第8章 かぐや姫vs白雪姫 ★4
「クっ……!」
一方、由雉の裂羽により足場を崩され、落下していく芹が迫り来る地面を見て顔を歪める。
――――ボォォォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!――――
「……っ」
落下していく芹の体を白い煙が包むと、次の瞬間、煙の中か小さな1頭の豹が飛び出てきて、軽々と地面に着地した。
「“豹人”っ?」
階段の上から芹を見下ろしていた由雉が、その降り立った獣の姿に眉をひそめる。
「……っ“降雹”っ!」
――――ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!――――
豹の姿となった芹が上にいる由雉へと大きく口を開くと、芹の口から大きな雪玉のようなものが3つ、勢いよく飛び出した。
「……っ!おわぁっとっ!」
飛んでくる雪玉を、スレスレのところでかわしていく由雉。
――――ドッゴォォォォォォーーンッッッ!!!――――
「……。」
由雉が避けた雪玉が、後方の壁へと激突し、壁に大きな穴をあけて外まで突き抜けていく。
「豹と雹をカケてるってわけねぇ〜それにしても凄い殺傷力……」
雪玉の威力を目の当たりにし、少し呆然とする由雉。
「こりゃ1発でも当たると致命傷だねぇ〜」
「……っ」
「……っ!」
その時、由雉のいる上階まで一気に飛び上がってくる芹。芹が由雉に向かって、再び口を開く。
「“降雹”っ!!」
「クっ……!」
またも向かってくる雪玉を見て、由雉が少し表情をしかめながら懐から赤い羽根を3枚取り出す。
「“左翼・滅羽”っっ!!」
――――パァァンッ!パァァンッ!パァァァァァンッッッ!!!――――
「……っ」
由雉の投げた赤い羽根が、芹の放った3つの雪玉それぞれに突き刺さると、雪玉はその場で自動的に消えた。消える雪玉に少し眉をひそめる芹。
「ん〜ボクってば可愛いだけじゃなくってコントロールもばっ……」
「“降雹”っ!」
「へっ?」
――――ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!――――
「うえええええええええっっっ!!!?」
自分の力に酔っていた由雉に、今度は3つではなく次々と雪玉が飛んでくる。
「さすがに無理っ!」
――――ボォォォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!――――
「うわぁっ!」
キジの姿となって飛び上がり、雪玉を避けて階段の下へと降下していくユキジ。
――――ボォォォォォォォ〜〜〜〜ンッッッ!!!――――
「ふぅ〜っ」
下の階の床へと降り立ったユキジが、再び人の姿となる。
「……っ」
「……っ?」
そこへ由雉を追うようにして、芹も上の階段から軽い身のこなしで飛び降りてくる。
「やっぱりあの羽根では、たくさんの数を一度に消すことはできないみたいだね」
「うん」
「あっさりバラしたっ!!?」
自分の技の弱点を芹に見抜かれ指摘されたというのに、あっさりと認めてしまう由雉に逆に驚かされる芹。
「だってそんなに1辺に羽根投げられないしぃ〜正直、羽根も消耗品とはいえ、もったいないってゆぅ〜かぁ」
「……。」
愚痴るようにペラペラと話す由雉に、芹が少し呆れた顔を見せる。
「ちなみにこの赤い羽根が1番高いんだけどぉ」
「お兄ちゃんに恨みはないけどっ……白雪様のためだっ!消えてもらうよっ!」
「……っ」
話を続ける由雉に向かって口を開く芹。身構えた芹に、由雉が表情を鋭くする。
「“降雹”っ!!」
――――ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!――――
由雉に向かって放たれる、無数の雪玉。
「……っ」
由雉が雪玉を避けるため、上空へと飛び上がる。
「……っ“降雹”っっ!!!」
「……っ!」
由雉が上へと飛び上がって避けることを読んでいたかのように、芹がすぐさま上を向き、空中の由雉に向かって再び無数の雪玉を放った。飛び上がってくる雪玉に、空中で表情を引きつる由雉。
「これならキジになったとしても避けられないっ!これだけの数なら全部消せないしボクの勝っ……!」
「そう思うでしょ〜?」
「えっ……?」
この状況に勝利を確信する芹であったが、由雉が逃げ場のない空中で余裕の笑みを浮かべる。その由雉の笑みに、表情を曇らせる芹。
「“両翼っ……」
由雉が両の手をまるで翼のように広げる。
「千滅羽”っ……!」
