第6章 シンデレラストーリー ★5
『……っ!』
聞こえる悲鳴に輝矢や桜時たちが一斉に顔色を変える。
「今の声っ……!竹兄の声だっ……!」
「ベランダですねっ」
輝矢と桜時がそう言葉を交わし、すぐさまベランダへと走り出していく。
「竹兄っっ!!」
「桜ちゃぁぁぁぁ〜〜〜〜〜んっっっ!!!」
「……っ!」
桜時がベランダへと飛び出すと、ベランダには桃色の鬼の手に全身を掴まれた竹人の姿があった。竹人が桜時に助けを求めるように手を伸ばす。
「鬼人っ!?」
「レベル2.5・桃鬼ですね」
驚く桜時の横で、輝矢が冷静に呟く。
「椿さんと楓ちゃんがっ…!鬼人だったんだよぉぉ〜〜〜っっ!!」
「……っ」
「あの2人がぁぁっ!?」
「がいいぃぃぃーーっっんっっ!!!」
必死に教える竹人の言葉に、輝矢と桜時が驚き、門貴がこれ以上ないほどにショックを受ける。
「何の騒ぎっ!?まぁっ!竹人っ!」
「竹人くんっ!」
「竹人兄さんっ!!」
「お母様ぁぁぁ〜〜っっっ!!!お兄ちゃぁぁ〜〜んっっ!梅ちゃぁ〜〜んっ!」
遅れてベランダへとやって来た孔雀や松人・梅人が、鬼人に捕まっている竹人を見て驚きの表情を見せる。竹人は今にも泣きそうな顔で孔雀たちに助けを求める。
「まぁ〜た鬼なのっ!?警備隊っ!!」
「はっっ!!」
『……っ?』
孔雀の声に、上空から勇ましく登場するのは、朱実の警備隊長・銀ペー。
「行くぞっ!鬼人っ!」
――――ボォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!――――
白い煙に包まれて、銀ペーがペンギンの姿となる。
「“ペンペンっ!!スライディーーグっっっ!!!ジェッッット気流”ぅぅっっ!!」
――――ビュゥゥゥゥーーーンッッ!!!――――
その場に寝転がった銀ペーが、ツルツル頭を地面に滑らせるようにして、物凄い勢いで鬼人の方へと頭から突っ込んでいく。
「楓……」
「ええ」
竹人を捕まえている鬼人・椿に言われ、楓の方が一歩前へ出る。
「“鬼石”っ」
楓が巨大な右腕を、ベランダの床へとつけた。
「ぬっ?」
――――バァァァァァーーンッッッ!!!――――
「ぬはっ!?あっぎゃああああっっっ!!!!」
銀ペーの滑っていた辺りのベランダの床だけが急に崩れ落ち、銀ペーが下方へと降下していく。
『アニキぃぃっっっ!!!!』
「銀ペーっ!!」
降下していく銀ペーを見て、思わず叫ぶ子分ペンギンたちと桜時。
「そういえば桃鬼は“石力”を使うんでしたねぇ〜」
「もうちょい早く言えよぉっっ!!」
思い出したように言う輝矢に、桜時が突っ込みを入れる。
「いっやぁぁぁっっっ!!何っ!あのペンギンっ!弱すぎぃぃっっ!!!」
あっさりとやられた銀ペーを見て、心配はしないが嘆く孔雀。
「こうなったら何とかしてっっ!!破天荒女っ!!」
警備隊も頼りにできなくなった孔雀が、ついに輝矢に頼み始める。
「え〜」
「愛しい息子の命が懸かってるのよっっ!!」
面倒臭そうに声を出した輝矢に、孔雀が必死に懇願する。
「もう婚約者探すのも面倒だし、死なせとけばいいじゃないですかぁ〜」
「いっやぁぁぁ〜っっ!!輝矢ちゃんっ!!ヘルプミィィィーーっっっ!!!!」
竹人のことをあっさり見捨てようとする輝矢に、竹人が鬼人の手の中から必死に助けを求めた。
「コイツを殺されたくなかったら大人しく私たちに国を渡すことねぇっ!」
「ひっやぁぁぁっっっ!!!!」
「竹兄っ!!」
竹人を今にも握りつぶそうとする椿に、桜時が身を乗り出して竹人の名を呼ぶ。
