第5章 クマった上司 ☆4
「グガガガッ……」
「桃タローの弟子なんかにっ……」
やっと立ち上がった鬼人に、マサカリを振り上げる鉄汰。
「ボクは劣りはしないっ!!“アイアン・スイング”っっ!!」
「“月器・三日月”っ」
輝矢は三日月を、鉄汰はマサカリを、鬼人へ向けて同時に振り切る。
――――ゴッチィィィィィィーーンッッッ!!!――――
鬼人の前で交差し、止まってしまう三日月をマサカリ。
「グガッ?」
『……。』
鬼人が間抜け面で首をかしげ、輝矢と鉄汰もそれぞれ唖然とする。
「何、してくれてるんだよっ!邪魔だよっ!邪魔っ!!」
「それはこちらの台詞です。そんな無駄に大きいマサカリ、振り回すのやめて下さい」
「このマサカリはボクの一族の伝統なんだよっ!君こそ何だいっ!?三日月っ!?まんまじゃないかっ!!」
「まんまで何が悪いんです?」
三日月とマサカリが交差したまま、くだらない口論を繰り広げる輝矢と鉄汰。
「“鬼口”っっ!!!」
『……っ』
そんな隙だらけの2人へ、鬼人が鬼口を放つ。
「“月器・十六夜”っ」
「“鉄汰スペシャル・バージョン3”っっ!!」
またもや同時に輝矢が三日月を振り上げ、鉄汰が懐かあら鉄球を投げる。
――――ゴッチィィィィィーーンッッッ!!!――――
『……。』
輝矢の十六夜と鉄汰のバージョン3のそれぞれの盾が、幅を大きく取るため、またしても構える前に衝突する。
「だっから邪魔だって言ってるんだよっ!その満月っ!!」
「満月じゃありません、十六夜です。そちらのナマクラ鉄壁こそ邪魔なんですけど?」
「何だってっ!?」
「おっおいっ!!お前ら、前見ろっ!!前っ!!」
『えっ?』
またしてもくだらない口論を繰り広げていた輝矢と鉄汰が、少し慌てたように叫ぶゴンの声に前を見る。
『うっ……!』
構えられなかった両者の盾の間を抜けて、2人へと向かってくる鬼口。2人が顔をしかめる。
「“左翼・滅羽”っ!」
『……っ』
――――パァァァァァァァァァーーンッッッ!!!――――
2人に迫り来ていた鬼口に、横から青い羽根が突き刺さると、鬼口が2人の目の前で消滅した。
「もぉ〜何やってんのさぁ〜」
「由雉っ」
呆れた顔を見せながら、2人の前へと立ったのは、人化して青い羽根を構えた由雉であった。
「足の引っ張り合いしてるだけじゃ〜ん。ボクの手を煩わせないでよぉ〜」
「そうですね、こんな鉄クズ使いに構ってないで、とっとと鬼人をっ……」
「そぉ〜うはいかないよぉーっ!!勝負にはこのボクが勝たせてもらうっ!!」
『へっ?』
由雉の言葉に輝矢が気持ちを改めようとしている中、まったく気持ちを改めずに再び鬼人の元へと飛び出していってしまう鉄汰。
「そんな正面から飛び込んだらっ……!」
「ボクが桃タローより優れているということを示さなければならないんだっっ!!」
輝矢が止めようと手を伸ばすが、鉄汰は強い意志を見せて突き進む。
「“アイアン・スイング”っっ!!」
「……っ“鬼炎”っっ!!ガアアアアアッッッ!!!!」
鉄汰がマサカリから鉄の塊を放つと、鬼人も口から炎を放った。
「そんな炎っ……!」
ぶつかり合う2つの力を見ながら、余裕の表情を見せる鉄汰。
――――ジュウウウウウウゥゥゥ〜〜〜ッッッ!!!――――
「何っ……!!?」
鉄汰の放った鉄は、鬼人の鬼炎にあっさりと溶けていく。
「ううっ……!!」
鉄を溶かしつくした強力な炎が、鉄汰へと向かってくる。表情を凍りつかせる鉄汰。
「うわあああああああっっ……!!」
「……っ」
――――バァァァァーーンッッッ!!!――――
『……っ』
鬼炎が鉄汰のいた辺りの地面を直撃し、土を抉るように深く穴をあける。不安げな表情で見守る一同。
「ううっ……」
『……っ!輝矢っ!!』
地面にあいた穴のすぐ横で、鉄汰と重なるようにして倒れている輝矢。その左腕には鬼炎がかすったのか、ひどい火傷を負っていた。桜時やゴンたちが身を乗り出して輝矢の名を呼ぶ。
「……っ!君っ……!」
起き上がった鉄汰が、負傷した輝矢に駆け寄る。
「あ〜……後3センチ右に飛んだら完璧に避けられたんですけどねぇ〜」
「……っ」
左腕を押さえながら苦い笑みを浮かべる輝矢。そんな輝矢を見て、目を細める鉄汰。
