表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

掌編小説集7 (301話~350話)

慰め

作者: 蹴沢缶九郎

女は落ち込んでいる相手に聞いた。


「キリンの首は何故長いのだと思う?」


突然の問いに戸惑いながらも相手は答えた。


「う~ん、何ででしょうか? …遠くの景色が見たいから?」


「うん、まあ半分正解。体が大きいと敵に見つかりやすいのだけれど、それは反面、敵を見つけやすい事にもなるから…。あとは、高い所の木の葉を食べる為ね」


「そうなんですか…」


「じゃあ、ウサギの耳が長いのは何でだと思う?」


再びの問いに、若干の鬱陶しさを感じつつも相手は答える。


「…音がよく聞こえる為」


「それも半分正解。敵の物音を素早く察知する為に長くなったのと、それから、体温を調整する為とも言われているわ」


「・・・」


「キリンの首もウサギの耳も…。彼らだけではないわ、ゾウの鼻が長いのも、カメレオンが風景と同化するのも、それぞれの環境に応じた進化なのよ。だから、あなたの硬い甲羅も、あなたが水中で長く呼吸を我慢出来るのもそれと同じよ」


「でも、僕は…」


「あなたは命の恩人にお礼をしようとした、ただそれだけ。仕方ないのよ、人間は水中で息を出来ない。そんな進化をしていないのだから…。考えてご覧なさい、例えば、あなたはサバンナでは一日として生きられないでしょう? それは、あなたがサバンナではなく、水中で暮らせる進化を遂げた生物だからよ」


「はい…」


「さあ、もういい加減元気を出して…」


竜宮に連れてくる途中で溺死させてしまった恩人に対し、深く自責の念にかられるカメを、乙姫はいつまでも慰め続けた…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 最初何の話かと思って読み進めていったらまさか有名なあの話につながっていたとは(笑)。面白かったです!!
2016/10/21 00:07 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