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流れ星

作者:キュウ
 いつのことかは分からないけど、誰もが平等に同じ数の食事を得られなかった時代――口減らしの蔓延、穀潰しの小競り合い、容赦のない厄介払い……いつのお話でも変わらずラメ粉のように空に散る星たちが見下ろす、あるいは横目に見つめる景色の中で、醜い押し合いへし合いを繰り返した、悲しい時代。
 ある夜のこと。ある娘はその星空の下ひどく憂鬱げな面持ちで、夜の目も寝ずにとある情景に胸をいっぱいにしていた。

 ――娘は、窓辺に頬杖を突いて、一つため息をした。小さな口から出た薄白い息は、夜の闇にスウーッと溶けていった。
 ほんの少し首を傾けて空を見やる。幾百、幾千の星々が空いっぱいに散らされて、こぞって夜の町をほんのり照らしている。だけど、その明かりが自分にも届いている心地がまるでしない、娘はそう思えて仕方がなかった。じきに気付くことには、自身が無意識に思い描く毛布にくるまって、それを拒んでいるのだった。
「今日で五年か……」
 彼と分かれて、今日でちょうど三年になる。遠く、遠く離れてしまった彼に何度思いを馳せても、その小さな手に、確かな実感は得られない。どれだけ彼のことを想っても、もう何も変わりはしない。
 あの時、彼と約束した。必ずもう一度会おう、と。崩れ消えそうな想いをこらえて、涙ながらにポロポロとそう言った。しかし、心の底ではしっかりと理解していた。きっと彼と会える事はもう二度と無いだろう、と、体面に反して内面は飄然として落ち着き払っていた。その内と外との矛盾が、無闇に自分の孤独感を煽り、こんなにも遠くへ離れてしまうのだ。会えるはずがない、と何度も唱えて、深く煩悶する日々を送ることになった。
 娘は、どうしても忘れられなかった。彼と過ごした時間、彼と交わした数多の言葉、彼の優しい微笑み。何一つ忘れられない。忘れるはずがない。忘れたくない。そんな願望を繰り返した。
 周りは皆、忘れなさい、と言う。ずっと思い悩んで居たら、これからも何も成せない、と言う。そんなことは分かっていた。分かっているつもりで、気丈に振る舞う心積もりをしようとまた苦悩した。
 娘はふと思い立ち、家をそっと出て、近くの丘まで登って来た。
 そこは、星がよく見える小高い開けた丘であった。空を見上げると、一面の星たちが暗い瞳の暗幕に映るのを感じ、気まぐれに町の方を見下ろしても、町の灯たちが足元を淡く青い火で燃やした。まるで宇宙の中に自分が居る。そんな気分に成れるここが、娘は好きだった。彼と一緒にここへ来られたら、どんなに良かっただろうか。
 吹き歩く風が心地良い。このまま、ずっとここで星を見ていたい。そうしたら、もうこんなに憂鬱に成ったりしないだろうに。
 ……あの人はどうしてるかな。確か彼の家は貧しかった。……ちゃんとご飯を食べられてるかな。……私の料理を、覚えたての手料理を食べさせてあげたい。
「あ……」
 ツーッと一つ、流れ星が空を駆け抜けた。
 市井から立ち上る多くの夢をほしいままにし、空の中でひときわ輝きを放ちながら、瞬く間にいなくなってしまう。娘には、あの流れ星がうらやましく見えた。ああやってどんな所にも行って、誰かの前に現れる、そんな流れ星がうらやましく、また妬ましかった。……流れ星が願いを叶えてくれる、そんなのは出鱈目だ。自分ばかり好きに動き回って、こちらのことなど気にもかけない。
 それなのに、あの流れ星に、彼に会わせて、と願ってしまうのはどうしてなのか。……やはり私は、心のどこかで彼に会う事を諦めてる。そうだ、私が動かないと、何も変わらないし起こりはしない。こうやってここで座っていてたところで、あの人は現れない。流れ星は一つ二つと凍て雲の隙間を心ゆくまで逍遥して、募った願いを分け与えた。次はあの稜線の果てまでも、私達の想いを引きつれるだろう。
 彼もこうやって、流れ星の光を浴びているだろう。そう思って、娘はフッと微笑んだ。
 娘はスックと立ち上がると、足取りを軽くして家へ帰った――。

 ――幾百、幾千の星々の中、流れ星が一つ駆け抜く。その横を、ガラス細工のように半透明な男が一人。果てしなく上を、ずっと上を目指し、昇っていた。零れ落ちた景色は囲う星たちに照らされて鮮明に夜の幕に映し出される。
 彼は馴染み深い顔ぶれに取り囲まれて、縷々述べられる美辞麗句を浴びて、一人寂しい灯りの我が家から、ひっそりと出て行ったのだった。
釈然としない皆さま。
悲しみに暮れる → 立ち直る・・・
で終わらせたくないという衝動が元凶なのですこれが。
しかしお話はこれだけでは終わりません。
この後の展開やいかに? 続きは皆様にゆだねるということで、
今回はこれにて!

HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
コメントや編集後記、ほかのお話のまとめも掲載しておりますので
ぜひこちらにもどうぞ

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