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もし異世界で未来を観たなら 作者:Sue

第一章 『原点の未来』

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第一章16 『視界の拒絶』

Twitterの拡散力に驚いております。でもやっぱり感想乞食、ブクマ乞食。あ! この前メールで初めての感想が来たんだよ!! だからみんなも!!(重症)

 


 ――目を覚ますと、イツキは己の視界を潰されていた。

 二度ネタだが、深い眠りから目覚める時と、その逆とで、意識の覚醒の仕方はまったく違うように思う。深い眠りの方が、案外早く五感の活動が始まるのだ。
 逆に言えば浅い眠りの方は、目覚めて当分は血の巡りも悪く、頭も朦朧とし続けているということを意味する。

 そして、今回の目覚めは、浅い眠りだ。

「―――っ!」

 しかし、刹那で訪れた頭の痛みに、滞っていた意識の循環が即座に復帰する。
 尖ったまち針で、脳みそをぐちゃぐちゃにかき混ぜられているような、拒絶しようもない激痛だ。

「ぅ、だ……っ!」

 『未来予知』とも違う冷たい痛みは、しかし一瞬の爪痕だけを残し、断続的に続くことなく霧散していた。
 それはつまり、第三者による魔法での痛みではない可能性が高い。どこかで頭でも打ったか、そこで得た痛みである方が考えやすいだろう。

「ぁん、だよ……」

 視界は確保できず、自分が今どこにいるのかも分からない。凹凸の激しい床は、指で触るに木の感触か。森の舘を彷彿とさせるそれは、なぜかどこかに湿気を帯びていた。

「め、目は……?」

 恐る恐る己の眼球であろう部位に触れ、どうやら眼は二つとも無事であることを確認。同時に安堵。
 記憶を掘り起こしながら、とりあえずイツキは辺りを見回す。そして、気が付いた。

「……あ」

 自分の寄りかかっている壁――そのちょうど真上の場所に、正方形で簡素な窓が取り付けられていることに気が付いた。それと同時に、そこから差し込む青白い光―――月明かりの存在にも、遅くして気が付いた。

 そしてそれは、イツキの頭上を左斜めに通り、家の左角を照らしている。そこで映された『ある物』に、イツキは既視感があった。

「――――」

 檻。檻だ。

 目が慣れつつあり、イツキはこの家の全体像を大まかだが理解する。壁は長さの均一な丸太を積み上げたもので、出入り以外の扉は特には見当たらずこの一部屋のみ。
 静寂に包まれており、微かなイツキの息遣いと、どこかから滴る水の音だけがその場に木霊していた。

 そんなセンチメンタルさすら感じさせる静謐な空間に、不相応に置かれた厳つい物体がある。漆黒の鉄格子が何本も嵌められた立方体は、見取り図でいえば部屋の左上部分に、きっちりと配置されていることだろう。

 それは見紛うこともない、檻である。そして同時に、イツキはここがどこなのか、頭の中で合点がいった。

「ここ……あの三人組の、小屋だ」

 イツキが回想するのは、最初のループで放置された檻の中だ。あの時は王都で捕まった後、奴隷商人へと引き渡されるという理由で乱暴に閉じ込められたものだ。その後の記憶は、言うまでもないだろう。

「マイクラとかで作れそうな豆腐建築と、窓の外を見るに森の中にぽつんとある奇妙な配置。そんなの、あいつらの小屋しかねえだろ」

 もしまた別の盗人三人組が登場して、イツキをかっさらったとかいう最悪の可能性もあるが、それはちょっと色々めんどくさいから却下で。
 一応、仮にそうだとしたら名前はカツオ、ワカメ、タラオにしよう。

 しかし、

「なんで、俺はこんな所にいるんだよ……」

 現状の納得に精一杯で、ここに訪れるまでの経緯が何一つ思い出せない。昼にサン婆と別れたのは五回も繰り返しているので覚えているが、その後の記憶が見つかってくれなかった。

「とりあえず、ここで渋っててもしゃーねえ。家の外まで出て……アイラのことも、気にかけなきゃならねえからな」

 過去二回のループで判明した事だが、アイラとエバンが対峙した場合、十中八九この小屋は大破している。その小屋が、現在無事である以上、まだ二人の邂逅は発生していない可能性が高い。

「それにしても、あの三人はどこ行ったんだ。獲物が見つかるまで帰れないブラック企業か? ってかこんな暗くなるまで獲物が見つからないって、どれだけ演技下手だよ……あれ、じゃああいつらにあっさり騙された俺って」

