第8章 かぐや姫vs白雪姫 ★5
――――カァァァーーンッ!キィィィーーンッ!パァァァァーンッ!――――
「……っ」
輝矢と白雪が激しく三日月と雪剣を交差させる中、横目で鈴白と芹の敗北を確認した白雪が少し眉をひそめる。
「知ってます?」
「……?」
そんな白雪に声をかける輝矢。
「“ペットは飼い主に似る”っていうんですよっ」
――――パリィィィィィィィィィィーーーーンッッッ!!!――――
「……っ!」
輝矢が強気な笑みを見せた途端、三日月を受け止めていた雪剣が、力に押し負けて砕け散る。
「……っ」
少し表情をしかめながら、後方に飛んで輝矢と距離を取る白雪。
「さすがは“オトポリ認定”の退治屋だけのことはあるわねっ」
「えっ……?」
特に焦った様子もなく笑みを浮かべる白雪のその言葉に、輝矢が首をかしげる。
「なら、こういうのはどうかしら?“雪時雨”っ!」
――――バァァァァァァァァァァァーーーーーンッッッ!!!――――
「……っ!」
輝矢に向けられた白雪の両手から、激しい吹雪が放たれる。
「“月器・十六夜”っ!」
三日月を十六夜に変化させ、白雪の雪時雨を受け止める輝矢。
「……っ鬼口とは比べものになりませんねっ……」
精一杯力を込めなければ、すぐにでも弾き飛ばされそうなほどの雪時雨の威力に、輝矢が少し顔を歪める。
「あんなのと一緒にしないでよっ」
「……っ!」
いつの間にか輝矢の後方へと現れる白雪。
「“雪剣”っ!」
「“月器・三っ……!うっ……!」
再び構えた雪剣を輝矢へと振り下ろす白雪。輝矢はすぐさま十六夜を三日月へと変えて応戦しようとするが、雪時雨により地面に凍り付いてしまった十六夜が動かない。
「クっ……!」
「残念でしたっ♪」
――――ブシュッッ……!!!――――
「ううっ……!!」
雪剣が勢いよく輝矢の左肩に突き刺さり、その雪剣の氷の結晶から血が滴り落ちた。輝矢の表情が痛みに歪む。
「うっ……」
「ンフフっ……」
苦しむ輝矢を見て、白雪は冷酷な笑みを浮かべた。
「んっ……んんっ……」
その頃、気を失っていた桜時がやっと目を覚ます。
「俺っ……何をっ……」
―――― チュっ ――――
「……っ!ひいいいいっっっ!!!!」
輝矢とのキッス事件を思い出し、青ざめた表情となって震え上がる桜時。
「ダメだっ……1ヶ月は悪夢に魘されるっ……ってかアイツらはっ……」
苦悩するように頭を抱え込んだ桜時が、顔を上げて状況を確認しようと周りを見回す。
「……っ!輝矢っ……!!」
桜時の目に飛び込んでくる、白雪の雪剣に刺され血を流す輝矢の姿。
「輝矢っ!!」
「……っ」
輝矢が桜時の声に反応し、苦しげな表情のまま横目で起き上がった桜時の姿を確認する。
「ンフフっ……これで終わりねっ!」
白雪が微笑み、雪剣をもう1度輝矢へと振り下ろす。
「ハチの前であまり……恥をかかせないで下さいよっ……!」
「えっ?」
「……っ!」
輝矢が勢いよく右足を振り上げる。
――――バギコォォォォォォォーーーーンッッッ!!!――――
「ううううっっ!!きゃああああああっっっ!!!!」
輝矢の蹴りに雪剣を砕かれ、軽々と吹き飛ばされていく白雪。
「うううううううっっっ!!!」
飛ばされた白雪が、背中を壁に打ち付けてしゃがみ込む。
「白雪様っ!!」
「きょお〜れつぅ〜っ」
芹が不安げに身を乗り出す横で、笑顔を見せる由雉。
「ハチ〜見てくれましたぁ〜っ?」
「だああああっっっ!!!めっちゃ血出てんのに手ぇ振ってんじゃねぇっ!!!」
