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鬼斬り かぐや 
作:千風



第7章 狙われたハチ ☆3



「そぉぉぉぉ〜〜〜うなのよぉぉぉ〜〜〜っっ!!!ウチの可愛いフラッゴ君がっ!!フラッゴ君がっ!!」
 聞き込みのため、いなくなった美青年のうちの1人の自宅を訪れた輝矢、ハチ、芹の3人。
「私に似て顔も良くて頭も良くて運動神経も良くて性格も良かったから、きっとさらわれたんだわぁ〜っ!」
『……。』
 そこで3人が出会ったのは、イカつい顔立ちをした派手なピンク頭のオバサンであった。行方不明となった美青年の母親のようだが、悲しみのあまり豪快に泣き叫ぶ。そのあまりの豪快さに、言葉を失う輝矢たち。
「今頃、ママが恋しくて泣いているに違いないわぁぁ〜〜っっ!!うおぉぉぉぉぉ〜〜〜んっっ!!」
「あっ……あのっ……それでっ……息子さんがいなくなった時の状況というのは……」
 泣きじゃくる母親に、遠慮がちに問いかける輝矢。
「急によっ!急にっ!2時のおやつには降りてきたのに、2時半のおやつには降りてこないからっ……!!」
「何回、おやつあんだよっ」
「2階のお部屋を見に行ったら、パッタリいなくなってたのよぉぉっっ!!!もうパッタリよぉぉっっ!!」
 ハチに突っ込まれながらも話し、またしても泣きじゃくる母親。
「あ〜それでぇ、そのいなくなった時に妙な物音とか声とかしませんでした?」
「うおぉぉぉぉぉ〜〜〜んっっ!!!フラッゴくぅぅぅぅぅ〜〜〜んっっっ!!!!」
「……。」
 輝矢の問いに答えることなく、母親は泣き続ける。
「ダメですね。次行きましょう、次」
「あっ、そういえばぁぁ〜」
「……っ?」
 輝矢が諦めて立ち上がろうとした時、母親が思い出したように口を開く。
「歌が聞こえたわ」
「歌っ……?」
 母親の言葉に、眉をひそめる輝矢。
「ええ、確か“ハイホーハイホー”とかって」
「ハイホー?」
 そのフレーズを口にし、ハチが首をかしげる。
「他に何かっ……」
「うおぉぉぉぉぉ〜〜んっっ!!思い出したらまた泣けてきたわぁぁ〜〜っ!!フラッゴくぅぅ〜んっっ!」
「……。」
 それ以上、何も聞けなかったのは、言うまでもない。