由雉の両の手から降り注ぐ、無数の赤い羽根。
――――パァァァァァァァァーーンッッッ!!!――――
「……っ!!」
降り注いだ赤い羽根が、芹の放った多くの雪玉を1つも残すことなく消し去った。消えていく雪玉と降り注ぐ赤い羽根に、大きく目を見開く芹。
「……っ!」
「“右翼っ……」
驚きに呆然としていた芹の元へと、青い羽根を構えた由雉が降下してくる。
「ううっ……!」
降下してくる由雉に、最早攻撃することもなく、恐怖に顔を歪ませる芹。
「裂羽っ”」
「ひいっっっ!!!」
――――バアアアアアアアアアーーーーーンッッッ!!!――――
「……っ」
由雉の放った青い羽根が突き刺さったのは、恐怖に頭を抱え込んだ芹のすぐ横の床であった。
「ふぅ〜っ」
「……。」
疲れたように肩を回す由雉を、呆然と見つめる芹。
「まさか……全部いっぺんに消せるのに……わざとああ言ってボクにそう思い込ませたんじゃっ……」
「そうだよぉっ」
戸惑うように見つめる芹に、悪意のない笑顔を向ける由雉。
「どうせ可愛い顔して人を騙すんだったら、こんくらいしないとね〜あっ、ちなみにこの羽根、1番安いのっ」
「……。」
――――ボォォォォォォォォォォ〜〜〜〜ンッッッ!!!――――
由雉の笑顔に、芹が人の姿へと戻り、力なくその場にしゃがみ込む。
「負けましたっ……」
「どうもっ」
そう呟いた芹に、由雉は余裕の笑みを浮かべてそう言った。
由雉が芹に対して勝利を収めた頃、門貴と鈴白。
「おっらぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!如意棒っっ!!」
「……っ」
門貴が鈴白に向けて勢いよく如意棒を振り下ろす。
「“盾鏡”っ」
――――パァァァァァァァァァーーーーーンッッッ!!!――――
「……っ!」
如意棒が鈴白を攻撃しようとしたその瞬間、鈴白の前にどこからともなく長方形の鏡が現れ、門貴の振り下ろした如意棒を受け止めた。
「鏡っ?」
「……。」
門貴が鏡から如意棒を離し、一度後方へと下がると、すぐさま鈴白の前に現れた鏡が消える。
「驚きましたか?僕の力はっ……」
「ん〜まぁええわっ!もういっちょ如意棒っ!」
「えっ?」
自分の力を自慢げに話そうとする鈴白であったが、門貴は特に鈴白の話を聞くことなく、すかさず如意棒を構えて先ほどと同じように鈴白に向かって大きく振り上げる。
「おっらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「少しは人の話を聞いて下さいっ」
――――パァァァァァァァァァーーーーンッッッ!!!!――――
「……っ!」
如意棒が鈴白に当たろうとしたその瞬間、またしても鈴白の前に鏡が現れ、如意棒を受け止める。二度も攻撃を防がれたことに、さすがに眉をひそめる門貴。
「凄いでしょう?僕の力はっ……」
「じゃあ後ろからぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「あらっ?」
またしても鈴白の話を無視し、門貴が鏡を蹴り上げるようにして鈴白の上へと飛び上がり、鈴白の後方から如意棒を振り下ろす。
「おっらぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「無駄ですよっ」
――――パァァァァァァァァァァーーーーンッッッ!!!――――
「ありっ?」
後方からの攻撃を試みる門貴であったが、今度は鈴白のすぐ後ろに鏡が現れ、鈴白へと振り下ろされた如意棒を受け止めた。三度止められる攻撃に、門貴が目を丸くする。
「ですからね、僕の力というのはぁっ…」
「こうなったら五月雨如意棒斬りやぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「だはぁっ」
またしても話を聞いてくれない門貴に、鈴白が力なく肩を落とす。
「いい加減に聞いて下さいよっ!僕の力というのはっ…!」
「おりゃあっ!!」
「だからぁ……」
「ふりゃあっ!!とりゃあっ!!おんどりゃあっ!!こんくらぁぁっっ!!はっぷみらぁぁぁっっっ!!!」
――――パァンッ!カァンッ!コォンッ!ソォンッ!スゥンッ!――――
「……。」
あらゆる角度から鈴白への攻撃を試みる門貴であったが、すべて攻撃の寸前で現れる鏡に防がれてしまう。攻撃を止め、如意棒を下ろす門貴。
「ふはぁっ……疲れたわっ……」
「だから最初から僕の話を聞いておけば、無駄な攻撃をせずに済んだんですよっ」
がっくりと肩を落とす門貴に、鈴白が呆れた口調で言い放つ。
