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鬼斬り かぐや 
作:千風



第7章 狙われたハチ ☆4



「ぎゃっぼおおおおおんっっっ!!!!」
「サルっ……!」
 門貴の悲鳴の聞こえてくる方へと急いで駆けて行く輝矢。
「輝矢っ!!」
「由雉っ」
 走っていた輝矢の元へ、逆方向からユキジが飛んでくる。
「ボクを差し置いて門貴が狙われたのかなっ!?」
「わかりませんが急ぎましょうっ」
「うんっ!」
 輝矢とユキジが門貴の元へと急ぐ。
「門貴っ……!」
「あっ!!輝矢ぁぁぁーーんっっっ!!!!」
 雪道の真ん中に立っていた門貴が、やって来た輝矢たちを見つけ、必死に手を振る。
「何があったのですっ?犯人はっ……!」
「右足が雪に埋もれてもて動かれへんねぇーんっっ!!助けてぇぇーーっっ!!!」
『はっ……?』
 門貴の言葉に、大口を開けて固まる輝矢とユキジ。
「走っとったらさぁ、いきなりズッボンってはまってもてさぁっ!ズッボンていったんよぉ〜?ズッボン!」
「……。」
 右足が埋もれた状況を話す門貴を見ながら、表情を無くしていく輝矢。
「いっやぁ〜でも輝矢んが助けに来てくれるって俺、信じてっ……!」
「紛らわしいっ」
「ふっぎゃあああああっっっ!!!!」
 笑顔を見せていた門貴を、輝矢が容赦なく蹴り飛ばす。景気よく舞い上がり、雪道へと落下していく門貴。
「右足抜けたっ……でも痛いっ……」
 落下した門貴が、力なく呟く。
「まったくっ……」
「人騒がせなサルだよねぇ〜」
 輝矢とユキジが呆れたように肩を落とす。
『ハイホー……ハイホー……』
『……っ!』
 そこへ聞こえてくる歌声に、輝矢とユキジが表情を一変して顔を上げる。
「歌っ……!?なんでっ……!」
『ハイホー……ハイホー……』
 どこからか聞こえてくる歌声に、警戒するように辺りを見回す輝矢たち。
「また誰かがさらわれるっちゅーことかっ!?」
「……っ」
 門貴の言葉に、輝矢が何かに気づいたような表情となる。
「まさかっ……ハチっ!!」
「あっ!輝矢っ!」
 血相を変えて飛び出していく輝矢を、門貴とユキジが慌てて追いかける。
「ハチっ!ハチっ……!!」
 慌てて先ほどハチたちといた場所まで戻る輝矢。
「ハチっ……!!……っ」
 しかし輝矢が戻ったその場所に、ハチの姿はなかった。残っているのは不自然に途切れた犬の足跡のみ。輝矢が表情を凍りつかせる。
「輝矢んっ!どないしたんやっ!?」
「まさか桜時がっ……!?」
 そこへ駆けつける門貴とユキジ。
「ハチっ……」
 こうしてハチは、輝矢の前から姿を消した。





その日、夜。ゴラミの家。
「吹雪が……増してきたね……」
 窓の外を見つめながら、どこか気難しい表情で呟く由雉。
「そんなぁぁぁっっっ!!!ハチさんや鉄汰さんっ!芹までもが消えてしまったなんてぇぇぇぇっっ!!!」
「今、シリアスムードなんだから、もう少し声小さくしてくんない?」
 相変わらずの大声で騒ぐゴラミに、由雉が少し呆れた表情を向ける。
「まさか3人とも鬼人の手にっっ!!?」
「せやろなっ……消えた時に例の歌聞こえとったし、街中一通り探したけど見つけられんかったっ……」
「そんなぁぁぁぁ〜〜〜っっっ!!!!」
「……。」
 珍しく深刻な表情で話す門貴に、ゴラミは悲痛な声を出し、輝矢は元気なく俯く。
「すまんっ……輝矢っ……俺のせいでイヌコロや芹までっ……」
「別にアナタだけのせいではありません」
 辛い面持ちで頭を下げた門貴に、輝矢が声をかける。
「あの時、2人から離れた私のミスです……」
「輝矢っ……」
 自分が間違っているなどとこれっぽっちも思っていなさそうなあの輝矢が、自分を責めるようなことを言う。そんな輝矢を、目を細めて見つめる門貴。
「輝矢んっ……!そんなに辛いんなら俺の胸の中で泣っ……!」
「問題はハチたちがどこに連れて行かれたのか、ということですね」
「ううっ……」
 勢いよく立ち上がり手を広げて受け入れ態勢を整えた門貴であったが、輝矢にあっさりと無視され、悲しみに暮れる。
「そうだよねぇ〜あんな短い時間でいなくなっちゃうんだから、そう遠くではないと思うけどぉ〜」