「クッソっ……!村雨まっ……!」
「竹人さんっっ!!!」
「へっ?」
鬼人の方へと飛び出し、村雨丸を抜こうとした桜時の横を駆け抜けていく1つの影。
「れっ……レイラさんっ!?」
「竹人さんにっ……」
桜時よりも早く鬼人の方へと駆け出して行ったレイラが、勢いよく右足を振り上げる。
「何するのよぉぉぉっっっ!!!!!」
――――ドッヒュウウウウウゥゥーーンッッッ!!!――――
力強く振り切ったレイラの右足から、物凄い勢いで放たれたのは、輝矢が適当に説得して履かせた、あの作業用の長靴。
「何っ…!?きゃあああああっっっ!!!!」
「へぇっ!?」
レイラの飛ばした長靴が見事に椿の顔面を直撃し、倒れこんだ椿の手の中から竹人が飛び出す。
「うっ……!うわああああああっっっ!!!」
ついでにベランダからも飛び出して、勢いよく降下していく竹人。
「竹兄っっ!!」
「……っ」
――――ボォォォォォォォ〜〜〜〜ンッッッ!!!!――――
「えっ?」
落ちていく竹人を助けるため、飛び出そうとした桜時の横で、白い煙が巻き起こる。
『・・・っ!』
白い煙の中から飛び立っていくのは、姿美しき白鳥。
「うわああああああああああっっっ!!!」
「……っ」
「って、あれっ?」
降下しながら叫びまくっていた竹人が、空中で急に止まる自分の体に目を丸くする。
「大丈夫ですか……?」
「……っ?」
すぐ近くから聞こえてくる可愛らしい声に、竹人がゆっくりと顔を上げる。
「竹人さんっ……」
「……っ」
竹人の体を支えて飛ぶ、白い羽根を広げた美しい白鳥・レイラが、竹人にそっと笑いかけた。その笑みに、竹人が思わず目を見開く。
「うわぁ〜獣化姿のんが全然いいじゃ〜ん」
「ずっと白鳥のまんまでおってって感じやな」
地面へゆっくりと降り立つ竹人とレイラの姿を見ながら、門貴と由雉がしみじみと呟く。
「ゴリラの獣人じゃなかったんですねぇ〜」
「はじめっからゴリラとは一言も言ってねぇーよっ」
まだレイラがゴリラの獣人だと思っていた輝矢に、桜時が呆れた表情を見せる。
「うっ……!ううっ!あっのゴリラ女ぁぁぁぁ〜〜〜っっ!!!」
長靴の当たった顔面を押さえながら、怒りの溢れる形相で起き上がる椿。
「さてとっ……一応の人質も解放されたことですし……鬼退治と参りますかぁ」
輝矢が右耳のピアスへと手を伸ばし、素早く弾き飛ばす。
「“月器・三日月”っ」
『……っ!』
三日月を目覚めさせる輝矢に、椿と楓が警戒するように構えを取る。
「やれやれだねぇ〜」
「やったんでぇっっ!如意棒っ!」
「村雨丸っ!」
桜時、門貴、由雉もそれぞれに武器を構えて戦闘態勢を取る。
「チっ……!楓っ!」
「ええっ!」
椿と楓が同時に床へ右手を付ける。
『“鬼石”っっ!!!』
『……っ!』
――――バァァァァァァァーーーーーンッッッ!!!――――
鬼人たちの言霊とともに、ベランダが一斉に崩れ始める。
「きゃああっああっ!!」
『うわわわわわわっっ!!』
「孔雀さんっ……!松兄っ!梅人っ!」
足場を失い、慌てる孔雀やその他の人々。
「ハチと由雉は皆さんをっ」
「わかったっ!」
「はぁ〜いっ」
輝矢の言葉に従い、崩れゆくベランダから会場内へと人々を避難させていく桜時と由雉。
「門貴は私と一緒に降りますよっ」
「喜んでいっ!」
崩れていくベランダから飛び降り、遥か下の地面へと降り立つ鬼人たちを追いかけるように、降下していく輝矢と門貴。
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