「愚かだねっ!ボクを助けるくらいなら鬼人に攻撃をっ……!」
「私はっ……」
「……っ」
鉄汰の言葉を遮り、輝矢が強い眼差しを鉄汰に向ける。
「私は別に、アナタと争うために鬼人を退治するわけではありません」
「……っ?」
輝矢の強い瞳に、鉄汰が眉をひそめる。
「我が師・桃タローの教えはただ1つ……」
輝矢が鉄汰へ笑みを向ける。
「“誰かを守るためだけに戦え”……と……」
「……っ!」
鉄汰に走る衝撃。
「グアアアアアアアアッッッ!!!!」
『……っ!』
そんな輝矢と鉄汰に、飛びかかっていく鬼人。
『輝矢っ……!!』
桜時とモンキが助けに入ろうとする。
「下がっとくだぁぁ〜」
『へっ?』
そんな2人に制止を促し、2人の前に出たとある人物。
『クマ二郎っ!!?』
そう、それはクマ二郎であった。
「いっくどぉ〜っ?鬼っこぉ〜っ!」
――――ボォォォォォォォ〜〜〜〜ンッッッ!!!!――――
クマ二郎の大きな体を、白い煙が包んでいく。
「覚悟はできてっかぁぁっっ!!?鬼人ヤローっっっ!!!」
『……っ!』
次の瞬間、煙の中から出てきたのは、黒のオカッパ頭に不釣合いな濃い顔立ちの、大柄の男。オトポリの制服に“金”と書かれた赤い腕章をしており、背中には大きな金色のマサカリを背負っている。
「総長っ!!」
「お兄ちゃんっ!?」
『ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?』
それぞれに声をあげるゴンと鉄汰。その2人の言葉に、桜時たちがさらに驚く。
「いくぜぇっ……?……っ!」
人間の姿となったクマ二郎が、大きく右手を振りかぶり、背中に背負った金色のマサカリを構える。
「グガアアアッッッ!!!!」
「“ゴールド・ラッシュ”っっ!!!」
「……っ!“鬼炎”っっ!!!!」
クマ二郎が鉄汰と同じようにマサカリを振り切ると、マサカリから金の塊のようなものが無数に放たれる。それを見て鬼炎を放つ鬼人。
「さっきの鉄汰みたいに溶かされるんじゃっ……!」
「溶けねぇーよっ……」
不安げに声を出した桜時の言葉に答えるように、クマ二郎が言い放つ。
「俺のゴールドはっ……無敵だっ……!!」
――――バァァァァァァーーンッッッ!!!――――
「グガッ……!!」
『……っ!』
無数の金塊が、鬼炎を吸収するように掻き消し、まっすぐに鬼人へと飛んでいく。
「……っ!ギャアアアアッッッ!!!!」
クマ二郎のゴールド・ラッシュをもろに喰らい、鬼人が苦しげな悲鳴をあげる。
「私の出番まで取らないで下さいよ、クマ二郎」
「……っ」
輝矢の声に、クマ二郎が振り返る。
「いえっ、金汰」
「ガッハッハッハっ!」
――――ボォォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!――――
クマ二郎の体を再び白い煙が包むと、次の瞬間、そこには元の黒熊姿のクマ二郎が立っていた。
「すんまねぇ〜だぁっ!輝矢さんっ!輝矢さんはぁ〜もう動けねぇ〜もんだとばっかりっ」
「このくらいの傷で動けなくなるほど柔じゃありませんよ」
「ソイツは失礼すただぁ〜っ!!ガッハッハッハっ!!」
「失礼しちゃいますねぇ〜」
「あっ……」
鉄汰が不安げに見つめる中、輝矢が火傷を負った左腕を庇うようにしてゆっくりと立ち上がり、右手1本で三日月を構える。
「金汰っ」
「あいだぁぁぁっっ!!」
――――ボォォォォォォォォ〜〜〜ンッッッ!!!――――
クマ二郎が再び人の姿となる。
「“ゴールド・カーペット”っっ!!」
クマ二郎がマサカリを振り切ると、鬼人へ向けて金でできた道が伸びていく。
「……っ」
そこに飛び乗り、鬼人の元へと駆け滑っていく。
「グっ……!ググっ……!!グっ……!?」
「“月器っ……」
金汰の攻撃にまだ苦しんでいる鬼人へと、三日月を構える輝矢。
「水月”っ!」
――――バァァァァァァァーーンッッッ!!!――――
三日月から放たれた無数の水の刃が、鬼人へと放たれる。
「グッ……!ギャアアアアアアアッッッ!!!!」
輝矢の水月を喰らい、激しい断末魔を残し、水の中へと消えていった。
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