第8章 かぐや姫vs白雪姫 ★7
――――ビュウウウウウウウウウウウ〜〜〜〜ッッッ!!!――――
白雪が水月に向けて、吹雪を放つ。
「これでっ……!何っ……!?」
しかし水の刃は、白雪の吹雪に凍ることなく、白雪に向かい続けてくる。
「どうしてっ……!どうして凍らないのっ……!?」
戸惑う白雪に、迫る水月。
「クっ……!きゃあああああっっっ!!!!」
『虎昌さまっっ!!!』
水月を直撃し、吹き飛ばされていく白雪。鈴白と芹が身を乗り出して、白雪の下の名を呼ぶ。
「うっ……!ううっ……」
全身に傷を負って倒れ込んだ白雪が、戸惑いの顔を上げる。
「何故っ……!」
「本来水は、その水中に含まれる不純物を凝結核として凝固するものっ……」
「……っ?」
輝矢の言葉に、白雪が眉をひそめる。
「よって不純物をまったく含まない超純水であればっ……水は極めて凍りにくくなるっ……」
「まさかっ……水の成分までも変化させられるというのっ……?」
白雪が驚きの表情を見せながら呟く。
「でもいいわっ!氷力が使えないというのなら、また虎化してっ……!」
「いえ、もう終わりです」
「えっ?」
起き上がろうとした白雪に、輝矢がハッキリと言い放つ。
「“月器っ……」
輝矢が右手を振り上げる。
「上弦”っ」
「……っ!まさかっ……!」
白雪が目を見開きながら、輝矢が先ほど三日月を蹴り上げたことを思い出し、上を見上げる。
「ううっ……!!」
白雪の真上には、三日月から上弦へと満ち、勢いよく降下してくる月器の姿。
「うっ……!ああああああっっ!!」
――――バァァァァァァァァァァーーーーーンッッッ!!!――――
落下した上弦に、白雪が押し潰される。
「うっ……ううっ……私がっ……負けるなんてっ……」
上弦の下敷きとなった白雪が、力なく呟いた。
「……。うっ……」
立ち尽くしていた輝矢も、力尽きたようにその場にしゃがみ込む。
『虎昌さまっっ!!!!』
上弦の下敷きとなっている白雪の元へと、不安げな表情で駆け込んでいく鈴白と芹。
「大丈夫ですかっ!?」
「下の名前で呼ぶなっつってんでしょーがぁぁぁっっ!!!」
『うわっ!』
弱々しく押し潰されているわりに勢いよく返って来る怒声に、鈴白と芹が思わず足を止めて震え上がる。
「だっ……大丈夫そうですねっ……」
「私を助けにくる暇があるくらいなら、さっさとあの女を攻撃しなさいっ!」
「えっ……?」
白雪の言葉に、芹が戸惑うように眉をひそめる。
「今ならあの女はボロボロよっ!貴方たちでも楽勝で倒せるわっ!」
「……っ」
――――助太刀されて勝つような勝負に何の意味があるんや?――――
――――ボクたちに助けられるくらいなら戦って死ぬよ……ボクらの飼い主さんは……――――
「……。」
思い出される門貴と由雉の言葉に、芹が強く拳を握り締める。
「芹っ!アンタの雹でっ……!」
「できないっ!」
「……っ?」
すぐさま否定する芹に、白雪が思わず目を丸くする。
「できないっ……」
「なっ……!何を言うのっ!?芹っ!この私の言うことが聞けないって言うんじゃっ……!!」
「あのお姉ちゃんたちは、助けてもいいのに、それをしないで誇りを持ってこの勝負に臨んでくれたっ!!」
「芹っ……」
怒りに顔を歪めた白雪に、芹は恐れることなく必死に言い返す。そんな弟の姿を、目を細めて見つめる鈴白。
「虎昌さまはボクが今、攻撃に入ってあのお姉ちゃんに勝って嬉しいのっ!?誇りとかないのっ!?」
「何をっ……芹っ!アンタねぇっ……!!」
「虎昌さま……」
「……っ」
芹に怒鳴りあげようとした白雪を、鈴白が宥めるように名を呼んで止める。白雪が鈴白の方を見ると、鈴白は穏やかな笑顔を白雪に向けていた。
「我々は皆、1対1の勝負に敗れました……この戦い、我らの負けです……」
「……っ」
鈴白の言葉を聞くと、白雪の表情から怒りが消え、白雪がそっと俯く。
「わかったわよっ……」
「虎昌さまっ」
渋々と敗北を認めた白雪に、芹が少し笑みをこぼす。
「ああっ!もうっ!!」
――――バァァァァァァァァァァーーーーンッッッ!!!――――
『へっ?』
上に覆いかぶさっていた上弦をあっさりと弾き飛ばし、勢いよく立ち上がる白雪に、2人が目を丸くする。
「だいたいねぇっ!アンタたちが勝ってたら2対1でコッチの勝ちだったのよっ!?何、負けてんのよっ!」
『うわっ!』