 1時間後……。
「街中調べ回って、結局わかったのは消えた時にハイホーって歌が聞こえたってことだけかぁ〜」
 街の中央に設置されたかまくらに集まり、聞き込み調査の結果を報告しあう輝矢たち。輝矢たちが聞き込みに行った家だけでなく、モンキとユキジが行った家でも息子が消えた時に歌が聞こえたそうだ。
「けど歌って……」
 その唯一の共通点に、難しい表情を見せるハチ。
「芹のお兄さんが消えた時も聞こえたのですか?」
「えっ?」
 輝矢の不意な問いかけに、芹が少し驚いたような顔をする。
「あっ、うっう〜んとっ……どうだったかなっ……」
「……?」
「兄貴が消えちまったんだっ。動揺してそんなん覚えてなくても無理ねぇーよっ」
 引きつった表情で曖昧な発言をする芹に、輝矢が少し眉をひそめる。そんな芹を庇うように、ハチが優しい笑顔でフォローを入れた。
「歌と行方不明事件とホントに関係あんのかなぁ〜」
「わかったでぇぇぇっっっ!!!」
「へぇっ?」
 首をかしげていたユキジの横で、ひらめいた様子で元気よく立ち上がるモンキ。
「犯人はぁっ!“歌唱力”を持った鬼人やぁぁぁっっ!!!」
『……。』
 モンキの言葉に、一瞬にして白ける一同。
「んでなっ!人をさらう度に自慢の喉を披露してんねんっ!この雪は歌の深みを増すための演出じゃっ……!」
「勝手に言ってろ、アホザルっ」
「ギャグとしても面白くないし最低だよねぇ〜」
「もういっそ消えて下さい」
「ぐっはぁぁぁぁーーんっっっ!!!!!」
 仲間から次々と寄せられる突っ込みに、大きなショックを受けるモンキ。
「うううっ……」
「でぇ?歌以外に何か手がかりになるようなものはないのかいっ?」
「そっれが特になくってさぁ〜って、んっ?」
 聞こえてきた問いかけに、ハチが答えながら眉をひそめ、ゆっくりと振り向く。
「何だいっ、ないのかぁ〜使えないねぇっ」
「……。」
 ハチが振り向いた先にいたのは、偉そうに肩を落とした鉄汰。
「何でお前がここにいんだよっっっ!!!」
「通りかかったかまくらに入ったら、ちょうど君達がいたんだよ。奇遇というやつさっ」
「ああっ!?」
 鉄汰の言葉に、顔をしかめるハチ。
「そっちはどうだったのさぁ〜?鉄汰スパークルの成果は出たのぉ〜?」
「“鉄汰スペシャル”だよっ!間違えないでもらえるかなっ、君っ!」
「そんなこと聞くまでもありませんよ、由雉」
「えっ?」
 鉄汰に問いかけたユキジが、輝矢の言葉に首をかしげる。
「私たちが掴んだ情報を聞きに来ている時点で、自分では何も成果があげられなかったに決まっています」
「あっそっかぁ〜」
「そっそそそそそそそんなことないよっ!!適当なことを言うのはやめてくれたまえっ!竹取輝矢っ!」
 ユキジが納得する中、鉄汰が思い切り動揺しながら輝矢に言い放つ。
「成果はもっもうバッチグーさっ!ふわぁーはっはっはっはっ!!」
「負けず嫌いやなぁ〜」
「バレバレだけどな」
 無理やり笑う鉄汰を見て、呆れた表情を見せるハチとモンキ。
「さっ!じゃあ鬼人を捕まえに行ってこようかなっ!ふわっはっはっはっ!!」
「はいはい、とっとと行って下さい」
「ふっふんっ!言われなくても行ってやるよっ!!」
 鬼人の居場所などわかっていないのだろうが、後には引けなくなり、仕方なくかまくらを出て行く鉄汰。
「あぁ〜あ」
 そんな鉄汰を見送り、ユキジが少し肩を落とした。
「でも鉄汰が何も掴めてないってことは、鉄汰スペシャルに反応がなかったってことかぁ〜」
「また仮死状態なんとちゃう?」
「それはないでしょ〜5人が消えたのってこの1週間のうちだよっ?」
「じゃあ今さっき仮死状態に入ったばっかとかっ!」
「んな都合よく寝る鬼人いんのかぁ〜?」
「そもそもっ……」
『……っ?』
 いつになく真剣な表情で口を開いた輝矢に、ハチ・モンキ・ユキジが視線を寄せる。
「今回の事件……本当に鬼人の仕業なのでしょうか……」
『えっ……?』
 輝矢の言葉に、3人が眉をひそめる。
「どういうことだよ?鬼人の仕業じゃないってんなら誰がこんなことっ……」
『ハイホー……ハイホー……』
『……っ!!』
 聞こえてくる歌声に、皆が一斉に顔を上げる。
『ハイホー……ハイホー……』
「歌っ……!!?」
「ハイホーってこれっ……」
「うわああああっっっ!!!!」
「……っ!」
「鉄汰の声だっ……!!」
 外からする悲鳴に、急いでかまくらを飛び出す輝矢たち。
「鉄汰っ……!!鉄汰っ……!!……っ!」
 いち早く飛び出していったハチが、道の途中で急に足を止める。
「どないしたんやっ!?イヌっ!」
「これっ……」
 後ろからやって来たモンキの言葉に、深刻な表情で呟くハチ。
「鉄汰の……マサカリ……」
『……っ』
 ハチのすぐ目の前の雪道に落ちていたのは、鉄汰がいつも背負っているマサカリであった。マサカリが落ちているというのに、近くには鉄汰の姿はもちろん、足跡さえない。皆が表情を険しくする。
「鉄汰が……消えた……?」
 輝矢も驚きの表情で呟く。
『……って、あれが“若くてカッコ良くて爽やかな美青年”っ!!?』
「そこかよっっ!!!」
 声を揃える輝矢、モンキ、ユキジの3人に、ハチが力強く突っ込みを入れる。
「だってこのボクを差し置いて大問題じゃない?」
「そうそうっ!俺もおったっちゅーのにっ」
「犯人の趣味を疑いますね」
「だっからそういう問題じゃねぇーだろぉーがっっ!!」
 鉄汰がさらわれたことよりも、鉄汰が“若くてカッコ良くて爽やかな美青年”を見なされたことに、かなり衝撃を受けている輝矢たちに、ハチが唯一まともに怒鳴りつける。
「今は鬼人にしろ、鬼人でないにしろ、犯人を見つけることが先決だろっ!!」
「そりゃそうだけどさぁ〜」
「ホンマに歌が聞こえただけで、後はさっぱり人影も何もなかったしぃ」
「あっ……」
『……っ?』
 急に声を出す輝矢に、3人と芹が振り返る。
「いい作戦を思いつきました」
『いい……作戦……?』
 首をかしげたハチたちは、誰1人としていい予感がしていなかった。





