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鬼斬り かぐや 
作:千風



第6章 シンデレラストーリー ★3




「荷物まで運んでもらっちゃって、ホントにどうもありがとぉ〜っ」
『いっ……いえっ……』
 先ほどのゴリラ……ではなく女性に満面の笑顔で礼を言われ、素早く女性から目を逸らす桜時と門貴。ハチとの衝突により道に散らばった女性の荷物を、桜時と門貴が拾うのを手伝い、そのついでに女性の家まで運んであげたのであった。
「ついでだからお茶でも飲んでいってぇ〜ねぇ〜っ?」
『いえっ、結構ですっ』
 女性の誘いを、目を逸らしたまますぐさま断る桜時と門貴。
「遠慮せずにほらほらぁぁ〜〜〜っっ!!」
「だああああっっっ!!!触るなぁぁぁっっ!!!」
「いっやぁぁぁっっ!!!どうせ飲むならもっとカワイ子ちゃんのお茶がいいぃっ!!」
 女性の物凄い力で家へと連れ込まれていく桜時と門貴。2人の悲痛な叫びが近所へと響き渡る。
「何か色々恐るべし……だね……」
「あれには私も敵いません……」
 連れ込まれていく2人を見ながら、輝矢とユキジがしみじみ呟いた。




 女性の家の中は、いかにも少女趣味な何とも可愛らしい部屋であった。1人暮らしのようで、他に人は見当たらない。リビングへと通された輝矢たち4人に、女性がお茶を出す。
「私、白鳥の獣人の新出(しんで)レイラってゆぅ〜のぉ〜っ。よろしくねぇ〜っ」
「ほぉ〜っ、ゴリラの獣人ですかぁ〜」
「輝矢っ、見た目で種族まで決めちゃダメだよっ」
「へっ?」
 レイラの自己紹介を無視して勝手な解釈をする輝矢に、ユキジが注意を入れる。
「白鳥のレイラっ……くわあああっ!!俺の妄想では最高の美女ができたのにっ……!!」
「お前、それ、ただの変態だぞ……?」
 部屋の隅で苦悩している門貴に、桜時が呆れた表情で突っ込みを入れる。
「あなた、いいわねぇ〜こぉ〜んなイケメンに囲まれて旅してるなんてぇ〜」
「ハチ以外ならあげますよ?」
「いっやぁぁっ!!輝矢んっっ!!それだけは勘弁してぇぇっ!!」
 輝矢の無責任な発言に、門貴が必死に声をあげる。
「ううんっ!いいのっ!私にはもうっ…心に決めた人がいるからっ!」
『へっ?』
 何やらウットリした表情で話すレイラに、皆が首をかしげる。
「ほぉ〜、やはりゴリラの方ですか?」
「だからぁ〜輝矢っ、見た目で人のこと決めちゃダメだってぇ〜」
 ゴリラにこだわりを見せる輝矢に、ユキジが再び注意を入れる。
「その人はねっ……朱実竹人さんってゆぅ〜のっ!」
「ブぅっっっ!!!」
 桜時が思わず飲んでいたお茶を吹き出す。
「あっ……朱実っ……竹人っ!!?」
「そうっ……あれは忘れもしない去年の春っ……電線の上でハーモニーを刻んでいる彼を見てキュンと来たわっ」
「どんなキュンだよっ」
 ウットリ状態のまま出会いを語るレイラに、桜時が呆れた表情で突っ込みを入れた。
「でも彼は国主子息っ……叶わぬ恋と諦めていたのだけど、なんとっ!!」
 レイラが大きな広告を取り出して、輝矢たちに見せる。
「明日、彼の婚約者を探すパーティーが開かれることになったのよぉぉぉっ!!」
「ああっ……知ってるっ……」
「そこでねっ!明日着ていくドレスを作ろうと思って、生地をたぁ〜んまり買いこんできたのぉ〜っ!」
「それでこの大荷物ですか……」
 リビングを隣の部屋を埋め尽くすほどの荷物を見ながら、輝矢が呆れたように呟いた。
「あまりにも美しくってすぐさま婚約者決定ってなっちゃったらどぉ〜しよぉ〜〜っっ!!」
「タケちゃんて雑食?」
「いや、めちゃ面食いっ」
「はぁ〜この上なく可能性ないねぇ〜」
 桜時の言葉に、両手を横に上げてやれやれといった表情を見せるユキジ。
「“レイラっ……君の美しさをハーモニーにさせてくれっ……”とか何とか言われちゃったりぃ〜っ!」
「ないと思います……」
 妄想を繰り広げているレイラを見ながら、輝矢がこっそりと呟く。
「ふはぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
『……っ?』
 急に声をあげる門貴の方を、桜時たちが振り向く。
「んだよっ?サっ……」
「ちょちょちょちょいちょいっ!」
「ああっ?」
 桜時を引っ張って、レイラから離れたリビングの隅まで行く門貴。
「ええかっ?あの女を竹人に婚約者に選ばせる。あの女が相手やったらさすがに国主さんも止めるはずやっ」
 門貴が小声で桜時に話す。
「そしたらパーティーはパァっ!どやっ?」
「ん〜でも竹兄が振りでもレイラを選ぶとは思えねぇーけどっ……」
「結婚させられへんためやぁ〜言うて説得すりゃええねんてっ!」
 あまり乗り気のしていない桜時を、門貴が明るい口調で丸め込む。
「よっしゃあーっ!俺らが手伝うでぇっ!ドレス作りっ!!」
『えっ?』
 門貴の言葉に、レイラだけでなく輝矢やユキジも目を丸くした。





