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蒼空の連合艦隊 作者:909

第二次世界大戦~第一幕 対ソ戦~

第二十話「1943年 最後にして最強の零戦」

零戦の活躍です。
 -さて、零戦`二二`型(改良点が多岐に渡ったためにその性能は史実での五四型に相当する)とヤク戦闘機との空戦はスピードは若干ヤクに分があったが、機動性では零戦が圧倒的優位であった。零戦は基本的に低~中高度でのドックファイトを主眼に設計されているので、得意とする領域で戦う事に専念すれば最大性能を発揮できる。支那事変は結果的に搭乗員たちの腕を磨く効果を上げ、搭乗員たちの練度は高かった。彼らはソ連の未熟な搭乗員達を`鴨が葱を背負って来る`の要領で料理できた。

零戦の搭乗員の一人、岩本徹三は史実で`零戦虎徹`と謳われた最強のエースで、`ラバウルの空は岩本でもつ`とまで言われている。岬中佐が軍事顧問団派遣に際して最重要要員として目をつけ、軍上層部を説得して配属させたほどの逸材である彼は前年の12月に受領したばかりの愛機(彼は支那事変で最多撃墜数を公認され、零戦一一型はすぐに受領できたが、改良機への乗り換えは同期より遅れていた。最新型である二二型は優先的に空母航空隊や内地の精鋭航空隊`343航空隊`に回されていたからだ。彼が前に所属していた部隊にはなかなか回ってこなかった。2年ほど二一型(製造初期の栄搭載モデル。性能的には史実の二二型相当)を乗り回し、昨年の暮にようやく最新型を受け取れた所に、軍事顧問団への配属事例が下った訳である。

「さすが金星搭載型だ。重くなっても二一型と同じ動きが出来る」

彼は増強された防弾装備や強化された武装を持ち、初期型より重くなった二二型が以前とほぼ同じ軽やかな動きを取れることに感心していた。瑞星や栄より数段出力がある(栄一二型は支那事変時の日本の技術で作られ、940馬力かつ高高度性能は低かったが、英国の優れたターボチャージャーや簡易型とはいえ排気タービン過給器などの技術が加えられ、改良された金星六二型は一気に1500馬力の出力と従来型を遥かに超える高高度性能を得ている。また、零戦本体も推力単排気管装備、高速での操縦性の改善などの改良が行われた結果、二二型は580キロという高速を発揮出来るし、運動性も高速時でも低速度時同様の軽やかな動きが出来る。因みに翼端は史実の二二型同様である)金星のおかげで特性を損ねる事無くパワーアップ出来たこの二二型は正に最強の零戦だ。武装も最新鋭の九九式二〇ミリ機銃四型(ベルト給弾式へ改良された形式。長砲身化に加え、弾丸の炸薬や信管の改良などでマウザーの機関砲に劣らない性能を得た)は従来のモノより命中精度が劇的に改善され、最強の零戦と言える仕上がりだ。

零戦のこれ以上の改良は無理があると判断した海軍は後継機の開発に力を入れているが、二式の後継甲戦たる`疾風`や零戦の正当な後継機の`一七試艦戦 烈風`の実用化はまだ年単位で先のことなので、当面の制空戦闘機の座は零戦二二型と鍾馗が占めるだろう。




「さて、まずはアイツを落とすか」

岩本徹三はこの日の空戦で二式単戦に追われて逃げ惑っているヤク戦闘機に狙いをつけ、斉射した。当たり所が良かったらしく、数発が燃料タンクをぶち抜いた。ややあってバランスを崩して墜落していった。機体そのものは致命傷ではないハズだが、撃った弾の破片かなにかが搭乗員を殺傷したのだろう。見ていくと後から現れていく後続機には味方が何もしていないのにヨタヨタと飛ぶモノも見受けられる。どうやらソ連は搭乗員の育成が間に合っていないらしい。これでは七面鳥撃ちもいいところだとため息を付いた。

若い搭乗員達は「スコアを稼ぐ格好の獲物だ!!」と息巻いて追い回しているが、彼はあくまで冷静だった。ドックファイトをしたがる若い搭乗員達にある程度制止をかけ、どんな態勢でも敵を狙い打つ
一撃離脱戦法を忘れるなと戒める。

「九九式二〇ミリ機銃四型の性能は良好だが、アメリカが作るB-29に対してどの程度威力があるか……」

彼が気がかりなのは、米国が今後送り込む超重爆機`B-29`の事だ。`前史`で日本本土を灰にした高度10000m以上をかっとぶ化物。英国などの技術を得た今はジェット機もあるので、迎撃できないことは無いが、ジェット機がまだ数がない以上は恐ろしい敵には違いない。今はソ連邦と戦っているが、
本当の敵は1991年に終焉を迎えるソ連邦ではない。自分に都合の良い未来を作る算段をしている米国である。

「露助はアメリカからの援助が無いからそう遠くないうちに息切れするだろうが……問題はアメ公だ」

この歴史ではドイツが賢明な判断で戦争を起こさなかったために、先にソ連が戦争を起こした。そのため米国としても、侵略を行ったソ連を放置するわけにも行かなかったのか、援助せずに静観をしている。ただナチスや日本は目の上のたんこぶであるし、英国はかつての宗主国だが、日本よりだ。黙っているはずはない。


「何を考え込んでるんです?」

部下からの無線通信に岩本徹三は答えた。それは彼の杞憂だった。

「いや……今回はどうやって帝国にアメ公がケンカを売るのかと思ってな」
「帝国の国力が疲弊したのを狙って、事を起こすんじゃないですか?」
「それはそうだが……問題はルースベルトがどうやって理由を考え出すかだ。真珠湾を奇襲するわけじゃ無いから言い訳もたたんだろう」
「そうですね……英国の事にかこつけるか……それとも」
「45年にはトルーマンになっちまう。そうなるとますます危ない。ヤツの事だ。`トルーマンドクトリン`とか言って何か脅してくるだろう。それに帝国最大の仇敵はカーチス・ルメイだ。上はアメ公との戦争を和平に持ち込んだ暁にはアイツをA級戦犯として裁く算段を整えておくそうだ」
「どうやってです?」
「こっちには大尉の未来資料がある。その中には米国の作戦計画書が映ってるTV番組や、関連本もあるそうだ。それを元に証拠をでっち上げるらしい。例えこっちじゃ考えて無くても、広島や長崎、東京大空襲の罪は重いからな。」

空戦が落ち着く様相を見せるなかの彼のこの会話は当時の日本軍がどのように戦争計画の算段を立てていたのかを示していた。`真の敵はソ連ではなく、米国だ`というのはこの当時の`連合国`の共通認識であった。



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