『……。』
 雪の降るトロピカーナの街の中央に立っているのは、人化した門貴と由雉。
「名づけて“オトリ作戦”ですっ」
 2人の前に立ち、何やら誇らしげに言い放つ輝矢。
「まぁ大して新鮮味のない作戦だよねぇ〜」
「輝矢ぁぁ〜んっ!!ついに俺が“若くてカッコ良くて爽やかな美青年”と認めてくれたんやなぁっ!」
「鉄汰でもさらわれるくらいですから、このくらい妥協してもオトリにはなるでしょう」
「よっしゃああああっっ!!!頑張るでぇぇぇっっ!!!!」
「貶されたの、わかってないでしょ?」
 張り切って声を出す門貴に、呆れた表情を向ける由雉。
「俺もオトリやった方がっ……」
「ハチにそんな危ないことはさせられません」
「ボクらはいいのね」
 笑顔でサラッと答える輝矢に、由雉が不満げにこっそり呟く。
「じゃあボク、街の東側回るからぁ〜」
「俺は西やなっ」
「消されても死んでも私たちに犯人の手がかりを残すんですよ?いいですね?」
「はいはいっ」
「まっかせといてぇぇっっっ!!!!」
 輝矢の言葉に返事をして、門貴と由雉がそれぞれ東と西に分かれて歩き去っていく。
「アイツら、大丈夫かなぁ〜?」
「まぁ消えたら消えたで次の作戦、考えます」
「鬼っ……」
 門貴と由雉のことをまるで心配していない輝矢に、ハチがこっそりと呟く。
「……っ」
「……?」
 振り向いたハチが、塞ぎこむように俯く芹に気づく。
「心配か?兄ちゃんのことっ」
「えっ……?」
 ハチの問いかけに、ゆっくりと顔を上げる芹。ハチは芹に穏やかな笑顔を向けた。そんなハチの笑顔を見て、芹が少し目を細める。
「お兄ちゃんには……兄弟……いる?」
「えっ?」
 不意な芹の質問に、少し目を丸くするハチ。
「兄弟っつーか兄弟みたいな感じでずっと一緒に育ってきたヤツらはいるぜぇ?ホントは従兄弟だけどなっ」
 ハチが芹に笑顔で答える。
「ハーモニーうるせぇーし、自由奔放ってゆーか自分勝手っつーかでいっつも振り回されっけどっ」
――――おぉぉぉ〜〜〜うぅぅぅ〜〜〜じぃぃぃ〜〜っっっ♪♪――――
――――だあああああっっ!!!うっせぇぇっっ!!!――――
「まっ、一緒にいんのは楽しいかなっ」
「そうっ……」
 ハチの答えを聞いて、芹が少し笑顔を見せる。
「ボクもね、お兄ちゃんといるのは、すごく楽しかったよ……」
 芹が思い出すように、悲しげな笑みを浮かべる。
「だからお兄ちゃんがいないのは……すごく寂しいし、すごく辛い……」
「芹っ……」
 やがて笑みを失う芹に、ハチが眉をひそめる。
「だぁぁーいじょうぶだってっ!!俺たちが絶対、兄ちゃん見つけてやっからっ!なぁっ?」
「ええっ」
 相づちを求めたハチに、笑顔を向ける輝矢。
「大丈夫っ……」
「……?」
 輝矢が芹にも笑顔を向ける。
「私は約束は守りますよ」
「……っ」
 輝矢の笑顔に、少し目を見開く芹。
「……うんっ」
 そして笑顔となり、大きく頷いた。
「ぎゃっぼおおおおおおんっっっ!!!!」
『……っ!』
 遠くから聞こえてくる悲鳴に、輝矢やハチが顔を上げる。
「門貴の声だっ!!」