 その日、深夜。

――――ビリビリビリビリィィィーーッッッ!!!――――

「きゃっ!このドレス、サイズ小さいぃぃ〜〜っ!」
「……。」
 レイラが着た途端に破れ散った青々とした美しいドレス。その破れ散ったドレスを見ながら唖然とした表情を見せているのは、針と糸片手の由雉であった。
「言われたサイズ通りに作ったんだけど……?」
「ええ〜っ?ちゃんとB85W56H86で作ったぁ〜っ?」
「うんっ…ってか明らかにそのサイズじゃないと思うんだけどっ……」
 レイラの自己申告のスリーサイズに、疑念を抱く由雉。
「由雉」
「……?」
 名を呼ばれて由雉が振り返ると、そこには特にドレス作りを手伝う様子もなく月見団子を食べている輝矢の姿があった。
「B100W80H110で作り直しなさい」
「ラジャっ……」
 輝矢の言葉に、由雉がレイラに気付かれないよう小さく頷いた。
「はぁ〜っ……裁縫って結構、疲れんだなぁ〜」
「頑張れ頑張れっ!イィヌっ!」
「お前が言い出したんだから手伝えよっっ!!!」
 地道にドレスを縫っていた桜時が、応援ばかりしている門貴に怒鳴りあげた。





 そして翌日、夕方。
『やっ……やっとできたっ……』
 疲れきった顔で力なく呟く桜時と由雉。
「きゃあ〜っ!私ってばカワイすぎぃぃ〜っ!」
『……。』
 見事にできあがった美しい青いドレスを身にまとい、満足げな笑みを浮かべているレイラを見て、呆然とする輝矢と門貴。
「まぁゴリラにも衣装ってとこですね」
「そんなことわざあったっけっ?」
 輝矢の言葉に、門貴が首をかしげる。
「さぁって、そろそろパーティーに行かないと間に合わなっ…」
「ああぁぁっっ!!!」
「へっ?」
 急に声をあげるレイラを、桜時が不思議そうに見る。
「私っ!このドレスに合う靴を持ってないわぁっ!」
「靴っ?」
「どうしよぉ〜っ!」
 下駄箱から趣味の悪い靴ばかりを並べながら、困った顔を見せているレイラ。
「いくら何でも今から靴は作れねぇーしなぁ」
「もうこれでいいですよ」
「へっ?」
 困っているレイラに輝矢がとある靴を差し出す。
「ちょっ……!これっ!作業用の長靴じゃなぁ〜いっ!」
「どうせドレスの裾が長くて靴なんて見えませんよ。それなら脱げない長靴の方がいいでしょう」
「ん〜っ、まぁこの際、仕方ないわねぇ〜」
 輝矢の説得に、納得はしきっていないがとりあえず長靴に足を通すレイラ。
「よしっ!とっとと行こうっ!パーティーに遅れちまうっ!」
 桜時を先頭に、皆が慌てて家から出る。

