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序節
夏の終わり、秋がちらほら顔を覗かせる季節。俺は、久方ぶりに故郷に戻って来た。
数字を出して数えれば、俺が高校を卒業してから三年。だからそんなに懐かしむような感慨さは無い。ただ、何と言うか、故郷の空気はやっぱり故郷であって、落ち着いたりはするものだ。
まあ、三年もの間、一度も帰って来なかったんだ、若さ故に何かとざわつく心がそうなるのは無理もない。
見慣れた街は、特に三年という年月が俺を置き去りにさた感じは無く、適当な都会さと、適当な治安の悪さが相まった普通の街だった。
ただ、この街の夜は独特なのを除けば………だ。

夜の十一時。今時分、十一時では学生さえうろつく時代だ。いかにもって奴らがどこで何をしてようと俺には関係ない。とは言え、それも時と場合による。
ビルでも建つのだろうか、まだ骨組みしか建ってない場所に、『ご迷惑おかけしてすいません』の看板がある。そこに描かれている作業員。なんとかなんないか?申し訳なさそうには見えん。………と、それはどうでもいい。何やら若い男達が、制服を着た女子高生を囲って喚いている。
バカな奴らだぜ。街灯に照らされてること忘れてんのか?何をするかは知らんが、良からぬことを企んでるのは間違いない。だってそうだろう?女子高生を五人の男が取り囲んで、まさかこの国の行く末を語らうとは期待出来ない。そんなことを期待するなら、世を嘆いた神様が、明日世界を崩壊させることを期待する方が確かかも。
んなわけで、多少格闘技には覚えのある俺は、女子高生が人生を変えられてしまう前に。
そう思ったんだ。

「よう。随分楽しそうだな」

「あん?なんだテメェ?」

笑顔で話し掛けてやったらこれだ。

「そう突っ掛かるなよ。ちょっと見物さ」

街灯の明かりををまともに喰らう女子高生の顔を見る。
これはまたえらく美人だ。スレンダーなボディに凛とした瞳。優等生には見えないが、実に賢そうだ。

「ナメてんのか!テメェ?!」

「お、おいおい、そう興奮すんなって!」

「るせえっ!!」

胸倉を掴まれ、いきなり殴られた。
まあ、一発くらい殴られておかないと、これからコイツらは病院へ直行するんだ。それこそ申し訳ないってもんだ。

「イテテ………問答無用かよ……」

意気がるわりに重みのないパンチ。仕方がないので、わざと効いてるフリをして、立ち上がろうとした時だった。

「ちょっと!アンタら!」

声高に女子高生が叫んだ。いや、どちらかと言えば怒号。こんな時、普通は悲鳴を上げるもんじゃないのか?
男達は一様に女子高生に目を向ける。
だが、そんな男達の注視をものともせず、

「ヤるの?!ヤらないの?!ハッキリしてよ!」

俺は耳を疑った。なんと………この女もひょっとしてバカの部類か………?

「なんだよぉ〜。その気なら最初から言えよなぁ。へへっ。可愛いがってあげますよぉ〜」

男の一人がそう言うと、他の連中も同意の雄叫びを挙げる。

「じゃあ……ヤるのね?」

ニヤリといやらしく女子高生が笑った。その笑顔に、俺は違和感を覚え、そのワケはすぐに解ることになる。

「もちろん、ヤっちゃうよ〜!」

と、バカが言った瞬間、

「ぐえっ!」

「あぎゃっ!」

「ぶほぉっ!」

「あひっ!」

「しぎゃっ!」

マヌケにマヌケを上塗りしたような“男達”の悲鳴が響いた。
あっという間に男達は倒れ、プラス、気を失ってる。

「………驚いたぜ。オマエ、格闘技か何か………のわっ!」

戦績を讃えようなどと思った矢先、俺は女子高生の靴底に踏まれる結末を迎える。顔をだ。か・お!

「あ、あにふんだ!」

何すんだ!そう言ってやった。

「人の犯されるとこ見物しようなんて悪趣味なヤツ、野放しには出来ないわ!」

下弦の月が彼女の背の向こうに見える。それはまるで魔女のようだ。

「ま、まへ!おれは……」

「うるさいっ!この………変態めっ!!」

「ぐわあぁぁぁーーーっ!!」

こんな危険な女が、これからの運命を共にするパートナーだとは、お互いに思ってもみなかった。


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