挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
吸血記録 作者:Haizi
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

14/18

第十四幕 晴れのち雨

第十四幕 晴れのち雨

 お昼頃、砂亜羅たちは木の実なんかを取りに、森の中を歩き回った。
 日の高さに暑さが増したが、木の葉が寄り合いそれを和らげてくれた。
「綺麗な木漏れ日…」
 砂亜羅は、手で目に影を作りながら木漏れ日の中に立ち空を見上げる。
「砂亜羅、早くしないと日が暮れるぞ」
 敦史が袋に木の実を入れながら言う。
「うん。わー、結構取れたね」
 砂亜羅はにっこり笑うと、歩き出した。
 テントに帰ってきた砂亜羅たちを迎えたのは、夕日色に染まる空だった。
「うわー。綺麗な空…」
 砂亜羅は両手を広げてクルッと一回転する。
「足元気をつけろよ。川に落ちるぞ」
 敦史はテントに木の実の袋を置きながら言った。砂亜羅の所へ行くと、
「砂亜羅、これからどうする?」
「何が?」
「吸血鬼の事…。もっと探してみるか?」
 二人の会話が途切れた。
 風に揺れる木々のざわめきが二人の間を駆け抜けた。
「…どう、しようかな…」
 砂亜羅は川に足を突っ込んで「敦史は、どうしたい?」
 と、聞いた。
「俺は、他の人たちのことを考えるなら、探してみるべきだと思う。けど…―」
 敦史は言いよどむ。
「けど…、何?」
「…砂亜羅がこれ以上…いや、なんでもない…」
 と、顔を背けた。

 日が落ち、敦史は夜風に当たっていた。ただ一人、空の星を見上げながら…。
 砂亜羅はテントの中で寝る準備をしていた。
「敦史、布団敷いたよ」
 砂亜羅が顔を出して敦史を呼んだ。
「あぁ。…砂亜羅、俺もう少しここにいたいから先に寝てていいぞ」
 敦史はそう答えると、また空を見上げた。
「どうしたの・・・?」
 砂亜羅が心配そうに声を掛けた。
「いや、別に大したことじゃないよ。少し考えたいことがあって…」
「そっか。――わかった。おやすみ」
 砂亜羅がテントに入るのを見送ってから、また空へ視線を戻した。

 敦史がテントの中に入ったのは、一時間ほど時が経ってからだった。
「あ、敦史…」
「砂亜羅、お前、起きてたのか・・・」
 敦史は布団に入りながら言った。
「一応、彼女としては気になってさ…」
 砂亜羅が視線だけ外しながら言う。
「いろいろ考えてたんだ…。砂亜羅は、ここに来た時にいろいろ考えたって言ってただろ?だから俺も、考えてみようと思った」
「それで、何かわかったの?」
「よくはわからなかった…けど、何とかなりそうな気はしてる。きっと何とかなる。まずは、そう信じることからはじめてみようと思う」
 敦史はすっきりとした顔で言った。
 砂亜羅はそれを見て、「うん。大丈夫だね、私たち…」
 と言って、敦史の頬に手を伸ばした。
 その手を掴んで、敦史は砂亜羅を抱きしめると、そのまま眠った。

 その日は、お昼頃まで寝ていた。でも、十分に睡眠をとったわけではない。夜中に雨が降り出し、テントの中にまで雨が入ってきたことに気が付いた砂亜羅たちは、テントを森の丘に移動させた。
「雨なんて初めてだね、ここにきてから…」
 びしょびしょの砂亜羅が言った。
 敦史は頷きながら「風邪ひくなよ」
 と、タオルを砂亜羅の頭にかぶせた。
 それからしばらく、二人は何もせず、ただ身を寄せて座っていた。いつ、また状況が変わるかわからない。外の雨音が弱くなった。敦史はそっとテントから頭を出し、
「向こうの方がもう晴れてるから、一難去ったな。ふぅ…」
 と、息をついた。
「砂亜羅、もう大丈夫みたいだぞ」
 砂亜羅に声をかけるが返事がない。
「砂亜羅…?――なんだ、寝ちゃったのか…」
 敦史はそう言うと、砂亜羅を布団に運び、自分も横になった。
 起きた後、食事と食料集めをし、夕方頃に少し肌寒くなった。周囲に霧が出始める。
「よく見えないから、気をつけろよ」
 敦史の言葉に、砂亜羅は頷いた。

――バンッ!
 一瞬の出来事だった。大きな音が辺りに響きわたり、耳が痛くなる。
 敦史の顔が驚きから、悲痛に歪む。草むらの中から狩人が現れ、砂亜羅たちの姿を見て目を見開く。
「あ、…敦史っ!」
 敦史の胸元が見る見る赤く染まっていく。狩人は慌ててトランシーバーを手に取った。砂亜羅は全身が震えだし、自分の腕を掴んでぐっと力を込めた。爪が腕に当たり、じわりと血が出てくる。
 ぐったりした敦史が目に焼きついて、もう自分を保てなかった。
 ――気が付くと、狩人は死んでいた。
 砂亜羅は、敦史のところへ戻ったが姿がなく、探してもどこにもいなかった。

 また、雨が降り出した。テントの中で一人膝を抱え「どうしたらいいの?」
 と、絶望の渦の中に閉じこもった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