90
3年になると任意の剣術大会があるので、武術の選択は剣術にした。
これはオースティンも一緒だ。
相変わらずライバル認定のようで、同じものにすると宣言されていた。
自然魔法の授業は、クラス単位1コマ、選択魔法3種それぞれ1コマと、2年の最後と変わりはない。
クラス単位の授業が無詠唱魔法に入るので、無詠唱でも点数が貰えるようになる。
詠唱の出来ないイチイにはそれが凄くありがたい。
授業にも参加出来るようになるので嬉しい。
「イチイ」
「こんにちは、オースティン」
剣術の訓練場までそのまま連れ立って歩く。
「確か剣術は経験があると」
「ああ、うん。この学校に入学する前に、知り合いの冒険者に習ってたんだ」
「ほう、それは楽しみだ」
オースティンがにやりと笑う。
えー・・・何だか面倒な予感がする。
「貴族は幼い頃から剣術を習う。ただ実践経験は少ない」
「へぇ」
「貴殿は経験豊富だからな、きっと剣術も実践に特化していることだろう。勉強になる」
「いやいやいや。剣術はそこまで実践してないから期待しないで欲しい」
ほぼクライスによる指導のみだ。
実践とは言わない。
「うげ」
訓練場には30人以上、集まっていた。
剣術は人気だと聞いていたが、予想以上だ。
その中に嫌な人間を見つけてしまった。
しかも気付かれた。
「イチイ・ディ・プリアレスト!!」
「はーい・・・」
「先日は世話になったな。剣術ではそうはいかないぞ、覚えてろよ!」
ブラックマンはどうやら、剣術に覚えがあるようだ。
ああ面倒臭い。
まずは準備運動から開始、全くの初心者はいないので2人1組で軽く打ち合う。
簡易防具を身につけ、イチイはオースティンと組みになった。
本当に軽く打ち合う。
交互に剣を繰り出し、剣で受け止める。
剣の持ち方、打ち方は全員大差ない。
今回はイチイも奇抜なことはなく、悪目立ちもしていない。
少しずつスピードを上げて打ち合う。
特にミスはなく、淡々と進む。
途中で休憩が入り、1人ずつずれて組を変え、繰り返す。
初日なのでこの繰り返しで終わりらしい。
来週は実力を見るためにトーナメント戦を行うようだ。
オースティンの期待に満ちた目とブラックマンの視線がウザい。
憂鬱である。