エンドレス・デイ(2/2)縦書き表示RDF


私達はここから始まった。
全ては―ここからだった。
エンドレス・デイ
作:cube



始まりの日


「お母さんが言いというまで、ここから出てきちゃだめよ!!!」
「お前達、声を出したり音を立てたりするな!!ずっとそこに隠れてろ!!」
父と母が私を怒鳴りつけるように言いつけると、
私と妹の入っているタンスのドアを乱暴に閉めた。
光りが失われた漆黒の静けさを持つ僅かな空間と、
ジョジョに近づいてくる聞きなれない男達の怒涛の声に私と妹は震えていた。
「お兄ちゃん……こわいよぅ」
「しっ―、静かにするんだユミ。お父さんとお母さんに怒られるぞ?」
私は妹を怖がらないように、微笑みながら極力優しい声で言う。
これから先の事への不安と、死への恐怖を必死に堪えながら――。
バタン!!
家のドアが蹴破られたかのような音が、私達のいる木製のタンスへと響き渡る。
私は咄嗟的に妹の口を押さえ、抱き込みながら体を丸めた。
「いいかユミ―。ここからは何も言わずただ静かにするんだ!!いいな!!」
息を極力殺し、恐怖に震えた声で私は言い聞かせるように言った。
私達は恐怖に体を震わせながら、必死で声を息を殺した。
頭は考えてもただ空白で、生きた心地すらしなかった。
凍てついた空気と沈黙の暗い空間が、
まるで何十年も経ったような感じがしたとき。
突然、唐突に響き渡ったなにかがタンスを異常なほど共鳴させた。
凄まじい振動が鼓膜へと響き渡ると、
抱き込んでいたユミは気絶し、私も意識がかろうじて保てる状態となる。
数秒間の銃声が、私の意識をはっきりと戻す。
鳴り止むと同時に、父の叫び声がタンスへ、そして私の耳元へと伝わった。
「と、父さん……」
今思い返しても、この時私が錯乱して声を出さなければ、
こうして組織を立ち上げることもなかったのだろう……。
突然男達の声がタンスの外数10mほど先の違う部屋で飛び交い、
じょじょにその声は私のいるタンスへとじょじょに近づいてくる。
私は死というものを、このとき初めて覚悟した。
液体窒素が体にかかるとそうなるのだろうか?
それともまだ優しく、氷漬けにされたらそうなるのだろうか?
最早凍えるなどと生易しいものでは言い表せないほどの、【寒さ】が私の体と心を冷やすように包み込んだ。
コツリコツリ……
このゆっくりとした死への足音が私の部屋の前らしき場所で9回ほどあった。
数えられるほど、私は頭が冷たく凍りのようにはっきりと冷めていた。
【もう、私は死ぬのだろう】
生き残ろうと思った僅かな想いと希望は、タンスの闇へと消え
私の脳裏には死という文字が連なるように永遠と浮かび上がった。
そんなときだった。
男達の声がなにか騒がしくなった。
足音は喜ぶような声にかき消され、私は予想外なことに思わず心からホッとした。
だが――。私は今でも、あのときホッとしたことを後悔している。
「It is very ..beautiful woman.. Onna. 」
「...no stop of the army because of this it... 」
「...after a long time..」
何を言ってるかは、あの時の私には理解できなかったが、
女性の叫び声がしたとき、おおよそ私は理解した。
母が……男達に――。
私は耳を塞ぎ、視界が絶対に見えなくなるようにまぶたで強く閉じた。
父や母が、命を張ってまで私達を生かそうとした想いを、裏切るわけにはいかない。
母を助けられない罪悪感を心に強く溶け込ませながら。


幾分経ったときだろうか――? 私はいつの間にか眠っていた。
妹が私を揺らしながら起こそうとしていた。
「お兄ちゃん起きてぇ〜」
脅えながら私を必死に起こした妹の頭を優しく撫でると、私はタンスを戸惑うことなく開けた。
場には似合わず寝ぼけていたらしい。
だが――。
そんな寝ぼけも、すぐに体から抜けていった。
部屋は銃弾の跡と、破壊された家具などが転がっていた。
そして――。
部屋の先には壁から、足が二つほど飛び出ていた。
私はなにも思わず、理解した。
「ユミ……、お前はタンスにいろ!!」
そっとユミに言うと、私は壁から飛び出た足へと近づく。

そこで私は気を失った。



あの時見たものは未だに思い出せない。













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