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21 白蓮の行方



 江湖は私が渡したティーカップをテーブルに置く、黙って私はその動作を見ていた。きっとここで口を挟んではいけない気がしたから。

 「先ほどわたくしを…その…、乱暴しようとした男性を覚えていらっしゃいますか?」
 「顔は余り見てない」

 思い出しても腸が煮えくりかえる思いだ、あいつはちゃんと罰則受ければいい。
 
 「彼はわたくしの旅館の昔からのお客様の息子さんで、わたくしとも年が近いことからよく遊んでいただきました。名前は馬來うまき 仙人せんとさんといいます。彼がどうしてもわたくしの家の家宝である白蓮はくれんを見たいとおっしゃられましたので…」
 「見せたら盗られた、か…」
 
 江湖は悲しそうに頷いた、それで鳳凰学園に入学なのか…だが大胆な発想だよね。家宝とは言えど女子が男子学園へ入学なんて。

 楓はちょっと親は反対しなかったのかと疑問が浮かび。

 「だからご両親がとり返して来いと?」
 
 慌てた様子で江湖は頭を左右に振る。
 
 「いいえ、パパは大反対なさりましたわ。楓様とであった日、直前になってパパがわたくしを連れて帰ろうとして…隙をついて車から飛び出しパパから逃げました。その後学園の関係者に迎えに来てもらい長かった髪を切ったのです」

 こんだけ可愛けりゃ是が非でも引き止めますよ、可哀そうなパパ。気持ちがわからんでもない。

 「パパから今も毎日のように電話が掛かります、白蓮はもういいから帰ってきなさいとおっしゃってくれますが…わたくしはどうして馬來さんがあんな行動にでたのか。そして何があっても白連を取り返したいのです」
 「大切なものなんだ白蓮って宝石」
 「はい、母の形見です」

 そりゃ大切だわな、お母さんの形見となると…。
 
 「白蓮ってどんな宝石?それほど貴重なものだったのかい?ついでに、どうして窃盗として訴えなかった?」
 
 当然感じる疑問をぶつけてみた、そうすれば江湖は学園に来る手間も危険もなかった訳だ。

 「宝石といっても、まだ象牙が取引されている時代に作られた蓮華(ハスの花)を模り、蓮華の花托(花の真ん中)を真珠であしらった物ですが、宝石として白蓮にはそれほど価値はありません。五十嵐家の歴史の象徴としてわたくしの家が大切にしています」

 彼女はここで少し間を置いた、自分の中で気持ちの整理をしているのだろう。楓は急かす気持ちはあったがグッと我慢した。

 「警察には訴えなかったのは仙人さんが「そんな」方ではなかったからですわ、わたくしが誰に訴えてもそんなはずはないと…寧ろよいお客様を疑うのかとお爺様に叱られてそれ以上は…」
 「信じてもらえなかったのか?」
 「皆様は信じたくないという風でしたわ、実際仙人さんは優しい方で……今でも白蓮を奪ったのが夢ではなかったとかと、思うほどです」

 なるほどね…江湖ちゃんがこの学園にきた経緯は大体わかった。
 
 「それで江湖…五十嵐は何であの資料室へ呼び出された訳だ」
 「いいえ、わたくしは――月ものの責で気分が悪くなり保健室へ行きまして休ませてもらいましたわ、その帰りに仙人さんがいらしてついて来いと…」
 
 ちょっと江湖ちゃんにイラっとくる、馬鹿正直についていったのか。危機管理がなってない、友達を信じたい気持ちは分からないであるがあんな事は起こしていい出来事ではない。
 
