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白くて黒くて変なやつ

作者:目262
 旧陸軍航空隊の元中尉は酔っ払うと時折、中国戦線での武勇伝を仕事仲間に吹聴していたが、その中に奇妙な話が1つあった。
 1941年の11月半ば、重慶上空を97式戦闘機で哨戒中に1機の飛行機を発見した彼は、これに接近した。古い輸送機で、行き先は香港らしい。抵抗の素振なく、胴体左舷の窓では数人の女子供が泣き顔で自分に拝んでいる。戦闘機乗りの矜持から見逃す事にしたが、右舷に回りこむと窓を通して奇妙なものを見た。
 白くて黒くて変なやつが2つ、檻の中に入っていた。更に観察しようとしたところ輸送機は急降下して雲の中に入ってしまった。残燃料の関係上、元中尉は追跡を諦めたが、あれが何だったのか、今でも気になるという。
 戦後生まれの大学出の後輩は、その話が気になって色々と調べ、ある結論を得た。
「パンダですよ。あの当時、蒋介石の妻の宋美齢がアメリカの支援を得るためにパンダを送ったんです。今で言うパンダ外交のルーツですね。先輩はそれを見たんですよ」
 パンダの写真を元中尉に渡すと、彼は確かにこれだと言った。丁度その頃、日中国交回復の流れで上野にパンダが来るというので大学出は元中尉を見物に誘った。
「こいつが動物園にいるのか?嘘だろ?」
 半信半疑の元中尉は後輩と上野動物園に出向き、2頭のパンダを目にした。元中尉は暫く見入っていたが、背中を見た瞬間怒り出した。
「おい、こいつの中には何が入っているんだ?」
「中って?何を言ってるんですか?パンダの中はパンダですよ」
「俺が見たのは背中にチャックがあって、その中に白くて黒くて変なやつが入っていたんだよ」

 エースパイロットで名高い坂井三郎の視力は2.5はあったという。元中尉が同等の目を持っていたとしたら背中のチャックを見ることができたかもしれない。
 大戦中にアメリカに渡った2頭のパンダは大人気を博し、アメリカ市民は大規模な対中支援を行うことにした。パンダはある意味、日中戦での強力な武器になったのだ。
 だがそれは、本当にパンダだったのか?元中尉の見た物はなんだったのか?彼がいない今、本当の事は不明である。

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