「僕の力というのはですねぇっ……!」
「自分へ向かってくる攻撃を寸前で自動的に受け止めてくれる“絶対防御鏡”かぁ〜厄介やなぁ〜」
「あああああああっっっ!!!言っちゃったぁぁぁぁぁっっっ!!!」
やっと言えるはずだったことを全て門貴に言われ、悲しい顔を見せる鈴白。
「けどそれってぇ〜物理攻撃用やんなぁ?」
「……?」
考え込むように顔をしかめていた門貴が、不敵な笑みを浮かべる。そんな門貴に首をかしげる鈴白。
「こんなんっ……どないするっ?」
門貴が如意棒を少し後ろで構える。
「如意棒・第1の舞っ……」
「……っ」
如意棒の周りを包むように集まっていく空気に、鈴白が眉をひそめる。
「“風力”……?」
「“空”っっっ!!!」
――――ビュゥゥゥゥゥゥゥンッッッ!!!――――
「……っ!」
如意棒が巻き起こした真空波が、目にも留まらぬスピードで鈴白へと向かっていく。迫り来る真空波に一度は焦りを見せた鈴白であったが、すぐに平静な表情となって真空波へと両手を突き出す。
「“返鏡”っ」
――――パァァァァァァァァァァーーーーンッッッ!!!――――
「何やてっ!?」
鈴白が突き出した両手の先に円形の鏡が現れ、門貴の繰り出した真空波を受け止めた上に、それを門貴へと弾き返す。
「クっ……!」
動揺を見せながらも素早い身のこなしで、弾き返ってきた真空波を避ける門貴。
「ふぃ〜っ、危っ……」
「そんなに落ち着いてていいんですか?」
「何っ?」
すぐ後ろから聞こえてくる声に、門貴がすぐさま振り返る。
「……っ!豹っ!?」
と、そこにいたのは紫色の瞳鋭い、金色の豹。
「……っ!」
「ううっ……!!」
素早く飛びかかった豹の牙が、門貴の左腕を切り裂く。流れ落ちる赤い血に、顔を歪める門貴。
――――ボォォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!――――
門貴の腕を切り裂いた豹が、白い煙に包まれて鈴白となる。
「何やっ、獣人やったんかいな。力どうこうよりそれを先言えっちゅーねんっ」
「言ってしまったら楽しみがなくなるでしょう?」
「ちなみにわいは猿人やでぇっ!?」
「知っていますよ……」
自分が何の獣人であるかをアピールする門貴に、鈴白が少し呆れた表情を見せた。
「ともかくおわかりいただけたでしょう?貴方では僕に傷1つ付けられません」
鈴白が強気に言い放つ。
「あちらのキジさんならともかく、貴方のような一方向からの単純攻撃しかできないようなお猿さんは……」
「ああ〜そうかぁ」
「……?」
何やら思いついたような声を出す門貴に、鈴白が眉をひそめる。
「要は色んな方向から同時に攻撃すれば、あの鏡じゃ防がれへんてことやろっ?」
「ううっ……!!」
あっさりと見破られる弱点に、鈴白が少し表情を引きつる。
「まっ……まぁそうですけどっ!貴方のような単純ゴリ押し棒術使いっ、わかったことろでそんな攻撃っ……!」
「そない思うっ?」
「えっ?」
どこか含んだような笑みをこぼす門貴に、戸惑うように聞き返す鈴白。
「俺ってわりと万能型お猿さんよぉ?」
門貴が少し表情を鋭くして如意棒を構える。
「新しい……構えっ……?」
今までとは異なる構えを取る門貴に、さらに眉をひそめる鈴白。
「如意棒・第2の舞っ……」
空気をまとった如意棒を、門貴が勢いよく地面に突き刺す。
「“浄”っっ!!」
――――ビュウウウウウウウウウウンッッッ!!!――――
「なっ……!!?」
門貴が如意棒を突き刺した辺りから鈴白の立っているところまでの床に瞬時にヒビが入り、鈴白の周囲から床を突き破るようにして風が巻き上がる。鈴白が驚き、焦りを見せる中、竜巻のように姿を変えて鈴白へと迫り来る風の塊。
「クっ……!“返鏡”っっ!!」
何とか風を押し返そうと、鈴白が円形の鏡を生み出す。
――――パァァァァァァァァァーーーーーンッッッ!!!――――
「ううっ……!!」
しかしあらゆる方向から迫り来る風に、鏡は力なく砕け散った。鏡を失った鈴白へと、風は突っ込んでいく。
「うっ……!うわあああああああああっっっ!!!!」
竜巻に呑まれ、吹き飛ばされていく鈴白。
「うっ……ううっ……僕がっ……こんなっ……うっ……」
吹き飛ばされた鈴白が地面に落ちると、そのまま力なく目を閉じた。
「おっしゃああっっ!!勝ぉぉぉ〜〜利っ!」
倒れこんだまま目を閉じた鈴白を見て、門貴は力強く如意棒を突き上げた。
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