 いや、江湖ちゃんにイラつくのはお門違いだろう。原因が馬來なら全部馬來が悪い。

 あの野郎もう一発くらい蹴りを入れておけばよかった。額に手を当てて考えてから口を開く。

 「大体の事情は飲み込めた」

 つまりは馬來に江湖ちゃんは弱みを握られている状態なのね、ふむ。
 
 と楓は考える、じゃあ生徒会長に訴えれば何とかなるかもしれない。うん、私が口をだしても何にもならないし。楓は無言で頷いて江湖に言う。
 
 「生徒会長に相談してみよう、俺も一緒に行けば話しは聞いてくれると思うよ」
 
 駄目だったら凪史を通させてもらう、凪史はこの事件を解決するのに積極的になると思う。学園で事件が起きるのを嫌っているから。
 
 「そんな…そこまで楓様のお手を煩わせられませんわ」
 
 楓は笑って一つウィンクをすると。

 「ゴメンねもう江湖の力になると決めたんだ、俺は頑固で江湖が言っても無駄だよ」

 本当は最初から力になりたいと思っていた、女の子だから。私の手からすり抜けていった女の性を彼女には傷つけて欲しくなかった。

 それにきっとまた彼女が馬來に接触しても同じ結果になる、彼女の中で優しい馬來のイメージが少しでもある限り。

 『激しい愛も~不意に芽生える愛も~~』

 宇●田ヒカルの美声が、私のかっこ良く決めた雰囲気を叩き割るように携帯の着メロがなった。誰だ?このタイミングでかけてくるのは渋々、江湖ちゃんに一言かけて携帯をカバンから出して耳に当てる。

 『よう、元気か?直樹くんで~す』
 「しね」
 
 プツっと切った、あいつは嫌いじゃないがハイテンションが気に障った。意味なく。
 
 再びなる着メロに仕方なく出る。

 『ひどいな楓、せっかく学園一ファンクラブ数を誇る俺様の電話を切るとは何ぞや?』
 「自慢になるのか、それは!?それより俺の電話番号どこで知った!」
 『んなもん、履歴書に決まっているだろうが』
 
 この男には機密情報という文字はないのか?生徒会長の権利で拝見したのか、盗み見したのか知らないが。
 
 「で、何の用だ?江湖ならもう落ち着いているから大丈夫だぞ」
 
 これはちょっと小声で話す、江湖ちゃんにだってプライドがあるから余り他人に弱っているなんて知られたくないはず。

 『そりゃよかった。んじゃなくて、俺の生徒手帳お前が借りパクしたまんまじゃねーか。返してくれ』
 
 あ…。私の上着ポケットを探ってみる。あった、甲本 直樹の名前がはいった生徒手帳が。
 
 「悪い悪い、今から生徒会室に行けばいい?」
 『いや、明日の放課後に生徒会室に来てくれればいい。今日はスペア(怜が無許可で作った)があるから大丈夫だ』
 「かわった」

 パチンと折りたたみ式の携帯を収め、楓は江湖に。
 
 「明日直接、生徒会の会長に今回の件を話す。きっと俺たちだけで動くより速く解決するよ」
 「ありがとうございます、楓様」
 「あー…その楓様って言うのやめない?」
 「どうしてでしょう?わたくしは楓様を尊敬していますのでこの様にお呼びしたいですわ、ご迷惑でしょうか?」

 可愛い顔を傾げて尋ねる江湖ちゃんに恥ずかしいといえるはずも無く、無垢な瞳で見つめられると苦し紛れに「じゃあ今更ながら江湖って呼ぶけどオッケー?」と尋ねたら、はい。と笑顔で返答されちゃった。

***
 
 生徒会室にいる直樹も楓が携帯を切った同時刻に携帯をしまう。

 「これでステージに役者は揃った、やっぱ主人公がいないと話しになんねぇーよな?」
 
 ソファに腕を乗せて怜がいる方向へ顔だけ向けた。

 「酷い男だ、無理やり引きずり込むなんてな」
 
 嬉しそうな声の直樹に感情の窺えない声で応えた怜は、一人で無関心に書類を整理していく。
 
 「まあまあ、生徒会にとっても楓が動いてくれると助かる、凪史は楓が入らなければ正式に執行部を設立宣言しないだろうからな。俺はまったく従兄弟思いのお兄ちゃんだぜ」
 「本音は?」
 「退屈だったこの学園もやっと面白くなりそう」
 
 背伸びをして天井にあるライトを見つめた。俺たちには狭い学園に新しい風を起こせる人間がいる、その人間は自分の能力を理解していない。運動ができるだけでも頭がいいだけでも顔がいいだけでも駄目だ。
 