――――バッリィィィィィィィィーーーーンッッッ!!!――――

「へっ……?」
 由雉のすぐ傍の窓ガラスが急に砕け割れ、外から何かが飛び込んでくる。
「矢ぁ〜?」
 部屋の中へと飛び込んできたのは、何やら紙のようなものが括り付けられた1本の矢。

――――ズシュッッ・・・!!!!――――

「のおおおおうっっっ!!!!」
 中へ飛び込んできた矢が、見事に門貴の後頭部に突き刺さる。
「ああっっ!!窓ガラスがぁぁっっ!!!」
「窓ガラスよりまず俺の頭ちゃう〜?ゴラミちゃ〜〜〜んっ」
「張り変えるの、けっこうお金かかるのにぃぃっっっ!!!!」
「……。」
 頭から血を流す門貴のことなどまるで気にせず、割れた窓ガラスを悔やむゴラミ。
「矢文ですかね」
「今時、古風だねぇ〜」
「よっ」
「ぬっきゃああああああっっっ!!!!」
 輝矢が門貴の後頭部に刺さった矢を、荒っぽく抜く。第2の痛みが門貴を襲う。
「えぇ〜っと、何々?」
 矢に括り付けてあった手紙を取り、開く輝矢。
「“消えた街人を返して欲しくば、街の北はずれにやっとこさ造った『雪鏡の城』まで来るべし」
「雪鏡の城?」
「ああ、そうそう。来るのは退治屋・竹取輝矢とその一味のみの限定ねっ”だそうです」
「俺ら限定?」
「鬼人にしては情緒溢れるお手紙ですねぇ」
 手紙の内容に首をかしげる由雉と門貴。読み終えて手紙を閉じる輝矢が、目つきを鋭くする。
「街の北はずれに城なんてっ……建ってるぅっっ!!!!」
 家の北側の窓を見たゴラミが驚きの声をあげる。確かに窓の景色を独占するかのように、吹雪の中に佇む大きな白一色の城。雪景色の中に紛れながらも、不気味な空気を醸し出している。
「おっかしいわねぇーっ!確かに昨日まではなかったのにっ!!」
「本当に出来たてホヤホヤのようですね……」
「……?」
 窓の外に見える城を見ながら、すっと立ち上がる輝矢。そんな輝矢をゴラミが戸惑うように見る。
「行きますよ、サル、キジ」
「おうよぉっ!!」
「はぁ〜いっ」
「ええっっ!!?」
 呼びかける輝矢と迷わず返事をする門貴・由雉に、大きく驚くゴラミ。
「行くんですかっっ!!?敵の罠ってわかりきってるのにぃぃっっっ!!!」
「当然です」
 驚いて問いかけるゴラミに、輝矢が鋭い表情を向ける。
「私からハチをさらった罪……死んで償わせます……」
「すごい気迫っ……!!」
「おおっ、マジやっ」
「いつもより迫力3割増しだねぇ〜」
 殺意のこもった冷たい瞳を見せる輝矢に、ゴラミは思わず圧倒され、止めようとした手を引っ込めた。そんな殺意溢れる輝矢を冷静に見ながら、輝矢の後へと続いて部屋を出て行く門貴と由雉。
「あっ……!」
「心配せんといてぇ〜っ!ゴラミちゃ〜んっ!俺はすぅ〜ぐ戻ってくるからっ!ゴラミちゃんの元へっ!」
「美味しいものでも作っといてぇ〜」
「……っ」
 ゴラミが止める隙もなく、輝矢たちは雪鏡の城へと旅立っていく。
「どうか……お気を付けてっ……」
 吹雪が激しさを増す外の景色を見ながら、ゴラミが祈るように呟いた。







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