白雪の怒声に、またしても震え上がる鈴白と芹。
「元気だね……」
「戦い続ければ勝てたのではないでしょうかねぇ……」
傷のわりにピンピンしている白雪に、鈴白と芹は呆れるように肩を落とす。
「こんなのだから菜砂も箱ベラもみんな、部下やめちゃったんだろうねっ……」
「僕らもやめましょうかねぇ」
「何か言ったっっ!!?」
『いえっ……』
白雪に睨みつけられ、鈴白と芹がすぐさま下を向いた。
「……っ」
「……っ!」
白雪たちが騒ぐ中、力なく倒れ込んでいく輝矢に桜時が気づく。
「輝っ……!」
「輝矢ぁぁぁぁぁ〜〜〜んっっっ!!!」
「だああああっっっ!!!」
倒れていく輝矢に駆け寄ろうとした桜時であるが、横から駆け込んでいく門貴にあっさりと押し飛ばされる。
「俺の胸に飛び込んでおいでぇぇぇぇ〜〜〜っっっ!!!」
「ああ、けっこう平気でした」
「ぎゃんっ!」
倒れようとしていた輝矢が急に起き上がり、駆け込んでいった門貴が空ぶって床に滑り込む。
「平気なわけないでしょっ?ほらっ、傷見せるっ」
「はいはい」
由雉が輝矢の横にしゃがみ込み、輝矢の傷の治療に当たる。
――――ミシっ……ミシミシミシっ……――――
『んっ……?』
天井や柱、壁から聞こえてくる、何やら徐々に崩れていくような不吉な音に、輝矢や白雪たちが顔を上げる。
「白雪様っ……これってっ……」
「力を使い過ぎたようね。もうすぐ城が崩れるわ」
『えええええええっっっ!!!!?』
あっさりと答える白雪に、皆が一斉に驚きの声をあげる。
「くっ……崩れるってじゃあっ……!」
「この城は元々、私の力・雪でできてるからぁ」
『大量の雪に生き埋めぇぇぇっっっ!!!?』
門貴と由雉が頭を抱えて叫びをあげる。
「……。」
――――ボォォォォォォォォォ〜〜〜〜ンッッッ!!!!――――
「じゃあっ」
「待ていっ」
キジの姿となって城から脱出しようとするユキジの羽根を、門貴が力強く掴む。
「大事な仲間捨てて1人だけ助かろうってかぁぁっ!!?この薄情キジがぁぁぁっ!!」
「だってボク、自分の命が1番大事なんだもん」
門貴の叫びに、ユキジがさらっと淡白に答える。
――――ミシミシッ……ガガガッ……!!――――
『ぎゃああああああっっっ!!!!』
崩れ落ち始める城の天井に、もう逃げる時間もなく、門貴とユキジが悲鳴をあげる。
「何とかしなさい、虎ンプ」
「トラマサよっ!気にいってないけどっ。無理ねっ、どうにもできないわっ」
「そんなぁ〜〜っ!!白雪さまぁぁ〜〜っっ!!!」
「僕、白雪様と心中なんて真っ平御免ですぅぅ〜〜〜っっ!!!」
「うっさいわねっ!!こっちだって真っ平よっ!!」
嘆く鈴白と芹に、白雪が強い口調で言い返す。
「月器で何とかっ……」
「……っ」
「……?ハチ?」
助かる方法を模索する輝矢の横を通り、城のちょうど中央辺りに立って、崩れ始める天井を鋭い瞳で見上げる桜時。そんな桜時に輝矢が少し首をかしげる。
「ハチ、何をっ……」
――――ドッバァァァァァァァァァァァンッッッ!!!――――
『ぎゃああああああああああっっっ!!!!』
一気に崩れ落ちてくる天井や壁に、門貴や鈴白たちが悲鳴にも似た叫びをあげる。
「……っ」
そんな状況の中、冷静に両手を突き上げる桜時。
「……っ“瞬花”っ!」
――――パァァァァァァァァァァァァーーーーンッッッ!!!――――
『……っ!!』
崩れ落ちてきた雪が、一瞬にしてすべて桜の花びらへと変わり、輝矢たちへと降り注いだ。その桃色の支配する美しい光景に、皆が目を見張る。
「大丈夫かっ!?みんっ……!」
「きゃあああああっっっ!!!さっすが私の桜時様っ!かっこいいぃぃ〜〜っ!!」
「だああああああっっっ!!!!!」
輝矢たちの方を向こうとした桜時に、後方から勢いよく抱きつく白雪。桜時が奇声をあげる。
「なっ……んななななななっ……!何やっ……!触っ……触触触るんじゃっ……!!」
「私、雪国育ちだから桜なんて初めてぇぇ〜っ!もう白雪、感動ぉぉ〜〜っ!このまま結婚しなぁ〜いっ?」
「するかぁぁっっっ!!!!!」
勢いよく迫ってくる白雪を、桜時が必死に振り払う。
「あの女っ……」
「はいはい、今動いたら死ぬから大人しくねぇ〜」
白雪に憎悪を燃やす輝矢に、由雉が冷静に一言。
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