 行動できる人間、恐れを知らぬほどに。直樹は笑みを深める。
 
 面倒だからってステージに上がらないなら…放り込むだけだ、なぁ?楓。

***

 「楓様おはようございます」

 江湖ちゃんが朝一番に教室で挨拶をしてくれた。私は教室に入りながら江湖ちゃんに返事をする、もちろんお早うと。

 私は直樹から電話があった後、暫く会話をしていたが6時を過ぎたあたりで自分の部屋に帰った。昨日の今日だったからもしかして登校しないかもなんて楓が思っていたが、思っていたよりも江湖は強かった。

 クラスの皆が一斉に楓と江湖に視線が向かう、それに苦笑いをして呆れる楓。

 転校生2人が昨日まで何も接点がないように振舞っていたのに突如、親しげに会話をし始めるなんてみんなの興味を引くのに十分だった。それにやはり江湖の「楓様」発言の威力はすばらしく高い。
 
 可愛い江湖にこれだけ慕われる楓。楓自身はただいるだけなのだが、他人からしたらヒバリとハンスを除き誰も自分の領域には入れさせない孤高の雰囲気が楓の群を抜いた美形のために勝手に妄想させられているのであった。
 
 楓の容姿が整いすぎているので彼(彼女?)は第三者からみて冷たい印象に映る、容易には近づきにくくて話しかけづらかったのだが、新人アイドルの五十嵐が親しげに話す様子は朝錬が早く終わったヒバリとハンスもしっかりと見ていた。

 黒いオーラを2人で出しながら。

 楓はまっっっったく気づかぬまま江湖と教室の入り口近くで話しを続けた。

 「今日の放課後…いい?」
 「はい」

 楓と江湖は今日の放課後に生徒会に行くから今回の件を一緒に報告しようの意味で、それを聞いていた他の生徒は。

 「今日の放課後…いい?(君の部屋にいくよ)」
 「はい(お待ちしています)」

 にしか聞こえない、クラスメイトの八割が「終わった、good-by俺たちアイドル…」と肩を落とした。楓を押しのいて彼氏になろうとする勇気のある生徒はいない。顔を比べると主人公と脇キャラだからだ。

 「随分と仲がよろしいな」

 楓の後ろから地を這うような声がしたので振り返ると、大田が立っていた。ピュ~ッドロドロ…なんて日本のお化けが登場する由緒正しいBGMが流れてきそうな顔をしている。

 目の錯覚だろうか、大田の後ろにお岩さんがいる気がしてきた。まさに死んだ魚の目!私は口の端をひきつけながら無理に笑顔を作り「おはよう、大田」と何とか明るく振舞うことができた。

 どうやって誤解を解こう?彼は絶対私と江湖ちゃんが一線を越えたと思っているはず。私は江湖ちゃんを娘のように可愛いと思っていますが食べちゃいたいなんぞ微塵も思っていません。
 
 固まっていると江湖が大田の前に出て。

 「昨日はご迷惑をおかけしました、カバンを持って来てくださりありがとうございます」

 礼儀正しくペコリと頭を下げる江湖に大田は顔を赤くして、わざと視線を江湖から外しぶっきらぼうな口調でごまかす。

 「別に…勝手に俺が好きでやっただけだ」

 それだけで精一杯なのか、顔を赤くしたまま私と江湖の横を通り自分の席へ行った。

 私は心でガッツポーズをとる、よっしゃ!まだ江湖ちゃんの事を諦めておまへんがな!!上手く軌道修正していけば太田君ドッキドキ青春を覗けるぞ!!(悪魔かお前は)

 一安心した楓は自分の席へ向かい席につく。

 「よお、お早うハンス」
 
 ヒバリには朝にちゃんと挨拶を交わしたので隣のハンスに習慣として挨拶をしたのだが、帰ってきたのは無音。そして意味が分からないプレッシャー。

 「……お早うございます、楓さん。少しお時間頂けませんか?」

 私が返答する前に2人に引きずられて教室から連れ去られました。

 私何かやったか?
グダグダ展開ですがお付き合いください。何とかするはず?です。


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