 そこまでいって、思考を放棄する。

 因みに、辺りは暗いが時間的にはまだ二十二時くらいだとイツキは踏んでいる。そもそも、実際にアイラとエバンが鉢合わせるのは日本感覚で二十三時ほどだ。
 とどのつまり、時間にはまだ幾ばくか余裕がある。

「……はずだ。まあ、もし違ってもその時はその時だけ……どぉ!?」

 言いながら、イツキは立ち上がり、行動を起こそうと第一歩を踏む――瞬間、足が何かに引っ掛かり、全身が地面に打ち付けられる。
 Tシャツ一枚のため、肩が摩擦するのを感じながら、イツキは涙目になって声を上げた。

「ってぇな! なんだよ、何が……」

 何に引っ掛かったのか、自分の阿呆っぽさにそろそろ呆れてくる。とりあえず体を起こそうとして――床に密着した体に何かがへばりついて、イツキはふいにその動きを止めた。

「―――?」

 そこに違和を感じ、木目がうっすら見える木製の床を見やる。しかし、自分の影と重なってそこには何も見えてくれなかった。
 ただ何か、嫌悪感を抱く悪臭が薄ら香るだけで。

「なんだ……? 気持ち悪ィ」

 悪態をついて、イツキはなんとか肩を引き剥がす。どうやら床は粘着質になっており、湿気のせいかな、と訳の分からない仮説をとりあえず立てることとした。

 床に手が付かないよう、腰を捻ってゆっくり立ち上がる。ちょうど視線と窓の位置が同じになり、そこから覗ける平地とその奥の森に、イツキはやはり例の小屋だと安堵。
 そのまま家の外へ出ようと、真右にある扉へ向き直ろうとして、

「あれ。そういや俺、さっき何に引っ掛かったんだ」

 当たり前の疑問をすっ飛ばしていたことに気がついて、イツキは遅くしてその確認に向かう。理由を述べるとすれば、体が床と接着した薄気味悪さが疑問に勝ったからだが、いまはそこに重きを置く必要は無いだろう。
 扉に背を向け、イツキは屈み込む。確かにそこに、何か球体があることが確認できた。
 しかし、窓の真下にあるそれは、月明かりが届かず詳細までは分からない。

「ん――?」

 どこか違和感を感じて、イツキは手を伸ばす。
 見えないのならば、自ずと手に取る。それは人として当然の好奇心で、それはイツキも例外ではない。

「――――」

 ゆっくり、ゆっくりと、イツキの両の指がその物体へと向かう。単なる出来心だったはずなのに、イツキの中で焦燥感と圧迫感が募っているのが分かった。

 それはまるで、危険な物が入っていると知っている箱――ブラックボックスのようなものに、自ら手を突っ込んでいるのと同じ緊張感だ。心臓の音が高鳴り、瞬きすらも忘れてしまう停滞。
 エバンの対処も、あの三人組のことも、黒髪の少女のことも同時に忘れ、ただイツキは、眼前のそれに釘付けになっていた。

 しかしそれとは違う、どう形容すれば良いのか分からない忌避感も同居していることに、しかしイツキは気が付けない。

 ――やがて、永遠とも思える時間は終わりを迎え、二つの手がそれへと到達する。

「――――」

 左右の手は、それぞれ違う触感を示していた。

 右手は硬く、しかしどこかきめ細やかな感触。だが、それが何か、その答えは喉の奥でつっかえるたけで、出てこようとしてくれない。

 左手は、何か細いものが多量に触れて、くすぐったい。しかしそれだけでは取っ掛かりすら掴めず、イツキの指は反射的に、さらに奥まで指を押し込み、


「――――」


 ――左指に触れたそれが何なのか理解して、イツキは論理的に、そして直感で、右指に触れるそれの正体も突き止める。

 そして、何故そこにそれがあるの『―るな』かという疑問に映り、最悪の『―るな』想像が脳をよぎり、『みるな』それは仮定でしかないと『みるな』分かってはいるのに、どこか現実『見るな』味を帯びていて、やがて『見るな』根拠に基づい『見るな』た結果と『見るな』して『見るな』理解出来そうになって、『見るな』すべての『見るな』『見るな』辻褄があって『見るな』いくのが分『見るな』か『見るな』『見るな』って『見るな』、『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな』『見るな見るな見るな見るな』――――。


























 めとくちをおおきくあけたひとのあたまが、そこにはころがっていた。



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