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挿絵(By みてみん)
◆Lyric 001◆招待者の名は
004  /[TAKE 1] 強迫観念


 彼はひどく胸騒ぎがしていた。
 理由は分からない。
 
 ただ繰り返し頭の中で、執拗に(ささや)く声がするのだ。
 
 “潜行セヨ”
 気のせいにしたいが、あらがいがたい強制力がある。
 
 “潜行セヨ”
 わずかな抵抗空しく従うことにする。
 
 “時期デハナイ”
 
 受け入れると同時に精神的な動悸が収まるのを感じた。
 
 奇妙な緊張が解けて安堵の息をつくその隣に、心配顔の少女が小首を傾けて(のぞ)き込んでいた。
 
 大丈夫、と頷くと少女はニコと微笑む。
 
(………奇妙だ……あれはもう二十年近く前のことじゃないか)
 言い聞かせては見るものの、不安は払拭ふっしょくできたわけではなかったようだ。
 
 自分の中に鎌首をもたげ(うごめ)くものが何であるか、自分は知らない。
 吐き気を催すほどの不快感はある。
 押さえきれない、醜い蟲のような―――
 
 沸き立つ群衆の中で、彼は独り冷や汗を額に滲ませた。
 
 その視線の先には、豪奢(ごうしゃ)で権威的な色を誇示した着衣で、気高げに立つ女が居る。
 
 ―――あれは……
 ―――あれは敵ではないはず……
 
 傷は、つけてはならないもの。
(お前が、守る者だ)
 
 守る者。
 それすらも違和感がある。
 自分が守るのは……
 
 脇に立つ、こちらの少女ではないのか―――?
 
 
 多大なる疑念が汗のように纏わりついていた。


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