――――ボォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!――――

「現れましたかねっ!“月器”っ」
 ハチが素早く人化し、輝矢がピアスを弾いて月器を目覚めさせる。
「ハチは芹を連れて一旦、ゴラミのところへ戻って下さいっ!」
「わかったっ!」
「……っ!」
 三日月を右手に、雪道を走り出していく輝矢。
「……っ」
 遠ざかっていく輝矢の背中を見つめ、厳しい表情を見せる桜時。
「よしっ、ゴラミんとこに戻ろうっ」
 輝矢が見えなくなると、桜時が芹の方を振り返る。
「さぁっ!行こうっ!」
「……。」
「……?」
 慌てた様子で芹に手を伸ばす桜時であったが、いつまでも掴んでくる手がなく、少し戸惑うように顔を上げる。
「芹っ……?」
 桜時が芹の方を見ると、芹は黙ったまま深く俯いていた。
「どうしっ……」
『ハイホー……ハイホー……』
「……っ!この歌はっ……!」
 桜時が芹に手を伸ばそうとしたその時、またしてもあの歌が聞こえてくる。どこからともなく聞こえてくる歌に、顔を上げ、辺りを見回す桜時。しかしどこにも人影はない。
「一体、どっからっ……!」
『ハイホー……ハイホー……』
 頭の中に直接響くように、どんどん大きくなっていく歌声。
「んっ……!」
 何か痛みのようなものを覚え、桜時がこめかみに手を当てる。
「何かヤベぇなっ……芹っ……!とりあえずこっからっ……!」
「フフフっ……」
「……っ!」
 頭を押さえながら苦しい表情で振り向いた桜時の先で、どこか冷酷な笑みを浮かべている芹。そんな芹を見て、桜時が驚くように目を見開く。
「芹っ……!まさかお前っ……!ううっ……!!」
『ハイホー……ハイホー……』
 さらに大きく響く歌声に、頭に走る痛みが激しさを増し、桜時がその場に膝をついてしまう。
「ううっ……うううっ……!!くっ……そっ……」
 頭に走る痛みに耐え切れず、ゆっくりとその場に倒れこんでいく桜時。表情を歪ませながら、桜時が力尽きるように瞳を閉じていく。
「ごめんねっ……」
『ハイホー……ハイホー……』
 歌声が小さくなっていく中、倒れた桜時を見下ろし、冷たい表情を見せる芹。
「お兄ちゃんっ……」
「……。」
 雪道に倒れた桜時に、白い雪が降り注いだ。







千風のブログ「千風の押入れ」へっ!←裏話満載っ!の予定です。


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