笑顔で手を振る輝矢の左肩からドクドクと流れる赤い血に、桜時が少し焦った表情で怒鳴り返した。
「このっ……!」
「とっとと終わらせましょうか」
起き上がった白雪に、氷が溶け動くようになった十六夜を構える輝矢。
「“月器・下弦”……」
月器が十六夜から下弦へと欠けていく。
「“水月”っ……!」
「“水力”っ……?」
――――バァァァァァァァァァーーーーンッッッ!!!――――
下弦から無数の水の刃が放たれ、白雪に直撃した。
「白雪様っ……!!」
「意外とあっけなかったねぇ〜」
衝風の中に姿を消した白雪の名を思わず叫ぶ芹の横で、あまり面白くなさそうな顔を見せる由雉。
「おおっ、決まったかぁ〜?」
「……?」
そこへ鈴白に勝利を収めた門貴がやって来る。
「うん、輝矢の圧勝って感じぃ〜」
「やっぱ輝矢んは強いなぁ〜まぁ白雪ちゃんの可愛さも捨て難いねんけどさぁ〜」
「ふっふっふっ……」
『……?』
どこからか聞こえてくる不気味な笑い声に、門貴と由雉が振り向く。
「あまり白雪様を侮らないで下さいよっ」
『……。』
2人が振り返った先にいたのは、門貴に倒れた状態のまま倒れこんでいる鈴白であった。強い口調のわりに情けないその姿に、2人が少し呆れた表情を見せる。
「あの方の本当の力というのはですねぇっ……!」
「いいでぇ〜っ!!輝矢んっ!!」
「その調子ぃ〜っ」
「ああっ!!聞いてくれないっ!!」
「お兄ちゃんっ……」
倒れ込んだまま熱く語ろうとする鈴白であったが、門貴と由雉にあっさりと無視され、ショックを受ける。そんな情けない兄に、少し肩を落とす芹。
「随分と和やかですねぇ〜」
「フフフフフっ……」
「……っ」
門貴たちの方を見て呆れた表情を見せていた輝矢が、晴れていく煙の中から聞こえてくる笑い声に、表情を厳しくして振り向く。
「……っ!」
『なっ……!!?』
晴れた煙の先に広がる光景を見て、輝矢や門貴たちの表情に驚きが走る。
「水が私に通用すると思って?」
輝矢の放った無数の水の刃は、白雪の前ですべて氷付けにされてしまっていた。傷1つ負っていない白雪が、輝矢に余裕の笑みを向ける。
「そんなっ……」
「輝矢んの水月がっ……」
「フッフッフっ!驚きましたかっ!?白雪様の能力というのはですねぇっ……!」
「頑張れぇぇぇぇっっ!!!輝矢んっっっ!!!」
「そんな変態女に負けるなぁ〜っ」
「ああっ!!また聞いてくれないっっ!!」
勝ち誇ったように語ろうとした鈴白を、またしても無視する門貴と由雉。
「誰が変態女よっ」
輝矢に飛び交う声援に、少し表情を引きつる白雪。
「アナタです」
「誰も答えろとは言ってないわよっっ!!」
即答する輝矢に、白雪が怒鳴り返す。
「とにかくっ!これはお返しするわよっ!」
「えっ?」
白雪が右手を振り上げると、氷付けにされた輝矢の水月が、向きを180度変えて全ての刃先が輝矢に向く。
「“雪乱雲”っ!!」
「……っ!」
向きを変えた氷の刃が、一斉に輝矢に向かって放たれる。
「クっ……!“月器・十六っ……!」
――――バァァァァァァァァァーーーンッッッ!!!――――
「あああああっっっ!!!!」
『輝矢っっ!!!』
十六夜を構える間もなく、輝矢に降り注ぐ氷の刃。全身に刃を受け、吹き飛ばされた輝矢を見て、桜時、門貴、由雉が皆、身を乗り出して輝矢の名を呼んだ。
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