよっっ!!!」
「それで輝矢さんより強いことを証明できれば、また仕事も来るだろうと思い、この作戦に至ったわけです」
「まぁ要は僻みだよね」
「芹っっ!!」
「ごめんなさいっ……」
白雪に睨みつけられ、芹がすぐさま頭を下げる。
「何だっ……んなことかよぉ〜」
桜時がどこか気の抜けた様子で肩を落とす。
「結局、あの看板に振り回されただけだったんだねぇ〜」
「ホント、迷惑なヒツジですね」
「へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜っくしょんっっっ!!!!」
豪快なくしゃみをかます羊スケ。
「ズズズっ……風邪っスかねぇ〜?」
「おいっ!!とっとと行くぞぉっ!!羊スケっ!!」
「うぃぃぃ〜〜〜っスっ!」
鼻水をすすりながら、羊スケはゴンの元へと駆けていった。
白雪との戦いを終え、白雪が何者であるかもわかった輝矢たちは、崩れ去った雪鏡の城跡地から、トロピカーナの街へと戻った。街に降る雪を白雪が止ませ、街には雪こそ積もっていたが、眩しいばかりの太陽が照り付けていた。
「……っああっ!!輝矢さんっ!!皆さんっっ!!」
『……?』
街へと戻ってきた輝矢たちを、ゴラミがいち早く見つける。街は雪が止み、久々に外へと出てきた街人たちで溢れかえっていた。
「ああっ!!ゴラミちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜んっっっ!!!!」
モンキが満面の笑顔でゴラミへと手を振る。
「ご無事だったんですねっ!!ハチさんもっ……!」
無事な姿で街へと戻ってくる輝矢たちを見て、安心した笑顔を見せるゴラミ。
「ゴラミちゃぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜んっっっ!!!街の平和を守った俺に愛のご褒美をぉぉぉっ……!!」
「ゴラミっっ……!!」
「へっ?」
ゴラミに飛び込んでいこうとしたモンキであったが、モンキの横からモンキよりも早くゴラミの方へと駆け込んでいく桃色頭の1人の青年。
「フラッゴさんっっ!!!」
「へっ?」
目を輝かせるゴラミに、モンキがさらに首をかしげる。
「フラッゴさんっ……!!無事だったのねっ……!!会いたかったっ……!!」
「俺もだよ、ゴラミっ……」
「フラッゴさんっっ……!!」
「ゴラミっっ!!」
駆け込んできた青年・フラッゴの姿を見て涙を流すゴラミ。そしてゴラミとフラッゴが強く抱きしめあう。
「ぎゃいいんっっっ!!!!!」
「あぁ〜あっ、残念賞っ」
恋人たちの再会を目の前にし、失恋ショックを受けるモンキにユキジが冷たく呟いた。
「父さんっ!!母さんっ!!」
「フラクローっっ!!!」
「ミンゴっっ!!!」
白雪にさらわれていた街の青年たちが、次々と家族や恋人たちの元へと帰っていく。
「さっ!街人も返したし、雪も止ましたから、もういいでしょ?私たちは行くわよっ」
「はぁっ!?お前らなぁっ!こんだけ事件巻き起こしたんだから、街の人たちに詫びの1つでもっ……!」
「じゃあねっ、桜時様っ!」
―――― チュっ ――――
「んなっ……!」
「うひいいいいっっっ!!!!!」
文句を言い放っていたハチの額に、白雪の唇が触れる。表情を引きつる輝矢と、表情を凍りつかせるハチ。
「また会いましょっ♪」
「がっ……がはっ……」
ショックで固まっているハチに、笑顔を向ける白雪。
「次は負けないわよっ!竹取輝矢っ!!退治屋No.1の座はこの白雪がいただくわっ!!」
「ああっ!待って下さいよぉ〜っ!!虎昌さまぁぁ〜〜っっ!!」
「置いてかないでよぉ〜っ!虎昌さまぁぁ〜〜〜っっ!!!」
「下の名前で呼ぶんじゃないわよっっ!!!!」
何やかんやと騒ぎながら、白雪とそれに続くようにして鈴白、芹が、トロピカーナの街を去っていった。
「あの女っ……次に会った時は息の根を止めます……」
「痛てててっ……!毛を抜くなっ!毛をっ!!」
白雪の唇が触れた辺りのハチの毛を毟り取ろうとする輝矢に、ハチが必死に訴える。
「ふわぁぁぁーーはっはっはっはっ!!!退治屋の諸君っ!!」
『……?』
聞こえてくる高々とした笑い声に、輝矢たちが振り返る。そこにいたのは、これまた白雪の氷から解放された鉄汰であった。
