2話 ランダム付加で魔物使い
「さてと、私が君達が担当するアリアス大陸を見守る、地神と言う、よろしく頼むよ」
…えっと…神?この黄色く光っている人は神と名乗っていた、そうか、神様か…
「神様とか…マジで?」
「は~…」
「もう訳わかんないや」
「もう何があっても驚きません…」
皆まだちょっと混乱している様だ。
「あはは、まあ信用するかはこれから、ね、取り敢えず4人に勇者の力を渡すよ」
「あっはい」
レオが真っ先に復帰し反応した、リーダー向けかも知れない。
「ほらほら、4人集まって」
集まった4人に何かをし始めた。
「「「「!?」」」」
彼らの身体が7色に光っていく…10分経ったか―光が消えていく。
「何これ、力が溢れてくる」
「身体が軽い?」
「うわっ、スゴッ」
「これが勇者の力…」
成る程、7人の神様の力を混ぜた物を勇者の力として与えたとか、そんな所かな?さっきの色からして。
「さて、君何だけど…取り敢えず私の地の力をちょっと分けるよ、ただ勇者の力を創るのに結構力を使っちゃったから、本当にちょっとだけね?」
「あ、はい、わかりました」
むう…思ったより厳しい状況かも知れない。
確かに黄色く光ったから力は貰った筈なんだけど、強くなった実感が全く無い。
「よっと、お待たせ」
その時、金色の人がこちらへ来た。
「どう?地神」
「勇者にはちゃんと力を渡せたんですが、彼には本当に少しだけになってしまって…」
「あらぁ~…確かにね…よし、じゃあこうしようか、よっと」
その瞬間、俺の身体が金色に光る。
「何かの力をランダムで付けたよ、流石に僕が干渉するのはこれが限界かな?」
「おお、流石天神様、彼には使役魔法が付きましたよ」
力をくれたのは本気でありがたい、でも…使役魔法?何それ?
「へぇ、珍しいのが付いたね、使役魔法ってのはその名の通り魔物を使役出来る魔法さ、結構レアな魔法だよ?」
魔物使い!マジか!勇者の父親の魔物使いとか好きなんだよ俺!
「ただ一つ問題が生まれたね…」
「え?問題?」
「うん、本来ならさ、私があげた地魔法に加えて他にも魔法を習得する余地があったんだけど、多分もう無理かな?」
「だね、僕の知ってる限り使役魔法って結構その辺りのキャパ使うからね」
えっとつまり…
「うん、使える魔法は私のあげた地魔法と使役魔法だけになるね、まあ使役魔法が結構強力だから何とかなるよ、頑張ってね」
「あ、はい」
「んじゃ、暫くしたら向こうから改めて召喚される筈だし、ちょっと待っててね」
「後もう1つ、いや2つ連絡があった、まずはさっき渡した力の確認方法だけど、あっちにその為の道具がある、多分国王辺りに貰える筈だからそれで確認してくれ」
それは便利だ、よくわからない力程、怖い物はない。
「後1つはこの世界で死んだらそれまでだ、魔法はあるけど復活は出来ないし私達にももう助けられない、過去に居たんだが、これはゲームじゃない、気をつけてな…では期待している」
そう言い残し、黄色の人は消え、金色の人は他のチームへと移動していった。
「さて…自己紹介はさっきしたしな…」
「そうですね…」
いつ召喚されるのかがわからないので、完全に手持ちぶさたになった。
「あ、じゃあ自己紹介ならぬ死因紹介なんでどう?」
「伊島さん、何だよそれ、面白そうだな」
「でしょ?レオ君、じゃあ言い出しっぺのぼくからね」
伊島まこと、彼女はやはり見た目通りスポーツか好きらしい、で、学校の男子野球部に混ざって試合をしていた所、投手の彼女が投げた球を打った打球が頭に直撃、気を失って目が覚めたらここに居たとの事だった。
「成る程な、それでジャージ何だな」
「うん、だから荷物とか何も持ってないの」
ちなみに俺は休みだったので、荷物はリュックにタブレットと手回し式充電器、水のペットボトルとカロリーメイツが入っていて、後はさっきリュックに入れといた缶ビール3本におつまみのビーフジャーキー位だ。
レオも荷物は持っていない、スキー板なら持っているが…途中で折れている。
林太郎は鋏を持っている…何をしていたんだろう。
桜宮嬢はちょっと大きい鞄を持っていた。
「次は俺な」