「うわっ!もうけっこう日暮れてんなぁ〜」
 オレンジ色の夕日が沈み始めている空を見て、桜時が少し眉をひそめる。
「こりゃ全力疾走しないとっ……」
「あっらぁ〜っ?レイラちゃんじゃなくってぇ〜っ?」
『……っ?』
 レイラの家の前の道から聞こえてくる甲高い声に、レイラや桜時たちが振り返る。
「ああたも朱実のパーティーに参加するのかしらぁ〜っ?」
「うっほぉぉ〜っっっ!!」
「ママハッハさん」
 振り返った門貴が声をあげる。レイラの家の前にいたのは、白馬に引かれた豪勢な馬車に乗った、豪勢なドレスを身に纏い、タワーのような渦状の頭をした中年女。その両脇には若く美しい2人の女性が座っている。若い女性の方も美しいドレスを身に纏っていた。
「ええ。椿さんと楓さんも参加されるんですか?」
「ええ、私たちなんかじゃ竹人様のお目にも止まらないでしょうけどっ…」
「そんなことないってぇ〜っ!何なら俺がもらったるよぉぉ〜〜っっ!!」
「ちったぁ黙っとけ、サルっ」
 謙遜した感じで言う椿に、門貴が軽い言葉を飛ばす。そんな門貴に突っ込む桜時。
「まぁ〜レイラちゃんが出るのでしたらウチの椿や楓には勝ち目はないざますわねぇ〜っ!」
「あっらぁ〜そんなことないですよぉ〜ママハッハさんっ」
 ママハッハのおだてに、謙遜したことを言いながらも嬉しそうな笑みを浮かべるレイラ。
「ではお先に行っておりますわっ、失礼っ」
「ひひぃぃぃ〜〜〜んっ!」
 ママハッハが手綱を引くと、馬が声をあげ、3人を乗せた馬車がレイラの家の前から駆け出していった。
「もぉ〜私の美しさったら、ママハッハさんも感服するほどなのねぇ〜!私ってば罪な女っ!」
「嫌味で言ってるってこと、まったくわかってないねぇ〜」
「いいんじゃないですか。平和で」
 自分の美しさに罪を感じているレイラを見ながら、輝矢と由雉が冷めた反応を見せる。
「とにかくとっとと行こうっ!このままじゃ間に合わねぇーっ!全速力で走るぞっ!」
「ドレスなのに全速力で走れるわけないでしょ〜?」
「えっ?あっ、ああっそっか」
 レイラに強く言われ、ハッとしたように呟く桜時。
「でもっ急がねぇーと間に合わねぇーしっ……えっと、どうしたらっ……」

――――ゴロゴロゴロゴロッッ……――――

「んっ?」
 車の引くような音が聞こえ、桜時が振り返る。
「これで行きましょう」
「へっ?」
 隣の家の敷地から軽々と荷車を引いてやって来たのは輝矢である。
「輝矢、それどっからっ……」
「隣の家から奪って来ました」
「犯罪だろっ!それっ!」
 サラっと答えた輝矢に、桜時が突っ込みを入れる。
「ゴチャゴチャ言っている暇はありません。荷台に乗りなさい、ゴリラ」
「レイラよっ」
 輝矢に名前の訂正をしながらも、レイラが荷車の上へと乗りあがる。

――――ミシっ……ミシっ……――――

「大丈夫なのぉ〜?」
 レイラが乗った途端に軋む荷車を見て、由雉が不安げな声を出す。
「屋敷までもてばいいんです」
「でっ、馬は?あっ、牛か?」
「いえ、イヌとサルです」
『へっ?』
 荷車を引く馬を探していた桜時と門貴が、輝矢の言葉に目を丸くする。

――――ボォォォォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!!――――

「何故っ……」
 獣化して荷車を引く体勢を取るハチとモンキ。この現状にハチが疑問を抱く。
「さっ、とっとと行きましょう」
「お前も乗るのかよっ!!」
 レイラとともに荷車の上に乗る輝矢に、ハチが振り返って怒鳴りあげる。
「よっしゃああっっっ!!!輝矢んの頼みやぁぁぁっっ!!とっとと行くでぇっ!!イヌぅ〜っ!」
「だあああっっっ!!!わかったよっ!!全速力で行くぞっ!サルっ!!」
「おぉぉぉぉーーーうっっ!!!」
 気合いを入れて荷車の取っ手を持ち上げるハチとモンキ。
『どりゃあああああああっっっ!!!!』
 物凄い勢いで荷車を引いていくハチとモンキ。
「ちょっと待ってよぉ〜」
 どんどん突き進んでいく荷車を、ユキジはゆっくりと飛びながら追いかけた。









千風のブログ「千風の押入れ」へっ!←裏話満載っ!の予定です。


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