『あれっ?まだいたのっ?』
「いたよっっ!!何だいっ!!揃いも揃ってその言いっぷりはっ!!」
声を揃えるハチたちに、鉄汰が強く怒鳴り返す。白雪たちとの戦いが白熱したため、鉄汰の存在をすっかり忘れてしまっていたのだ。
「まぁ今回は鬼人の仕業ではなかったようだからねぇっ!引き分けということにしておいてあげるよっ!」
「氷付けにされて捕まってただけのクセにっ……」
「次こそは圧倒的な力を見せつけ、君達のような素人は必要ないということを証明してあげるよっ!!」
ユキジの呟きも聞こえていないのか、輝矢に高々と言い放つ鉄汰。
「楽しみにしていたまえっ!!ふわぁぁぁーーーはっはっはっはっっ!!!」
『……。』
一方的に話し終えると、鉄汰もあっさりと街を後にした。去っていく鉄汰を見ながら、呆然とする輝矢たち。
「同じようなこと言って去ってったねぇ〜あの2人っ」
「ロクなヤツと知り合わねぇーなっ…」
呆れた表情で呟くユキジとハチ。
「輝矢さんっっ!!ハチさんっっ!!門貴さんっっ!!由雉さんっっ!!」
『……っ?』
ゴラミの声に、4人が振り向く。
「街を救って下さったお礼にっ……!」
「おやっ、大金ですか?」
「街のみんなでフラダンスを踊りたいと思いますっっ!!!」
『はぁっ?』
“お礼”という言葉に目を輝かせた輝矢であったが、ゴラミの言葉にあからさまに顔をしかめる。
「みんな行くよぉっ!!」
『おおおおおおおおおおおおおうっっっ!!!!』
――――ボォォォォォォォォォ〜〜〜〜〜ンッッッ!!!!!――――
ゴラミの掛け声に街人が皆手を突き上げ、一斉にフラミンゴ化する。
『チャラチャチャチャチャ〜〜〜〜〜〜ンっ♪』
『……。』
きれいに列を組んで、1本足で立ちながら腰を器用に振りフラダンスを踊るフラミンゴの集団に、言葉を失う輝矢たち。
「フラミンゴのフラダンス……ねぇ〜……」
「もっと腹の足しになるもの、ないのですかねぇ」
「みんな、好意で踊ってくれてんだから有難く受け取ってやろうぜっっ!!なっ!?」
そのお礼に不満げな顔を見せる輝矢とユキジを、ハチが必死に説得する。
「ゴラミちゅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜んっ…」
「お前はいつまで落ち込んでんだよっっ!!」
まだ失恋の痛手が癒えないモンキに、冷たく怒鳴るハチ。
「んっ……?」
落ち込んで俯いていたモンキが、何かに気づいた様子で目を見開く。
「雪がっ……」
モンキの目に入ってきたのは、街に積もった雪が空から照らす太陽の光により溶けて消えていく光景であった。フラダンスのリズムに乗るように緩やかに、雪はどんどんと溶けて、やがて街に雪はなくなる。
「“南国の街”かっ……」
『チャラチャチャチャチャ〜〜〜〜〜〜ンっ♪』
照りつける熱い太陽。踊るフラミンゴ。流れるフラダンスのリズム。
『……っ』
“南国の街・トロピカーナ”の復活に、輝矢たちは皆、穏やかな笑みをこぼした。
「そういえばさっ」
「……っ?何です?」
フラミンゴたちのフラダンスを見ていたハチが、思い出したように輝矢に声をかける。
「何で……白雪との戦いが負けられない戦いだったんだ?」
「……っ」
ハチの問いかけに、少し目を細める輝矢。
「それは……」
輝矢が少し俯く。
――――貴方が死んだ後は、私があのワンちゃんを可愛がってあげるわぁっ!――――
「それは……私の“1番大事なもの”が懸かっていたからですよ……」
「1番大事なもの……?」
ハチに笑顔を向けて答える輝矢。その輝矢の言葉に、ハチが少し首をかしげる。
「あっ!わかったっ!“退治屋としての誇り”だろっ!?お前って意外と意地っ張りだからなぁ〜」
ハチが思いついたように笑顔を見せる。
「プライド高いのもいいけど、あんま高くしすぎんなよ?そんなのっ、命賭けて守るほどじゃねーんだからっ」
「……っええ」
ハチの言葉に、輝矢が笑顔で頷く。
「肝に銘じておきますっ……」
こうして色々なことのあった、白雪との戦いも何とか終わりを告げた……。
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