彼は休みを利用して友人とスキーに行って滑っていたそうなんだが、後ろから無茶な滑りをした奴が来てぶつかって転けたと思ってたら、何と崖から真っ逆さま…との事だった。
「スキー板が折れてるのはそれでか」
「はい、所でこれ、そこらに捨てといてもいいんですかね…正直邪魔で邪魔で」
結構明るい奴、まあそういう性格なのか無理をして場を盛り上げようとしてるのか、まだわからないが…田中 獅子、不運な奴だが、芯は強そうだ。
「えっと…僕はバイトしてたんだ」
バイトは花屋、店員に結構モテる女の子が居たんだが、何股かしてたらしく、怒った彼氏の内の1人が店に乗り込んでだ、そして何故か彼が刺された。
「そりゃまた不運な話だな…」
「前からこう言う事には何故かよく巻き込まれるんです…」
鈴村林太郎は思ったより深刻な事態を抱えていた、もしかしたらそういった体質の持ち主なのかも知れないが。
「私は、友達の家に行く途中で…」
桜宮鈴羽、彼女は友人の家にお泊まりに行く途中、車の玉突き事故に巻き込まれ死亡したようだ。
「んじゃ、その鞄は着替えか」
「あ、はい、お泊まりセットです」
4人が俺を見てくる。
「俺は大した事は無いんだが、会社の同僚と俺の誕生日の飲み会をしてな、終わって家に帰ったら天井が落ちてきたんだよ」
「いや、それ充分大した事ありますよ」
「そうか?」
レオの指摘に皆が反応し―
「「「「うん」」」」
皆が頷いた。
「そ…そうか…大した事だな、うん」
正直、あの時程困ってないので、あんまり大した事と思えない、しかし一般的には俺のも充分大した事のようだった。
しかしまだ召喚されないのか?―と思っていると、足もとに魔法陣が光始めた。
そして、声が聞こえ始める。
―勇者様、どうかこの世界をお救い下さい―
辺りを光が包み始める。
◇◇◇
―アリアス大陸・フェイクライズ王国『召喚の塔』最上階『召喚の間』―
ここで今、勇者召喚の儀式がおこなわれていた。
「勇者様、どうか世界をお救い下さい…」
1人の少女が祈り、魔力を魔法陣へ送り召喚の魔法陣が反応している。
次の瞬間、部屋を強い光が包んだ。
そして、光が消えていき、そこには5人の異世界人がいた。
彼女は召喚の儀が成功した事に安堵した、しかし、次の瞬間、違和感に気付く。
(え?5人!?確か史書には、4人の勇者を召喚する儀式と書かれていた筈なのに…!まさか…失敗したの!?)
◇◇◇
光が消え、俺達は今、何処かの部屋にいた。
目の前には1人の少女、始めはこちらを見て安堵した表情をしたが、直ぐに顔色が悪くなっていった。
「あーっと…すみませんか、ここは…」
とにかく、まずは話を聞こうと声を掛ける。
「あ…失礼しました、始めまして皆様、ここはアリアス大陸のフェイクライズ王国といいます、私はフェイクライズ王国の第一王女、エストリーゼ=フェイクと申します」
「俺は滝白翔と言います」
「田中レオです」
「鈴村林太郎です」
「ぼくは伊島まこと」
「私は桜宮鈴羽と申します」
「突然で申し訳ありません、私は貴殿方を、世界を救う勇者様として召喚させていただきました」
「ああ、じゃあここが例の魔王が居る世界なんだ…」
「えっと…はい、そうなんです」
「ああ、俺達、簡単な事情はわかっているんですが、取り敢えず、今は5人居る理由からですね」
「あ…そうだ!本来なら召喚される勇者様は4人の筈何ですが、もしかしたら私が失敗してお一人巻き込んで仕舞ったのでは…」
「いやいや―」
俺達は、自分達の現状と5人居る理由を話した。
「そんな事があったんですか…では、送還の儀はしない方が良いですね…」
自分が失敗したわけではないとわかり、ホッとした顔になった。
「送還?出来るんですか?」
俺はそこが気になった、こう言う異世界物では、大抵が召喚しっぱなしで送還何て出来ないのがセオリーだった。
「はい、でないと、来ていただいた勇者様が帰れませんし」
いやまあそんなんだけどね?…まあいいや。
「さて、では今からこの国の国王、つまり私の父上の所にご案内致します、詳しい話はそちらでお願い致します」
「わかりました」
俺達はエストリーゼ王女の案内で、召喚の間を出て国王の待つ謁見の間に移動を開始した。